第95話

 翌朝目を覚ますと、アンちゃんは未だ部屋にいる様だった。いつもなら俺が目覚めるより早起きして稽古しているはずなのに。お腹でも壊しているのだろうか?


 暫く待っても部屋から出てくる様子はない。やはり具合が悪いのだろうか。もう直ぐ宿の朝食の時間が終わってしまう。仕方なく俺はアンちゃんに声をかける事にした。


「おーい、アンちゃん。起きてるかい?朝ごはんの時間だよ。」

「わ、分かった。今行くわ。」


 一応目覚めては居るらしい。やはり具合が悪いのかな?俺は心配ながら場所確保のため一階へ下りた。


「アンちゃん、どこか具合が悪いのかい?心なしか顔も赤い様だし。」

「何処も具合悪く何て無いわ。至って健康よ。」


 何か無理している感じがしないでもない。熱がある様だし、やはり薬を飲ませるべきか。


「アンちゃん、どこか具合が悪いのかい?心なしか顔も赤い様だし。」

「何処も具合悪く何て無いわ。至って健康よ。」


 俺が如何どうするべきか迷っていると、アンちゃんから声が掛かった。


「ねえジロー。今日はどうするの?」

「そうだなあ。普通に冒険者の仕事をするか。それかもう一つの方をするのが良いか。アンちゃんはどう思う?」


 アンちゃんの具合が悪いのなら、今日一日くらい休みを取るべきだろう。俺はそう思った。


「そうねえ。森へ行く方が良いと思うわ。私たち、まだこの街に来て日が浅いから知り合いも少ないし。もう一つの方はもう少し知り合いを増やしてからの方が良いと思うわ。」

「じゃあそうしようか。」


 確かに俺たちはこのメレカオンに来て日にちが浅い。知り合いも居ないに等しいから聞き込みも難しいか。さすがはアンちゃん、考える事が的確だな。


「じゃあそうしようか。」


 俺はそう言うと組合事務所へ向かった。


 組合事務所へ行くと常設依頼の魔獣討伐があったので、それを受注する。まあ、フォレストウルフやフォレストボアを狩る仕事だ。


 テスラ王国との国境付近で魔獣狩りをしている。両国の冒険者が狩をしている為かそれ程数は居ない様だ。

 魔獣よりもアンちゃんを観察しているが、何時もよりお花摘みに行く頻度が増えているという事は無いみたいだ。


 良かった。お腹でも壊していたら無理やりにでも薬を飲ませようと思っていたのだが、体調は問題ないみたいだ。やっぱり旅の疲れだったのかな。


 俺は仕事ばかりの生活を反省した。元々コーラス様からは好きに生きて良いとのご了承を得ているのだ。少しくらいのんびりしたって問題はないだろう。


 今度アンちゃんを誘って何処かへ遊びに行こうかと思う。この近くだと何処か良い所あるかな?俺はアリア様から頂いたこの世界の常識を思い出していた。

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