第108話 異種間コミュニケーション!
ー試合開始 数時間前ー
うーん、ネイトを探しに行くと言ったのはいいものの、何から手をつけていいのかわからない。
メラキュラ星の土地勘なんてあるはずもないし、当然ネイトが行きそうな場所もわからない。
そもそもネイトが連れ去られたのだとしたらネイトの意志など関係ないわけだから予想もできない。
うーん、こうなるのがわかってたから監督は俺たちを行かせるのを拒んでたのかな。
勢いで来たのは間違いだったのか。うーん。
とりあえずクレにメッセージだけは送っておこう。
朝はクレまだ起きてきてなくて、結局会えなかったからな。
1番大切なことは面と向かって伝えたが、まだピンと来てなかったようだし、一応内容を補完しておこうか。
さあ、次は何をしよう。
ネイトが向かったであろう方向だけは聞いていたから、とりあえずそっちに向かってみるか。
「アリス、とりあえずネイトが向かった方向へと行こうと思って……アリス?」
返事がないのでアリスの方を見てみると、アリスが何かと話している姿が見えた。
「アリスー……」
「……の写真の子見なかったか、アリスに教えてほしいの。
おねがぁい♡」
「ア、アリスさん? 一体何を……」
「あ、キャプテン!
いい情報聞いたよ〜。
昨日の夜、ネイトくんがゴストルさんと一緒にここ通っていくのを見たって! あ、ゴストルっていうのはこの幽霊っぽい生物の種族名!
向こうに向かったって、銃士隊さんの話とも一致するねっ!」
幽霊改めゴストルから話を聞いていたのか……。怖がらずに話を聞けるなんて……凄いな。
ゴストルとの会話。これは昨日まではできなかったことだ。
ゴストルが何となく音を発しているのはわかっていたが、それを言葉として認識はできていなかった。
しかし、そんな不可能と思われていたゴストルとの会話を可能にするアイテムが俺たちにはあった。
それがそう、この翻訳機だ。
ゴストルの言葉を昨日一日で研究し、解明し、この翻訳機をアップデートし機能の一つとして取り入れたそうだ。
たった一日でこの成果とは、オグレスの科学力、そして研究者たちの優秀さを改めて実感する。
そんなわけで、このアップデートされた翻訳機を使うことで、ゴストルとの会話が可能になったのだ。
「この調子で聞き込み続けよ〜」
こうして、アリスの聞き込みの元、ネイトの足取りを掴む旅が始まった。
ゴストルたちは口が堅そうだったが、これはアリスの可愛さがなせる技か、話しているうちに自然と情報を教えてくれるようになっていた。
この話術が必要だと思って、アウラス監督はアリスを俺に同行させたのかな。
「アリスは、その、凄いな。怖がらずに話せて。俺じゃ無理だ。
何かコツとかって……そういうのは無いんだっけか」
「え〜。そんなことないよ〜。
でもそうだねぇ。アリスが怖がってたら、ミアちゃんの怖がる顔が見れないでしょ? それは嫌だから、怖くなくなったって感じかな〜。怖いって感情より、より大切な感情を作る、みたいな?
あ、これ恥ずかしいからミアちゃんには内緒ね!」
「なるほど……。
言うなればレオみたいなもんか。あいつも女の子にいいカッコ見せるために怖がらなくなったって言ってたしな……」
「え゙」
「ん?」
「い、いやぁ〜。レオくんのそれとはちょ〜っと違うんじゃないかなぁ〜」
「え、そ、そうか。
よくわからんぜ」
そうこう話しながらも着々と足取りを追えている俺たち。
どうやらゴストルたちには固定の住処があって、基本その場所から遠くへはいかないから、昨日の夜の出来事だとしても立ち会っていた者が多いらしい。
そして情報も集まってくる。
情報によると、連れ去られたネイトは寝ぼけていた状態。つまり、自発的に逃げたわけではなかったようだ。
だが、となるとやはり敵に連れ去られたということになる。早く見つけ出さないと、心配だ……。
そして心配というともう1つ。隣の女の子、アリスだ。
アリスは基本ミアと2人でいるし、2人ともマネージャーとしての仕事に追われ、俺たちと長く話すこともない。
今回のように、特定の誰かと一対一で過ごすなんてことはないのだ。
まあつまり何が言いたいのかというと、アリスが可愛くて緊張してます、ということだ。やれやれ。
「キャプテンさん」
「は、はいっ!」
「えっ、ど、どうしたの!?」
「ああいや、なんでもない。ちょっと考え事してて……」
「んー?」
ジロジロと下から俺の顔を覗き込んでくるアリス。
やめてくれ。こんな状況なのに……可愛い……。
「なんか、キャプテンさん、まだアリスたちに壁あるよねぇ」
「え!? いや、そんなことは……」
「そんなことあるよぉ〜。まあ、キャプテンさんだけじゃなくて、他の人もだけど」
「……だって、Twinkle Star(※ミアとアリスのアイドルユニット名)なんて、俺たち世代からしたらそれこそスターだし……緊張も……する……」
「もー!」
「はいっ!」
俺の言葉を聞いて怒ったアリス。怒った……はずなのだが、全く怖くない。それどころか、可愛さしか伝わってこない。
ほんと、なんなのだろうこの生物は……これがトップアイドルというものなのだろうか……凄い。
「そんなのアリスからしたら、キャプテンたちなんて、国の代表として、今となっては星の代表として、毎日毎日努力して頑張ってて。
アリスなんかより全然スターなんだから、そんなに緊張しないでくださいよぉ〜」
「そ、そんなもんか?」
「そんなもんですよっ!
隣の家は青く見える、みたいなやつですっ!」
「…………」
「……?」
「……あ、隣の芝生は青く見える」
「あっ、芝生……」
「「…………」」
「「あははははっ」」
そうか。俺がアリスを尊敬しているように、アリスからしたらまた俺たちは尊敬の対象だったんだな。
なら、その期待に応えられるように頑張らないと。
それにしても、わざと諺を間違えて笑わせてくれるなんて、アリスはやっぱり優しいな。
とりあえず今のところ俺いるだけだから、何かしらで役に立ちたいところ。
「それで、次はなんて言ってた?」
「うん、こっちに行ったって言っ……え」
瞬間、アリスの体が大きく傾いた。
足元を見ると、その理由は一目瞭然。足場が無かったのだ。
崖
直前のあいつ。あのゴストルに騙されたのか……。
「アリスっ!」
俺は急いで駆け寄り手を伸ばす。
「キャプテンさん……!」
その手を掴もうと、アリスも負けじと手を伸ばす。
掴んだ! が、ダメだ。体が前に倒れすぎている。これだと……踏みとどまれな……い……。
やべぇ。
そう思ったがどうすることもできず。
俺とアリスは崖から落ちてしまったのだった。
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