第93話 力を追い求める者たち
「み、未来がいなくなった……?」
予想外の言葉に驚きを隠せない。
この事は聞かされていなかったのか、隣のミアとアリスも目を丸くしている。
「ええ。でも安心して、行方不明というわけではないわ。
メッセージが来ていたの。それがこれよ」
フィロさんに見せられたメッセージを確認する。
『突然すみません、フィロさん。
わたし、特訓の旅に出ます。探さないでください』
「えっと……これだけですか?」
「こ、これだけよ」
……やったな、未来。
思い切りの良さが100パーセント悪い方向に働いたな、これ。
「え、でもフィロさん。これじゃ未来ちゃんどこにいるのかわからなくないですか!?」
「ええ。これだけだとわからないから焦ったわ。
でも安心して。その後、カグラから未来ちゃんの行方を教えてもらったから今は大丈夫よ」
「よ、よかったぁ……別に心配なんかしてませんけど……よかったぁ」
「と、いうわけなの。
勢いで飛び出しちゃったんだろうけど、未来ちゃんもチームのためを思っての行動だから、悪く思わないであげてね」
「……悪くなんて思いませんよ。
未来も頑張ってるって思ったら俺もやる気が出てきますし。
みんなには俺から伝えておきます」
「ありがとう龍也くん。頑張ってね」
「はい!」
こうして俺は部屋を後にする。
そうだ。みんなわからないなりに頑張ってるんだ。
俺も絶対に力を発揮してみせる……!
***
「あなたたちは出ていかないの?」
龍也が出ていった後、もう用事はないはずなのに部屋から出ない2人のマネージャー。
疑問に思ったフィロがそんな2人へと声をかけた。
「えっと……」
「アリスたちにも、特訓、させてください。
……だよね? ミアちゃん」
「ええ、よくわかってるじゃない。アリス。
私、……なぜか決めつけていました。力を発揮できるのは選手たちだけだって」
「でもそんなことはないんだって、未来ちゃんが教えてくれました」
「だから、私たちもやります……!
地球のため……そして、頑張ってる選手たちのためにも、私たちも何か力になりたい……!」
いち早く動いた未来。そして、なにより毎日ボロボロになりながら特訓を続けている選手たちを見続けて、ミアとアリスもただ眺めていられるような人間じゃない。
「ふふ、お顔真っ赤にしながらよく言ってくれました」
「うっ、べ、別に……別に……」
「ほんとだっ! ミアちゃんかーわいいっ!」
「ちょっ、う、うるさい!」
照れながらも素直な気持ちを言葉にするミア。
その気持ちは当然フィロには届いている。
「でもでも、大丈夫ですか?
アリスたちまで特訓場にいったら、マネージャーがいなくなっちゃいますけどぉ」
「心配しないで、あなたたちの決意を無駄にするようなことは絶対にしない。
その分私が全力で頑張るわ。こう見えても、私結構有能なのよ」
「「フィロさん……!」」
「というわけで」
「「え?」」
突如、ミアとアリスの周囲が青白く光る。
これはワープ直前に起こる現象だ。
「いきなりだけど頑張ってきてねー!
もちろん、アイドルだからって甘くはしないから覚悟すること! それじゃあ、いってらっしゃいっ!」
「そんな、いきな――」
最後まで言うこともできず、2人は強制的に特訓場へと送られたのだった。
***
部屋を出た俺は当初の目的通りクレを探しながら歩き回る。すると、もう1人、用事があった人物を見かけた。
「アラン、少し話いいか?」
「あ、りゅ、龍也くん。なんでしょう」
なんだ? 一瞬凄く警戒されていたような。
と、そんなことを気にしている場合ではない。
ファクタのことについてアランに話をする。
「なるほど……。
これは確かに僕も頭から抜けていました。
……少し思いつくこともありますが、その前に一つだけ聞かせてください」
「?」
「貴方と予言の子は双子でした。
ではなぜ、貴方ではなくもう一人の子が予言の子だと断定されたのですか?」
「え、えっと……」
答えようとしたが、そういえばこの答えを聞いた覚えがなく、言葉を詰まらせてしまう。
「わかりませんか。
いえ、そこまで気になっているわけではありません。これだけ大きな事態、それ相応の根拠を持って動いているはずですから」
まあそりゃそうか。疑いを持つようなところではない。
「その上で僕の意見としては、可能性はある、です。
ニュータイプやニューグレ世代は地球だけの現象ですが、そんなことは関係ありません。
僕の、龍也くんにも何かしらの力がある、という仮説が正しければ、同じチームで寝食を共にしているファクタくんが力を発揮してもおかしくはないと考えます」
「そうだよな。地球だからってわけじゃない可能性もあるんだよな。
……そういえば、予言の子は一瞬だけどオグレス星にも来てるんだったな。オグレスにも何かしらの影響があってもおかしくないか」
「らしいですね。
ですから、ファクタくんも全然諦める必要は無いと思います。
それに、もし力が発揮できなくとも彼は僕たちの貴重な戦力です。気にしないでください、とお伝えください」
「了解。
……それにしても、やっぱしっかりしてるなアランは。頭も切れるし、なんでアランがキャプテンじゃないのか不思議だよ」
「……そう……ですね」
「そういえば、クレ見なかったか? 用があって探してるんだけど」
「ああ、クレートくんでしたら先程ミーティングルームの近くで見かけましたよ」
「本当か!? ありがとう、行ってくる! それじゃ!」
「ええ、お疲れ様です……」
アランとの話も終え、情報通りにクレの居場所へと向かう。そこにいたのは……
「クレくん、足は大丈夫ですか?」
「ああ、あれからそこそこ経ったからな。
遅れていた分を取り戻さなくてはならない」
「あ、いやえっと、その……」
クレと……ラーラか? なぜこんなところに……いや、チームメイトなんだしどこにいようがおかしくはないか。
盗み聞きするのはよくないな、話が終わったタイミングで話しかけよう。
そう思って待っていたら、突如隣を何者かが駆け抜ける。驚いてそちらを見てみると、その人物はクレ。先程までとは違い青ざめた表情で駆けていった。
「ふう、って、わあっ!? キャ、キャプテンさん!?
どうしてここに……」
「あーいや、クレに用事があって探してたんだけど……何かあった? クレ、顔かなり真っ青だったけど」
「えーっと、いやぁ、特には……無いんじゃないんですかね、あはは。
そ、それじゃあわたしはここで失礼します! お疲れ様でした!」
「あ、お、お疲れ……」
……なんだったんだ?
ていうか、またクレと話せなかった……。
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