第22章ーセフィロトの兄弟ー20

 

 二人は小高い丘の木の下で、夕陽が沈む景色を眺めた。ラファエルは隣で座っている弟に、兄と喧嘩した理由を尋ねた。


「――で、喧嘩した理由は?」


「べつに兄貴には関係ねぇだろ。俺とアイツとの問題だ」


「ガブリエル。お前な、そうやって何でも意地を張ってると可愛くないぞ?」


「だ、誰が意地を張ってるだ! 誰が!」


「じゃあ素直に白状したらどうだ?」


「チッ……!」


 呆れた表情で頬杖をついて話すと、彼は隣で渋々しぶしぶ話した。


『なっ、何だって……!? 兄さんを抱きしめるなんてどうかしてるぞお前、死にたいのか!?』


 あまりの衝撃的な話にラファエルは驚いて声を上げた。そして、信じられないような目で見た。


「し、仕方ねーだろ……! だって目の前で酷く魘されてたから可哀想に思ってよ。俺だって別にそうする気はなかったんだ。あれは咄嗟に起きた事でだな、俺はその気は…――!」


 ガブリエルの話にラファエルは隣で自分の頭を抱えると、そこで深いため息をついた。


「はぁ……。ホントどうかしてる。兄さんが剣を持って寝てなくて良かったなぁ。もし持って寝ていたら、お前は間違いなく兄さんに斬り殺されていたぞ?」


 その言葉に体をビクッとさせると、慌てて言い返した。


「だ、だからあれは事故だって言ってるだろ!? 俺だって、好きでウリ兄ぃ何か抱きしめるかよ! どう見ても、殺されるのが目に見えてるだろ! それだったらまだ兄貴の方が数倍はマシだぜ!」


「あーもういい。わかった。それ以上は言うな。頭が痛くなる」


 そう言って呆れた表情で頭を手で押さえると、軽くあしらった。ガブリエルはムッとした表情で立ち上がると、彼の前で袖をめくって自分の腕っ節の強さを見せた。


「――でも、ほら。これを見ろよ。ガキの頃よりも体も大分ガッシリしてきたし、力だってついてきたし。昔のヒョロい体とは違うんだぜ。それに少しは俺も大人に見えるだろ?」


 急にそんなことを話してくると、ラファエルはキョトンとした表情でクスッと笑って相槌あいずちした。


「ああ、そうだな……」


「へへーん。ど~よ、兄貴達よりも俺の方が男前だと思わないか?」


 そう言って無邪気に『えへん!』と威張った。それを聞いて彼は呆れた。

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