第21章―竜と少年―25
その日の夜、ユングはリーゼルバーグの部屋で話をしていた。鏡の前で彼の髪をとかしながら、ユングは今日の出来事を話した。
「――酷いんですよジフカさん。スクワット50回って言ったのに、僕達に100回もやらしたんですから! 足が筋肉痛になっちゃいましたよ!」
ユングはそう言って後ろでブツブツと話した。リーゼルバーグは鏡の前で両腕を組んだ。
「でも、よい運動にはなっただろ?」
「はい。昼間やったスクワットが足にきてます」
「では後で湿布でも貼るが良い。その方が少しは楽になるぞ?」
「はい、そうします……!」
ユングは彼の後ろで柔らかいブラシで髪をとかしながら返事をした。リーゼルバーグは普段は髪を後ろで縛っていたので、髪をおしている時の彼はとても新鮮だった。2人は親子のような、暖かい会話をした。
「――ところでさっきの話しは本当か?」
「はい。リーナさんにキスされた時はホント驚きました。初めてキスされたから、何か恥ずかしいです……」
「そうかそうか。若さは良いな。私もお前くらいの年頃だった頃は初めての接吻に胸が高鳴った。そう言った思い出は、胸に大事にしまっておけ」
「はい……!」
彼にそう言われると少し照れた表情でハニカンだ。リーゼルバーグはそう言いつつも、ある事が頭に過っていた。それは、ダモクレスでの出来事だった。
確かあの時、
リーゼルバーグは不意にその事を思い出すと、さすがにそれは黙ってることにした。金色の長い髪をブラシでとかし終わると、髪を結って最後にリボンを結んだ。青いリボンには古めかしい飾りの白いブローチがついていた。ユングは彼の髪をリボンで結ぶと不意に話した。
「そう言えばリーゼルバーグ隊長。このリボンについてるブローチ素敵ですね?」
「ん? ああ、それか…――。そうだな。これは私の一番のお気に入りなんだ。デザインが、駒びやかに洗練されているだろ。これは昔、大事な人から貰ったのだ」
「"大事な人"――?」
「ああ、でも今は昔の話だ……」
そのことを話すと、それ以上は言わなかった。ユングは、彼の過去について何も知らなかった。不意に話したその一言が胸の奥をもどかしい気持ちにさせた。
「リーゼルバーグ隊長…――」
「さあ、もうこんな時間だ。お前も部屋に帰って休むが好い。髪を結ってくれてありがとう」
「い、いえ……。僕は隊長のお役に立てればそれだけで嬉しいんです…――! そ、それじゃあ、お休みなさい……!」
ユングは彼の前で明るく振る舞うと、少し照れた顔で部屋から出て行った。扉を閉めると不意にある事が脳裏に過った。彼が話した『大事な人』そのことが急に気になると、彼に聞きたい思いを抑えて自分の部屋に戻って行った。
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