東京プラネタリウム
東京
冬、青年
「当たり前だろ」
十二月下旬。僕は一人で、慣れた道を歩いていた。青漆色のハイネックのセーターが心地よく着られる程度の寒さの朝だった。今日も晴れなのか、と思いかけたところで、自分にそう言い聞かせる。
僕が生まれるよりも遥か昔、東京の空には雲が飛んでいたらしい。厳密にいうと、今でも雲は飛んでいるのだが、それは僕たちのいるところからは見られない。今の東京は巨大なドームで包まれている。そのためここから見上げる空は、そのドームの半透明なパネルが通す淡い色をした、朧けた光でしか構成されていないのだ。晴れと呼ばれているものの、昔の人たちが想像するような、澄み切っている、あるいは快活な雲がいくつも散りばめられている青い空に地面をあたためる太陽、なんてものではない。今の時代、ここからわかるのはせいぜい太陽の位置くらいだ。それも、ぼんやりと。雲のない曇りと言ったら矛盾しているが、実際にはそれが一番しっくりくる。
夢の中に出てくるほど渇望している密かな願いは叶えられないまま、また今日もあの場所へ向かった。
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