第35話 第11話
出されているコーヒーを飲み干してから店を出た俺は藤田しげるに電話をする。
コール音がなると、すぐに彼は電話に出た。
「ーーもしもし秀二です」
「おう」
「これから、お宅に伺ってもいいですか?」
「いつでもいいよ。おいで」
徒歩数分。
俺はなぜあの男のところに行こうとしてるんだろう?
そんな事を考えながら。
彼の家は彼のボロボロの服装とは違い、新しくて、広すぎる家だった。
彼と雑談した後、俺は彼に聞いた。
「俺、今日ここに泊まらせてもらっていいですかね?ーー家に帰りたくなくて」
「好きにするといい。ーー君はまだ未成年だったかな?」
「はい」
「ーーまぁいいだろう。今日は少しくらい付き合えよ」
藤田しげるは、ちゃんとした服に着替えて、お風呂に入った後、俺にビールを注いだ。
「ーーありがとうございます」
俺は笑って、とりあえずビールに口をつけた。
口についたビールの泡をなめるーーまずい。こんなもの飲みもんじゃない。
そう思いながら、俺は苦笑いを浮かべる。
30分ほどの時間が経つと、既に藤田しげるは酔っ払い始めていた。
「秀二って言ったかな?」
「ーーはい」
秀二は同意を示した。
「前に話しただろ?俺たちがお前の父さんを殺したってーー」
一瞬で僕は、身体中から血の気が引くのを感じた。きっと俺の表情も緊張しているだろう。
「ーーあの話には続きがあるんだ」
酔った勢いなのか?しげるは語り始めた。
ーー続き?どんな??
「話していいのか?わからない。ーーでも、聞いてくれるか?」
真っ赤な顔でしげるは俺に聞いた。
「はい。ぜひーー」
「健吾は警察に売るなんて言ってなかったんだーーただ純粋に共犯だという証明をしあおう、そう言ってたんだ。彼もまた裏切りを恐れていた。だからーー」
その表情は本気そのものだった。藤田しげるは、父さんの味方だったのではないか?と思ってしまう。
「ーー俺もそうだったんだ。いつ裏切られるか、分からない恐怖に怯えていた。だから、俺は健吾の意見に賛成だったんだ。でも、それを伝える前に、太郎はあの灰皿で健吾の事を殴り倒していた。それを見たら俺も反対意見を言う事が出来なくなってしまったんだ」
しげるの目からは大粒の涙がこぼれ落ちていく。なぜか、俺まで涙が溢れた。
天井の「はり」に釣られ、揺られていた父の遺体。それを見た瞬間、俺自身が小さくなって弾けた。
「ーー秀二、必ず俺の死の原因を」
苦しそうな父の声が聞こえた気がした。
真実を知る事がどれだけのリスクを持っているのか?俺は痛感した。
あの日の悪夢は消えることはない。
真実を知れば知るだけ悲しくなる。
その日。
俺も飲まなきゃやってられない気分になった。酔っ払っている藤田しげると、朝方まで飲み明かした。
朝方3時を過ぎた頃。
飲み疲れた藤田しげるは、眠ってしまった。
ーー俺の復讐はこれからだった。
藤田しげるの寝顔を一枚パシャリとケータイの写真で取った。
そして、顔に落書きーーこの様子じゃしばらくは起きそうもない。
藤田しげるのまぶたに、目を書いた。
そして、右頬には「犯」と左頬には「人」と書いた。
その顔を一枚パシャリ。
だんだんと楽しくなってきた。
朝方4時頃、そのまま俺も眠りにつく。
朝9時、俺は目を覚ましたが、藤田しげるはまだ眠っていた。
「ーー昨日はありがとうございました。また連絡します」
短めの置き手紙を置いてから、俺は彼の寝顔を見て、吹き出しながら彼の家を出た。
俺はこれだけで充分だ。
家に帰ると次のターゲットに連絡した。
沢田昌平だ。
「もしもし?」
相変わらず愛想のない話し方だ。
ーー見ていろ!!目にものを見せてやる。
俺はその日。
沢田昌平と会う約束をとりつけて、電話を切った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます