第12話 続・自己紹介!

 「はじめまして、僕はファクタ。ポジションはミッドフィールダーで、出身は……オグレスだよ」


 「「えっ」」


 見たことのない選手だと思ったらまさかのオグレス星人。でも確かオグレス星人って……


 「オグレス星人って体弱いんスよね? 大丈夫なんスか?」


 俺と同じ疑問をザシャが口にする。


 「うん、そうだね。でも大丈夫! 足を引っ張るつもりは全くないよ。体が弱いなりに戦う方法も身につけた。君たちの力になれると思う……!

 地球人のみんな、改めて協力本当にありがとう。そしてよろしく! 絶対にこの大会を勝ち抜こう……!」


 よく見るとオグレス星人らしく筋肉量も少なく痩せているように見える。体が弱いなりに戦う方法というのがどういったものなのか、プレーを見るのが楽しみだ。


 もう1人の選手も見たことないけどオグレス星人なのか? その割には体つきがしっかりしているような……。


 「俺はルカ・ザウラだ」


 「……えっと、それだけ……?」

 余りの情報量の少なさに俺は咄嗟に聞き返す。


 「それだけだ。特に話すことは無い」


 えぇ……それだけって。

 地球人かオグレス星人かはもちろん、ポジションすら聞けてないんだけど……。

 俺たちが困惑しているとアウラス監督が代わりに話し始める。


 「ほっほ、相変わらず無口じゃのう。

 こいつはルカ、小さい頃からわしが育てた、弟子のようなものじゃ。少し気難しいところもあるが仲良くしてやってくれ。実力は保証するからのう。

 そうそう、ポジションはゴールキーパーじゃ。ヘンドリック、共に実力を高め合うことを期待するぞ」


 「は、はい! 頑張ります!」


 アウラス監督に名前を呼ばれたヘンドリックはやや緊張した様子で返事をする。

 ゴールキーパーが1人だと怪我の時に大変なことになるからな、もう1人いてくれたのは安心だ。アウラス監督の弟子ということで実力には不安はない。ただあの態度……仲良くするのは骨が折れそうだ。


 「さてさて次は男子どもお待ちかねのマネージャーの登場よ!

 準備はいいわね? さあ、おいでっ!」


 フィロさんの言葉に合わせて宿舎の電気が消える。そして俺たちの正面の壁にスポットライトが当たる。


 「何が始まるんだ……」

 「マネージャーが来るだけじゃないのか?」

 俺とクレは状況についていけず顔を見合わせる。


 「レオー、お前今からマネージャー登場だってのに全然騒がないんだな。さっきの2人で騒ぎ疲れたかー?」


 「馬鹿言え。俺は可愛い可愛いマネージャーがいることは事前に監督から知らされてたんだ。だから妄想も緊張も既に終わらせた。

 後はその時を待つだけだぜ」


 「そういえばお前朝からやけにテンション高かったもんな。これを知ってたなら納得納得。

 さてと、どんな子がマネージャーなのか……!」


 ペペの声が聞こえなくなるや否や聞き覚えのある音楽が鳴り始め……。


 「「いぇええええええい!」」


 突然大きな音を立てて何も無かった壁が開く。そしてその中から2人の女の子が登場する。


 「世界に輝く2つの星!」

 「瞬く間に全てを魅了!」

 「「さあ! 私たちの虜になりなさい!」」

 「「Twinkle Starです! よろしくお願いします!」」


 「「「「「うおおおおおおおお」」」」」


 流石に衝撃を受ける俺たち。まさかあのTwinkle Starに会えるとは。


 「「では、歓迎の証に1曲歌います。聞いてください。"北極星"」」


 イントロが流れ始めると同時に隣に座っているクレが俺に耳打ちで質問をしてきた。


 「なあ、あの2人って誰なんだ……?」


 「え!? クレ知らないのかよ!? あの2人はTwinkle Star。今1番きてるアイドルだ。とりあえず歌聞けば凄さわかるよ」


 「そうか……ありがとう」


 正直俺もアイドルに詳しいわけではないが、それでも知っていて当然なレベルの人たちだ。そんな2人のライブが俺たちのためだけに開かれるなんて贅沢すぎる。この場にいる全員が静まり返り前に立つ2人に注目する。

