第17話

「銀貨1枚になります。」


俺は受験料を払うと受験会場へ入った。と言っても冒険者組合の10人も入れば満席になりそうな会議室なんだが。そう、今日は冒険者試験の日なのだ。毎週試験があるやっているので、受験者は俺ともう一人しかいないらしい。


 午前中はペーパーテストで、午後は実技試験との事。前世でも資格試験を受けに行ったなー、と感慨にふける。


 この世界の冒険者と言いう存在はそれなりに尊敬される職業らしい。体を張って魔獣と戦ったり、貴重な植物、鉱物などを採取してくるからだそうだ。何それ、テンプレとちょっと違うのね。荒くれ者がなる職業じゃないんだ。


 中にはヒャッハーな人もいるらしいが、殆どの人は折り目正しいきちんとした人らしい。(受付のお姉さん談)ほんとかなー。わが社の社員は皆優秀です、なんて言ってる様なもんじゃない。でもここ数日見ていた限りではヒャッハーの人は居なかったな。絡まれたくないけど、怖いもの見たさってあるよね。


 では兵士と冒険者の違いはというと、兵士は領主様からお給金を貰っているという事だ。だから街の治安維持や災害復旧、滅多にないが戦争なんかが主な仕事。それに対して冒険者は組合から仕事を斡旋してもらってお金を得る。前世で言えば警察官とか自衛隊の皆さんと民間警備会社の様な違いと言えば一番近いだろうか。兵士さんを増やせば良さそうに思うけど、大勢増やすと固定費掛かるしね。


 てな事を考えているうちに、時間になった。もう一人の受験者は15歳くらいの痩せ気味の男の子の様だ。たった二人の試験開始である。


 試験内容はいつの時代も読み書きそろばん計算問題。後は魔獣や薬草などの基本的な知識について。アリア様に教えて頂いた、と言うか頭に突っ込まれた知識があれば余裕余裕。にいちゃんの方をチラ見すると計算問題が苦手みたいだ。頑張れよ兄ちゃん。同期は俺たち二人しか居ないんだからな。


 ペーパーテストが終わったら、そのまま会議室で昼飯だ。朝早いので、昼飯は宿屋の女将に頼んで特別に作ってもらったサンドイッチですよ。あの固ったいパンを良く薄く切れるもんだね。味はまあまあかな。

 兄ちゃんの方を見ると何も用意していないご様子。お腹すくでしょう。食べ盛りの年頃なのに。


「昼飯は?」

「持って来てない。」

「半分やろうか?」

「え、いいの?」


 案外ちゃっかりしてるみたいだ。俺は兄ちゃんにサンドイッチを半分分けてあげた。兄ちゃんはあっという間にサンドイッチを平らげると物欲しそうにこっちを見ているが、残り半分はやらんぞ。


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