(二)-4

 その日の夜は久しぶりに大人数での食事となった。

「酷くないですか」

 有美恵が昼にあったことを、みんなの前で話した。

「なんなんだ、そりゃ。ミヨ、とにかくいっぺん事情聞いてこい。それでもあっちがなんだかんだ言うようなら、じいちゃんが言ってきてやる」

 今年七二歳になる祖父のあきらが言った。

「止めて下さいよ、あなたが出てくるとややこしくなるんだから」

 祖母のいくが言った。

「なんなら、俺もついていってもいいぜ。ガツンと言ってやるよ。ねえちゃんは何にも悪くねえんだからさ」

 弟の海生うみおが言った。

 すると隣で赤ん坊の陸夫を抱きながらスプーンでご飯を食べている有美恵が続けた。

「あんたはいいの。どうせ、行ったって肝心なところでガツンと言えたことないでしょ」

 すると、その弟は「うるせえな」と言って茶碗の飯をかき込んだ。


(続く)

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