第4話 大好きな、俊哉君
「静流!」
「あ、
静流は、中学生になったばかりだ。しかし、小学生の時から仲の良かった、
「俊哉君、次の土曜日デートしない?」
「あぁ、うん!どこ行く?」
「うーん…図書館で勉強!!」
「それってデート…??」
二人で目あわせて、
「ふ…あはははは!!!」
と笑い合った。
静流は、本当に幼い頃から、その顔立ちは可愛いを通り越して、美人になるに違いない。そう、両親に収まらず親戚一同、思っていた。
そうこうして静流が小学四年生の時、同じクラスだった俊哉に告白され、”まずは友達から”と言う、まぁまぁありがちな形で始まった。
そのまま順調に友達から、恋に成長し、今に至る。
俊哉は、そんなに特徴のある印象はなかったが、静流にはいつでも笑顔で、二人の恋は、
”あの戸野静流に彼氏が出来た!”
とありとあらゆる中学まで轟いた。それほど、小学生の時から静流を狙っていた男子が、いかにたくさんいたか、を知らしめた。
「戸野さーん」
「静流ちゃんって呼んでいい?」
「今度うちのクラスにも来てね♡」
静流は、彼氏がいると知っていながら、静流はとにかくモテた。
俊哉と静流が視聴覚室でお昼を食べていると、
「静流は大変だな」
「え?何が?」
「モッテモッテじゃん」
「ふ…俊哉君、やきもち?」
「そうだよ!やきもち!」
「ふ…よかったぁ!全然やきもち焼いてくれなかったらどうしよって、少し不安だったから…」
「今日、一緒に帰れる?」
俊哉が静流に尋ねた。
「あ、ごめん。来月、練習大会あるから、部活、休めないんだ」
「そっか。寂しいけど…」
悲しそうな顔をする俊哉。
「ごめん、俊哉君!」
「…嘘、嘘。中学で静流剣道三段だもんな。試合、頑張れよ」
「うん!ありがとう、俊哉君」
「ねぇ、明日、静流の家遊びに行って良い?」
「え?ダメだよ!いきなりは!」
「なんで?」
「お父さんが気絶する」
「…ぶ…あははは!!何その理由!!!」
「もう!本当に厳しいんだよ?お父さん。家に来てもらう前に、ちゃんと了解取らなきゃ」
「なんか静流お金持ちの令嬢みたいだな!」
「え、だって本当に令嬢だし」
「へ?」
「THONHO《とうのう》の社長お父さんだもん」
「本当に?マジずげー」
「でも、私は普通だからね。俊哉君なら分かるでしょ?」
「まぁまぁね」
にやついた俊哉に、
「何それ。その言い方」
「だって静流、天然じゃん!普通ではないよ」
「もう!!」
「あはははは。嘘嘘、頑張れよ?」
「うん!頑張るね!」
そして、一か月後。
大会が終わった。
静流は意気揚々と俊哉に電話をした。
「俊哉君?」
「あ、静流?どうだった?大会」
「…優勝しちゃったぁ!!」
「マジか!すげーな、静流!明日メダル見せて!」
「うん!」
「あーでも明日まで待ちきれない!今からN公園来れる?プレゼント、用意してたんだ!」
「えー!!本当!?行く行く!N公園なら近いし。じゃあ、今からいくね」
大会で優勝できたこと。俊哉が大いに喜んでくれたこと。それらがうれし過ぎて、静流は公園を目指した。
N公園に着いた静流が思ったのは、まずこの公園は街頭がない。
一瞬恐怖が襲ってきた。
「俊哉君?何処?」
「キャ!ム…」
突然、後ろから口塞ぎ、ものすごい力で公園の樹の影に引っ張られ、口はガムテープ。手には手錠。もって入れば勝てたかも知れない竹刀も奪われてしまった。
「んー!!んー!!(嫌!!誰か助けて!と…俊哉君!!)」
じゃり…。誰か近づいてくる。
(俊哉君!?)
暗くなって顔は見えにくいが、シルエットは俊哉だった。
俊哉は、乱暴に、ふさがれた、口のガムテープをはがした。
「俊哉君!助けて!」
「バーカ、プレゼントあるって言ったろ?」
「…」
違う。いつもの俊哉じゃない。すぐにそれは分かった。
「俺はやりて―だけなのに全然やらしてくれねーんだもん。ちょっとお仕置き?」
「と…」
俊哉の態度に静流は恐怖しかなかった。
「それと、あんなでかい会社の娘だったんなら言えよ。たーっぷりもらってあげたのになぁ」
「お前ら、しっかり抑えとけよ!」
そう言い終わると…
男三人に静流は抵抗しても抵抗しても全く動けず、俊哉が静流の胸をもんだり、太ももを触ったり、本番が始まる瞬間、もう静流は諦めた。只の人形のように涙だけ溢れ流し、目を閉じた…。
その時、
「おい!何してんだ!?」
男の人の声だった。
「うるせぇ!消えろ!」
暗闇で、自分より強いのかはたまた弱いのか、分からなかったが、とりあえず俊哉が出来る限りどすの利かせた声でそいつが逃げるのを待った。
ところが、通りがかりの男性は、めちゃくちゃ強そうだった。
その男性は、公園の中に入った時すぐわかった。こいつらはレイプしよとしていた…と。
とりあえず、少女に自分のブレザーをかけ、振り返ると、思いっきり俊哉の頬をぶん殴った。
「お前ら…まだ中学生じゃねぇかよ。…ふざけんな!!!!」
そのまま三人をばっきばっきに干した。
三人が気絶してる間に、警察を呼び、警察が来るまで、只々泣いていた静流に優しく、
「大丈夫か?痛いとこないか?」
しかし、静流は何も言わず、立ち上がると、一歩一歩ふらつきながら、あるものだけ拾って、鞄も携帯もメダルも破かれたブレザーもその場に残したまま暗闇に消えて行った。
家に着くと、呆然として玄関を開け、
「遅かったわね。大会どうだったの?ちょっと待ってね、電気付けるわ」
その光を浴びた姿は、それはそれは酷い様だった。
「静流!?どうしたの!?パパ!早く来て!静流が…静流が」
リビングで娘の優勝した、との報告が電話であったため、静流を思いっきり誉めてやろう、うきうきした気持ちで帰りを待っていたのに…、帰ってきた娘は、傷だらけだった。心も亡くなったように、何も言わない。
「とにかく、お風呂に入りなさい。泥まみれだから。さ…」
湯船につかって声を出さず湯船からお湯を溢れさせるんじゃないかと言うくらい、泣いて泣いて泣いた。
次の日から、当然と言えば当然で、静流は不登校にになった。食事もとらず、口にするのは水だけだった。
どんどんやつれて行く静流を病院へ連れて行った。
精神科の先生から支持され、個室に入院した。しかし、食事は家にいる時とほとんど変わらない、点滴のみだった。
(死にたい…もう…もう…)
その時、静流も気付かないうちに、公園で拾った何かを、お風呂に入ってる間もずっと両手でぎゅうっと握りしめていた。
(なんだろう?)
それは、学生手帳だった。
助けてくれた、あの人の。
「原田…亮…R高校…一年二組」
ボソッと呟くと、そっとベッドから静かに起きると、その手帳の持ち主に会いに行こう。そう思った。
竹刀だけを手にして、そしてこれしか出来ない、と、両親がくれたお小遣いを使う事なく貯めていたら、かなりの大金になっていた。
その総額数千万。これならお礼が出来る…。そう思ったのだ。
一人でも怖くない…私にはこれがある。竹刀。これさえあれば、どんな奴でもぶったたおせる。
私は…強い。
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