後日談ー終ー
「なぜ、アルベルト王子、あなたは…国外に追放されたはず」
「あぁ、戻る気はなかった…俺は死ぬ予定だったからな、何処か遠い場所で死ぬつもりだった、死に場所を求めた俺は各国を回って気づいたんだ………やはり俺に王の資格はなかった、愚かな者が王となれば結末は民を苦しめて破滅するのみだ」
「それに気づいて、一体どうする気なのですか」
「俺には罪しかない、彼女を傷つけた事も、兄に俺を断罪させてしまったのも全て俺の責任だ、幸せになる資格なんてない、だがそんな俺でも何かの役に立てるんじゃないかって」
「何かの役に………ですか?」
「…死に物狂いで力を得て思ったんだ…俺はこの世界に蔓延る愚者を、俺と同じ愚か者を止める…幸せになる資格のない俺はせめて幸せを作る人間になりたいんだ」
そう言ってアルベルトはローブからある物を取り出すとそれをマリアンヌへと投げた
「記録器…なぜこれを」
マリアンヌが受け取ったのは最近他国が開発したという魔法によって写真を記録できる魔法具
決して安くはない、高価な物でギリシア王国ではまだ一つもないはず
「これを渡したくて来たんだ…死に物狂いで人々を助けた時に手に入れた金で買った………彼女と兄の幸せを記録してやってくれ、幸せは思い出となり消えていく、だがそれがあればどんな時でも思い出せる………そして…その記録はきっと永遠に残るはずだから」
アルベルトはそう言って、再びフードを被り歩き出した
マリアンヌは魔法具を握りながら、呼び止める
「お待ちください、アルベルト様………」
アルベルトは歩みを止める
その背中はもう振り返らない意志を見せていた
彼の道は修羅の道だ
だからこそ伝えねばならない
「あなたは先ほど、幸せになる資格はないとおっしゃいました………ですがそれは違います、本来の貴方の罪は牢獄に死ぬまで囚われる事でした、ですが……ルナ様が国外追放に変えて下さったのです…それは追い出すためではありません!!貴方に、幸せになってほしいからです………生きていれば変わるものがあるはずですから…」
アルベルトはその言葉を聞いて目元を拭う
「そうか………そうだったか………俺はまた、救われていたのだな…」
涙の混じる声で肩を揺らしながら、彼は再び歩き出した
「幸せになって下さい、ルナ様のためにも」
マリアンヌの言葉を背中で受け取りながら、彼は呟く
「俺は#反逆者__レブル__#を名乗る、どんな悪にも反逆して見せる………そしてこの罪にも…彼女の願いを叶えるためにもあがいてみせるさ」
彼は…その言葉を最後に風と共に姿を消した
跡も残さずに
「必ず………ですよ」
マリアンヌはそう呟いた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「マリアンヌ、その傷はどうしたの!?」
「ご心配なさらないでください、ルナ様………木の枝に引っかかってしまって、それよりもオスカー様、ウィリアム様………そちらにお並び下さい」
私とオスカー様、そしてウィリアムはマリアンヌに言われた通りに並んだ
不思議に思ったが彼女の手に持つ物を見てオスカー様は何か気づいたのだろう
「記録器、誰かからいただいたのかい?」
オスカー様の問いにマリアンヌは頷いた
「ええ、レブル様より………私の知り合いです」
「そうか……いいものを頂いたな、感謝せねばな」
「ええ、ですので皆様の幸せな記録を撮ろうと思いまして」
オスカー様に聞くとそれは写真を撮る機械のようで
マリアンヌは私達の三人の幸せな姿を撮ろうとしたようだ
「マリアンヌ、こっちに来て」
「は、はい」
近づいてきたマリアンヌから私は記録器を取ると、そのまま頭上に掲げた
私とオスカー様、ウィリアム、そしてマリアンヌが写る位置に
「私達の幸せの中にマリアンヌも入っているのよ、だから一緒に…ね?」
「!!………………はい…嬉しいです」
「お父様!抱っこしてください!」
「あぁ!よっと…ウィリアム、あの機械をよく見て」
「さぁ撮りますね!!」
パシャリ
軽快な音と共に幸せの一ページが記録された
笑顔で映る彼ら
その記録は色あせずに増えていく、彼らの幸せを追うように
ウィリアムに妹ができた日や
笑顔で遊ぶ子供達の写真
そしてマリアンヌが結婚をした日
オスカー様と私が寄り添い、多数の民に惜しまれながら退位した日
それら全てが記録されていく
永遠に続く幸せを感じながら
二度と手放さないように
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまで読んでいただきありがとうございます
後日談はここで完結となります。
物語も此処で終わりの予定でしたが
最後にとある騎士が結婚するまでのお話を数話投稿予定です
良ければあと少しだけお付き合いください
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます