第24話 第八話

父の見えていなかった姿が、見えた気がした。

これまで集めた証言や証拠品から、いろいろと想像できるようになってしまった。


父を殺した犯人である四人。


山崎太郎。

沢田昌平。

中山兼。

藤田しげる。


彼らがいかに卑劣な犯人だとしても、彼らの事だけを責めるのも間違いに思えた。

父の死ーーそれは父にとって自業自得ではないのか?


僕らに隠して悪事を働いていた父にも非があったんだ。


それから丸一日をかけて、悩んだ。


ーーこの事件。

一体誰が悪いのか?

僕は誰を恨めばいーのだろう?


漠然とそんの思いがグルグルと回っている。

そんなタイミングだった。


原口恵が訪れたのはーー。

「ただいまー」

「おかえりなさーい」

父が亡くなってから一緒に住んでいるからか、普通に母と子という関係になれている。

父の死の真相を調べ始めた時も、母の存在がなければ途中で挫けてしまっていたかも知れない。


恵は荷物を置き、すぐに座った。


「それで、真相はわかったの?」

「うん。ーー残念だけど、、」

「聞かせてーー」

瞳は微笑んだ。

「ーー知らない方がいいこともあるよ?」

「うん。いいよ」

しばらくの間を開けて、僕は深呼吸を繰り返してから、重い口を開いた。

「結論から言う。お父さんは悪人だった」

「ーーは?」

瞳はキョトンとしている。

「どーいう事?」

「お父さんが殺される理由になった事件があるーー3年前の清水奏太殺害事件だ」

「うん。ニュースにもなってたわよね?ーー覚えてるわ」

「父さんはその事件の犯人を知っていた。そして庇ったーーそれだけなら良かったけど、父さんはその犯人をゆすった。どうやら、それが原因で、今回殺される事になったようだ」

「犯人って?」

「あのメモに書いてあったうちの一人ーー山崎太郎。彼がおそらく実行犯だ」

「後の三人は?」

「清水奏太殺害事件の時、その凶器となる灰皿は、沢田昌平のものだった」

「うん」

「そして父さんは太郎が逃げていく姿を見ながら、彼を揺するという方法をとってしまった。お金を払う以上、共犯になる」

「うん」

「藤田しげる、父さんに渡すお金だと知っていて、そのお金を用意してしまった」

「中山兼、彼は他の罪でつかまっていて、会えなかったけど、、だいたいこんな状態で父さんが殺される理由になったんだと思う」


「なるほどね。筋は通っているかも知れないわねーーそれをどう確かめるつもりなの?」


「もう一度、彼ら四人に会ってこの考えをぶつけてみます」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る