 そしてライブが始まった。初めて生で見る2人のダンスはキレが良く、透き通った歌声も綺麗だった。そして何より可愛かった。時間は一瞬で過ぎ去り


 「「ありがとうございましたー!」」


 俺たちは拍手で感動を表す。レオやネイトは嬉しさのあまり泣いている様子だ。


 「はじめまして! アリス・ティペットです! マネージャーとしてみんなを元気に、そして笑顔に出来るように精一杯頑張りますっ! よろしくお願いします!」


 「はじめまして。ミア・ウィリスよ。別にあんたたちなんてどうとも思ってないし、サッカーにも興味なんて無いんだけど、地球が滅ぶのはちょっとだけ嫌だから応援してあげるわよ。か、勘違いしないでよね!」


 「はいはいミアちゃん今日もツンデレだねっ!」


 「な、べ、別にそんなんじゃないし! サッカーなんてほんとルールくらいしかしらないし! 野球の方が好きだし!」


 「またまたぁ〜、オフの日に時々サッカー観戦に行ってるくせに〜」


 「あ、あれは間違えてチケット買っちゃっただけだから! ほんとは野球見に行きたかったのに! 全く情けないったらありゃしないわ!」


 微笑ましい掛け合いに心が和む。少し前までの緊張が嘘みたいに和らいでいくのを感じる。


 「なあ龍也、あの子もしかしてサッカーに対してツンデレ発動してるのか……?」


 「そういう子なんだ」


 「…………」


 「と、言うわけで私たち2人がこのチームのマネージャーをすることになりました! 2人ともサッカーはあんまり詳しくないけど、しっかり学んでお役に立てるようになる予定です!

 みんな! 一緒に地球を救おうー!」


 最高の盛り上がりを見せる中、近くでファクタがネイトに話しかける姿が目に入る。


 「盛り上がってるところ申し訳ないけどあの人たちについて教えてほしいな。地球のアイドル?」


 「え!? あ、そっか、ファクタさんは地球人じゃないから知らないんだよね」


 「うん、だから教えてほしいな。あ、あとファクタさんなんて他人行儀な呼び方じゃなくても大丈夫、ファクタでいいよ」


 「あ、じ、じゃあファクタくん。あの2人はTwinkle Starって名前のグループで、今地球で1番勢いがあるアイドルなんだ。なんと現役の学生で僕たちと同い年。それでトップアイドルなんだから凄いよね。あ、ファクタくんって何歳? 僕たちはほとんどが16歳か17歳だけど」


 「よかった! 僕も16歳だから君たちと同い年だ。

 それにしてもそんな若さで星のトップになるなんて確かに凄すぎるね。ネイトくんもやっぱりファンなの?」


 「えっと、ま、まあ、そこそこかな……。

 で、向かって右の橙髪でロングの子がミア・ウィリス。普段はツンツンしてるんだけどその実かなりのファン思いでそのギャップが凄くいいんだよね。ダンスも上手だししっかりしてるしで、推せる……!

 左の金髪でボブの子はアリス・ティペット。まさに天使って人なんだけど時々黒いところもあって刺さってる人が多いんだ。あとはミアちゃんが大好きなところも人気の理由かな、歌もかなり上手だし、推せる……!

 髪にお互いのイメージカラーのメッシュ入れ合ってるのも尊さポイント高いよね。1番人気の曲はファーストシングルの"Miracle Star Forever"だけど個人的にはセカンドシングルのカップリング曲の"A"がクールな曲調でそれなのに――」


 ……凄い喋るなネイト、相当好きなんだろうな。

 それにファクタともコミュニケーションとれているみたいで良かった。オグレス星人と地球人で壁ができたら嫌だと思ってたけど、このフレンドリーさがあれば大丈夫そうか。


 「はーい2人ともありがとう!

 いやー、地球のアイドルって可愛いのね。私ちょっと感動しちゃった。

 ということでメンバー紹介は終わり! これからはこの20人で一緒に戦っていくことになるわ。

 改めてみんな! よろしくね! そして頑張ろう!」

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