第6話 対決! 宇宙人! 後半戦!
前半が終わって0-3
ベンチに戻ってくる選手たちの表情も浮かなかった。
このままじゃマズいと思った俺は何とかしようとチームメイトに語りかける。
「みんな! このままでいいのか?
全力を出して負けたのならそれは仕方ないと思ってる。
だけど! 今のみんなが全力を出せているかと問われたら絶対にノーだ!
ブラド! レオ! お前たちがサッカー上手いのはよく知ってる! だけどサッカーは個人スポーツじゃない!
協力して、全力でサッカーを楽しもうぜ……!」
ベンチの分際で、と思われるかもしれない。だが現状試合に出られない以上俺にできることはこれしかない。少しでも俺の気持ちが伝わってくれたらいいのだが……。
「協力っつったってよお、アメリカ代表時代のチームメイトは俺様が同じプレーしてても協力しようとしてたぜ? ネイト以外は雑魚なのによぉ。
雑魚でもできる協力ができないのはお前らの落ち度じゃねえのか? まあお前は分をわきまえてベンチにいるだけマシだけどよ」
そんな返しをしたブラドに対して言葉を放ったのは将人だ。
「ガキみたいな言い訳してんじゃねえよ!
アメリカ代表のお仲間チームじゃないんだからちょっとはこっちに合わせる努力をしろよ!」
「合わせてもいいと思えるプレーができるなら合わせてやってもいいが、お前のプレーじゃ合わせる気も起きねえな。
それより協力っつーなら俺様の周りのディフェンス退けてくれよ。雑魚のお前らでもそれくらいはできるだろ」
「何を……!」
このままだと殴り合いの喧嘩に発展しそうだったので俺は将人をブラドから引き離す。
「離せよ龍也! ていうかお前早く試合に出て来いよ! あのバカとツートップとか死にたくなるぜ」
「迷惑かけるな、だが俺はまだ出られない。
そこで1つ頼みがあるんだが、お前もディフェンスに入ってくれないか? これ以上点を取られるのは致命的だ」
「は? フォワードの俺にディフェンスをやれと? 侮辱だな。それに守ってるだけじゃ勝てねえだろ!」
「すまない、一生の頼みだ。勝ち筋は俺が絶対に見つける。そこまで耐えてくれ。頼む……!」
「チッ、そこまで言われたら聞いてやるけどな、お前がフィールドに出たら俺もフォワードに戻るからな! だから早く出てこい! それに勝負も忘れんじゃねえぞ!」
「ああ……ありがとう……!」
***
結局ハーフタイム中にチームの改善は見られず、微妙な雰囲気のまま始まった後半戦。
しかしいきなりから予想外のことが起こる。ヒルが完全にディフェンスとして守備に参加しだしたのだ。これによって将人と合わせて2人がディフェンスに加わり守備はかなり強化された。
とはいえ前線は相変わらずで苦しい時間が続く中、右サイドのレオとペペに動きが起こる。
頑なにパスをしなかったレオがペペに対してパスを出したのだ。2人の突然の連携により対応が遅れた相手の隙を付き、レオが地球チーム待望の1点を決める。
「いぇーい! 見た? 未来ちゃん! 俺の超かっけえシュート!」
緊張感の欠片も無く騒ぐレオ。何故急に動いた? 理由はわからないが、これは俺たちにとってターニングポイントになるだろう。
しかしそう思ったのもつかの間、喜びは長くは続かない。レオとペペにもマークが張り付き、連携を取るのは難しくなっていた。というよりそもそも2人が再度連携しようとしてる様には見えなかった。
それに、心なしか相手の動きのキレが良くなってきた気がする。
後半も15分が過ぎようとしていた。
俺が焦りながらも監督からの言葉について考えていると
「大丈夫……?」
「ああ未来、ごめん。今ちょっと考え事を」
「わかってる。でも1人で考えすぎるのも良くないよ。ちょっとだけお話しよ……?」
正直今は考え事をしていたかったが、何も思いついていなかったのも事実であるため、頭を切り替えるのも兼ねて未来の話に乗ることにする。
「すごいよねぇ、今のペペ先輩とレオ先輩」
「確かにな、即席の連携とは思えない上手さだった」
「特にペペ先輩だよね、完全にレオ先輩を動かしてた」
相変わらず未来のサッカーを見る目は確かだ。細かいところまでよく気づいている。
「連携で言ったらディフェンスもだよな。特にアラン。ザシャとヘンドリックの完成された連携に、将人とヒルという異分子を上手く繋いでいる」
「うんうん、こんなに上手い選手ばっかりなのにブラド先輩はなんで協力しようとしないんだろうね。ネイト先輩のことはかなり買ってるみたいだけど、他の選手たちとネイト先輩にそこまで差があるようには思えないなー」
確かに他の選手が動いてもブラドは見向きもしないからな。正直個人の能力だとペペやクレートがトップクラスだろう。ネイトを特別評価する理由でもあるのか……?
