第39話 決意

白い靄の向こうに

その家はあった


私はそこで一幅の絵に会った


靄の隙間から細い美しい光を放つその絵を見て思わず

ため息が漏れた


30分はその場にいただろうか


いつの間にか隣にいた主人が声を掛ける


“いい絵でしょう?”


“ええ、きっと高名な画家がお描きになったのでしょうね”


“いいえ、その方は詩人でした。誰にも認められずに逝きました”


あとで聞いたら、この国では詩と絵の区別がないとのことだった


絵を描くひとが詩を書き、

詩を書くひとが絵を描く


至極真っ当なことだと思った


もしもこの靄から再び外へ出ることが

できたら

幸せな絵を描き、幸せな歌を歌おうと




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る