第10章―決着の行く末―4

 

 素早く斧を振り上げると、向かってくる赤い刃を全力で弾き返した。


『ウォオオオオオオオオオッツ!!』


 弾かれた赤い刃は、再びブーメランのように戻って、彼に襲いかかってきた。ケイバーはその光景をニヤリと笑いながら可笑しそうに笑った。


「はははっ! どうだ、俺様の幻魔紅蓮地獄の威力は!? 普通の人間だったら一溜まりねぇのがこの技の恐ろしさだ! 今までこの技で、ザコ野郎どもを散々切り刻んで始末してやったけど、この技を弾き返したのがアンタが初めてだ! 一応、褒めてやる! でもなぁ、まだまだ地獄を見るには甘いんだよ! 本当の地獄を見るのはこれからだ!」


 ケイバーは手を翳すと、そこで円月輪の動きを自由自在に変えてみせた。


「俺はなあ、思い通りに力を自由自在にコントロール出来るんだ! 指先一つで命令すれば、どんな方向にも簡単に変えられる! つまりテメェには、一瞬たりとも隙はないってことだ! じゃあもう一度、円月輪を喰らいやがれ!」


 強気な姿勢でそう言い放っと、再び円月輪を彼の方に向けて攻撃を仕掛けた。ハルバートは舌打ちすると、再び斧を振り上げて技を弾き返した。


「てめぇがそっちのを相手にしている間にな、俺はもう片方の手から繰り出した円月輪こいつで囚人のヤツをぶち殺してやるぜ! ハルバート、てめぇはムカつくから後回しだ!」


 ケイバーは左手から円月輪を繰り出すと、わざと囚人の方に向けて襲わせた。


「さあ、どっちを守るか今すぐ決めろ! テメェの身か、それともそこの囚人の命か! 命の炎を燃やすだけに生きてる実感があるだろ! 俺は、その命を刈り取って喰らい尽くしてやる!」


 ハルバートはその一言に瞳を鋭くさせた。


 右手で無数の円月輪を自由自在に操り、ハルバートを襲い続けると、もう片方の手で円月輪を囚人に向けて放った。左手から繰り出された赤い刃は高速で回転しながら囚人に向かって襲いかかった。


「――ったく、性格破綻者の悪党になにを言っても無駄なようだな! そんならこっちも本気ってヤツを見せてやる!」


 そこで斧に秘められた力を瞬時に解放すると、斧は突然、黄金色に光輝いた。


雷神奥義、大地断裂烈風覇斬ッツらいじんおうぎ、だいちだんれつれっぷうはざん!!』


 地面に向かって斧を振り下ろすと、その瞬間にして大地に亀裂が走り、その間から雷の柱が無数に走り抜けた。そして、周りにある障害を全て爆風で弾くと、雷の柱は凄まじい勢いで彼がいる足下を崩壊させて電撃の一撃を喰らわせた。


『ぐあぁああああああああああっ!!』


 雷の威力にケイバーたまらず声をあげた。ハルバートはそこで持っている斧を地面に向かって放り投げると、そのまま彼の方へと素早く走り出した。ケイバーはヨロヨロとした足取りで立ち上がると口から血を流した。


「や、やりやがったなテメェ……! 今のは痺れたぜ! チッ、ますます面白くなってきやがった…――!」


 ケイバーは口から血を流しながらも強気な姿勢をみせた。ハルバートは右手に力を込めると、そこで思いっきり殴りつけにかかった。


『お前を秒殺でマットに沈めてやる! これでも喰らいやがれ! 獣拳秘孔奥義、咆哮波動拳じゅうけんひこうおうぎ ほうこうはどうけん! ウォオオオオオオオオオオオッ!!!!』


 力のこもった雄叫びを上げると、獅子奮迅の如く怒濤の勢いで拳を連弾にして繰り出した。そして、一気に畳み掛けるように最後の一撃で彼の急所を勢い良く突いた。その瞬間、拳を大きく振り上げると、ケイバーはそのまま勢い良く後ろの方へと弾き飛ばされた。そして、雪原の上に仰向けになって倒れ込んだ。


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