「まあでも監督も『守ってるだけじゃ勝てない』って言ってたし重要なのは前線の選手なんだろうけどー、うーん」
「だよなぁ……。ありがとう未来、少しだけ頭がすっきりした」
「えへへ、それならよかった! 私は龍也くんのこと信じてるから! 自信持ってね!」
こうして未来との会話が終わる。
頭がすっきりしたのは事実。しかし起爆すべき爆弾がわかったわけではない。
前線の選手……やはり今になって動いたレオとペペ、どちらかが起爆すべき爆弾なのか?
そう考えている俺に監督は再度話しかけた。
「ほっほ、声が漏れておるよ。
それにしても、先程の会話はかなりのヒントじゃったのお」
先程の会話? 俺と未来の会話? 俺と監督の会話? 違う。タイミングと先程という言葉のニュアンス的にハーフタイムの会話のことだろう。
一緒にいたのはほんの少しの間だが、監督について俺も分かったことがある。それは意味の無いことはしないということ。
監督が俺に対して取ってきた行動は3回。
1つ目は俺をベンチに置いたこと。2つ目と3つ目は俺に話しかけたこと。
ベンチに置いたのは、俺に試合に出てたら気づけないことを気づかせるため。それに加えて好きなタイミングで自由に話しかけられるって理由もあるか。もしかしたらこっちが本命かもしれない。
次に話しかけてきた理由、先に2回目について考える。
話しかけてきたのは俺が独り言を漏らしたタイミング。その内容はレオとペペに関して。
そして内容はおそらくハーフタイムの会話のこと。俺が関わってる限りではハーフタイムにレオとペペの会話は聞いていない。それは近くにいた監督も理解しているはず。つまり、起爆すべき爆弾はレオとペペではない……?
次に最初に話しかけてきた件について考える。
内容は俺に考えるべきことを伝えただけ、つまり今重要なのは何故あのタイミングだったのか。それはおそらくあのタイミングで答えを出す材料が揃ったから。
当時の様子を思い返す。それにハーフタイムでの会話を加えると……。
「監督」
俺は監督に声をかける。
「ほっほ、わかったかの?」
「はい! 起爆すべき爆弾は……」
***
「タイム! 選手追加!」
その声と同時に俺はフィールドに入る。
真っ先に駆け寄ってきたのは将人。
「やっとかよ! それで! 見つかったのか? その勝ち筋ってやつは」
「ああ! ディフェンスを任せてすまなかったな。ここからが反撃だ……!」
試合は相手チームのスローインからスタート。
「どけえ!」
投げられたボールをブラドが強引に奪い、またも1人でゴールに向かっていく。ここまでは俺の想定通り。
ドリブルをするブラドに俺は近づく。
そんな俺を見てブラドは
「なんだお前? お前も俺様からボールを貰いたい口か? 生憎だがベンチにいくような雑魚に渡すボールなんかねえよ!」
相変わらず暴言を吐きつつドリブルを続けるブラド。そんなブラドに向かって俺は全力で突っ込んだ。
そして、不意をつかれて戸惑うブラドからボールを奪う。
「……は!? 何しやがんだてめえ!」
ブラドが叫ぶも俺は気にせずある選手の元へドリブルで向かう。
俺も最初、起爆すべき爆弾はブラドかと思った。
しかし違う。
俺はその選手にパスを出す。
「受け取れ! クレート!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます