フィーンド学:冥魔について(その2)
"中立にして悪"の霊性を宿す、彼らの陰湿な悪は"秩序"や"混沌"の概念に影響されない――何故ならば、ダイモンは生命そのものの破壊にのみ関係しているから。
また、彼らは終末的な黙示録と結びついたクリーチャーであり、森羅万象の完全かつ完璧な破壊と滅びを求めて、神々が住まう"大いなる彼方"を筆頭とした多元宇宙全体を絶対的な忘却と虚無に陥れる。
ダイモンの本拠地にして故郷たる世界は"破滅界アバドン"として知られ、この次元宇宙は数ある下方次元界の中で最も敵対的かつ悪意に満ちている。
◇歴史
破滅界アバドンに関する神話や伝承には諸説あるが、その中で最も有力視されるもによれば、定命の存在が創造された多元宇宙の夜明けにおいて、破滅界アバドンは虚無から始まり、最初の魂が死亡して、魂の女神たるファラズマ神によって裁かれたときでさえ、完全なる無の領域であったとされる。
しかし、これは物質界での最初の終末的大変動によって大きく変化を遂げる。予期せぬ大量死によって膨大な数の魂が、死後の裁定を受けるべく"魂の河"へと流れ着いたが、それは余りにも膨大であった。無限の蜷局を巻く蛇の如き形象となった魂の群れの一部は、道筋を外れて破滅界アバドンへと洗い流され、死後の世界たる"中立界ボーンヤード"に到達すること無く、その輪廻を強制的に終えてしまった。
これらの単一と化した魂の群れは、想像を絶する憎悪、憤怒、呪詛、そして自己嫌悪に満ちており、これが最初のダイモンとなった。その後、このダイモンの神祖は、破滅界アバドンを自身の歪んだ鏡像として再構築し、自身の誕生の原因となり、悲惨な末路を齎した世界と神々を滅ぼすべく、罪深く邪悪な魂を神々から奪い、その悉くを餌食とした。
この様な呪われた魂の殆どは、抵抗することができずに消滅したが、この中から新たなダイモンとなった存在も実在すると噂されている。やがて、時を経るごとにダイモンの形態――即ち「死」が多様化し、その数が増えるにつれ、"アバドン王"は自身によって聖別された大いなる代行者として、最初の騎士達を創造したとされている。
この一件以降も、ダイモンは破滅界アバドンへと堕ちた魂を消費し続けた。やがて、四騎士を引き連れた"アバドン王"は「この呪われた世界にやってきた魂はおろか、その内に遍く全ての魂が貪り喰われるだろう」と全ての神々と上方次元界を冒瀆した。
その後、それに耳を傾けたファラズマ神は、ボーンヤード内に"
これ以降、最も呪われた魂が破滅界アバドンへと堕ち、四騎士達はこれらの魂を自由に扱う裁量を得たという。
興味深い事に"アバドン王"に関する伝承や神話は、何故かこれ以降、完璧に途切れている。一部の賢者によれば、四騎士は"アバドン王"に何らかの不信の兆候と解釈する出来事を見いだしたとされ、身の危険を感じた彼らは"王"を破滅界アバドンの中心部に閉じ込め、以降の記録から"アバドン王"に関する全ての情報を抹消する事で彼を裏切り、封印したというが全ての真相は未だ闇の中である。
ダイモンよりもさらに”若い”フィーンドの種族たる
今日において、既に忘却の彼方へと追いやられたこの騎士は、クリフォトと罪深い人間の魂を融合させる実験を行い、その結果として最初のデーモンが誕生した。人間の魂からデーモンに到るこの最初の変容は、奈落界アビスそのものの意思によって即座に感知され、やがてアビス自体がこの呪われた創造を学習した。
その結果、一つの罪深い魂から何ダースものデーモンが誕生し、アビスへと堕ちていた何百万もの魂が瞬時にデーモンと化した。その後、アビスの歴史においてクリフォトとデーモンの戦争が勃発し、やがて、デーモンはクリフォトをアビスの奥底へ追いやり、今やアビスはデーモンによって征服された。この戦争後、デーモンは破滅界アバドンへと侵入したが、この侵略戦争は失敗に終わったという。
◇生態
ダイモンは異常に暴力的または恐ろしい方法で死亡した、邪悪な定命の存在の魂から形成されるが、一部のダイモン達は自分達が刈り取った無辜の魂をダイモンへ変成させることができる。彼らの存在そのものが人間を筆頭とした人型生物と結びついているため、彼らは"人生"そのものを"呪い"と見なし、最も恐ろしい死の擬人化と化している。
だが、ダイモンという存在は根本的な矛盾を体現している。何故ならば、死の化身たるダイモンは、全ての生命を喰い尽くそうとするが、彼ら自体もある種の"生物"である。一部の狂人らは、ダイモンらの目的が達成された後の輝かしい終わりの時について話し、この様な輩によればその後、現実は最終的に"生命"や"存在"という致命的な伝染病から解放されるという。だが、どう考えてみても、全てが滅んだあとはダイモン同士で共喰いを行い、完璧な無に帰すだけだと思われるが、殆どのダイモンは、この矛盾について何も考えていない――"その後の未来"に関する完璧なビジョンを有しているのは、間違いなく四騎士のみであろう。
◇基本的な位階
冥魔神(最高位):黙示録の四騎士
冥魔神(高位):
オレスロダイモン、オブシスダイモン、アグラダイモン、プロダイモン(戦争の騎士の助祭)、ファズマダイモン、アストラダイモン、クルシダイモン、ソルデスダイモン、アクリディダイモン、テメールダイモン、ラプスダイモン、ターナダイモン(死の騎士の助祭)、アニシダイモン、ダルゴダイモン
メラダイモン(飢饉の騎士の助祭)、エロダイモン、ピスコダイモン、ルーコダイモン(疫病の騎士の助祭)、サングダイモン、ハイドロダイモン、ビブリオダイモン、セプシダイモン、ニクスダイモン、サスぺリダイモン、クゥストダイモン、ジェンソダイモン、ヴェネダイモン、ヴァルヌダイモン、ラクリダイモン
カコダイモン
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