第45話 召喚魔法陣1
今俺は地図を広げて眺めていた。
王都で買った歴史書の中に、地図が入っていた。もしくは、ヴォイド様に言えば、地図くらいであれば貰えると思う。
その地図を見ている。
「……最盛期の半分の領土。東側を亜人に取られたとする。
これは、旧王都を落とされたと考えよう。
その旧王都を中心にして、円を描くように6都市が書かれている。
3都市は、亜人領になっているだろうから、残りは3ヵ所。そして、そのうちの一つが今の王都……」
地図から、地理的な歴史を推測して行く。
そして、海岸線と森……。雪の降る地域……。今いる開拓村の位置を推測して行く。
それと俺の元査定係の言葉……。
『召喚魔法は、昔各地で行われていた』
地図はその言葉を示している。
「南に島があるとも言っていたな……。それと小規模となるけど、新たに6ヶ所の都市を作っていると考えられる。
そうなると、地図上にある2ヶ所は、放棄された可能性も高いな」
推測の域を出ないけど、この国が行おうとしていることは分かる。
街道の整備や、使える土地を最大限に生かそうという試み。都市を6ヶ所設けるのは、貴族の数や人口に関係しているのかもしれない。
王様なのか宰相様なのかは分からないけど、かなり考えられて開発が行われていると思う。
まあ、今いる開拓村などは、かなり無謀な開発事業だけど……。
「100年後を見据えているのかな……」
ヴォイド様の言葉が頭を過る。
まあいい。俺の考えることじゃない。
それよりも……だ。
「旧都市と思われる場所は、近くにあるんだな……」
王都と開拓村を繋ぐ道の途中で、方向を変えれば着くことが分かった。
「……ここに、召喚魔法が行われていた痕跡があるはずだよな」
もしかしたら、まだ人が住んでいるのかもしれない。
「……見に行きたいな」
本音がこぼれた。
このまま、春までなにもしないでいるよりは、忙しくなる前に済ませておきたい案件だ。
開拓村には、重労働を強いることになるけど、多少のわがままは言わせて貰いたい。
◇
「遠出かい?」
「はい。昔、都市があったところを捜索したいと思っています。20日前後で戻って来ますので、許可が欲しいんです」
ヴォイド様は困惑気味だ。
エレナさんとセリカさんは怒っている。
それと薬師のテトラさんは、ソワソワし出した。なにかを考えている。
ザレドさんは、直立不動で表情が読めない。
「ふむ……。止めることはできないね。
仕事も少なく、今しかないと言うのは理解できるが……。正直危ないよ?」
「危険な場所なのですか?」
何もない筈なんだけどな……。
「何者かが住み着いているだろう。盗賊程度であればいいのだが、魔物であったならば群れとなっているだろう。
猪や兎であればまだいいが、オーク族が住み着いているとかね……。
それにアンデッド族とは出会ったのだろう? スケルトンとかだね。
推測でしかないが、あり得ると思ってくれ」
なるほどね。
言いたいことは分かる。危険な土地になっている可能性もあるのか。
だけど、石畳の廃墟に人族以外が住み着くとは思えない。それに100年前の廃墟なんだ。建物も崩れているはずだ。
アンデッドは分からないけど、武器防具の供給がなければそれほどの危険性も感じない。オーク程度の魔物であれば、もう俺の敵でもないし。
戦争の跡地であれば、近づく気はかったけど、放棄された都市であると思う。
アンデッドが出たとしても、数も装備もたかが知れていると思う。もう、夜中に氷点下になることもない。前回のような事にはならないと思う。
それと……、今の俺であれば、囲まれても対処できる自信がある。
その後、質問に丁寧に答えて行くと、ヴォイド様が折れてくれた。
それと、今回は俺一人で行くことにした。
◇
夕食が終わって、俺の家……あばら家に帰って来た。
明日からはちょっとした遠出だ。衣類だけでも集めておくか。食料は、10日分を受け取っている。その時のエレナさんは、無表情だったな……。
そんな事を考えている時だった。
誰かが来た。
あばら家から顔を出す。
「薬師さん……、じゃなくてテトラさん。何かありましたか?」
「少しお話があります」
なんだろう?
「これを見かけたら、採って来て欲しいのですが」
テトラさんが、本を開いて薬草と思われる絵を指差して来た。
「……採集の依頼ですか?」
「はい。開拓村では手に入らない薬草もあります。見かけたらでいいので、探して来て貰えないでしょうか?」
そう言って、手書きの本を渡された。
中を見ると、実物の草が貼られている頁もあり、生息場所や採集方法が細かく書かれていた。
それと、効果も。
解熱や解毒、胃腸の改善や麻痺昏倒なんてのもある。
「何時もは、他の街から購入されているのですか?」
「……ほとんどがそうです。ですが、ザレドさん達に頼んでいる物もあります」
「今は、雪解けの季節ですが、薬草は生えていますか?」
「……芽吹いていると思われます」
ふむ。断る理由はないな。
その後、生息場所や採集方法などの詳細な話を聞くことにした。
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