第35話 チャラ男と警戒心
ロキ・エルファドーラ。
エルフから派生した種族で、
炎を操るエルフ族、通称エルファ族の一人。
魔王軍の中では、チャラ男、陽キャという設定で、
少し垂れた長耳と、赤い髪が特徴だ。
「なぁ、ロキ」
「なんだい、旦那」
「お前それどこからどうやって買って来たんだ?」
俺の前に広がっていたのは、
某有名ファストフード店、マルドナルドの数々のハンバーガー。
「そりゃ、旦那の財布からちょちょいと取って———」
「あー、もういい。わかった。今後は小遣いを渡す。それで好きなだけ買ってこい」
「マジっすか!あざーっす!」
そういえば、ロキの設定に盗み癖があるってつけたのを思い出した…。
あの時はキャラに個性があって良いなって思ってたのに、
いざ目の前に現れると少しうっとうしい…。
そういえば、まだステータスを見ていなかったな。
どれどれ。
——————
【名前】ロキ・エルファドーラ
【称号】
【レベル】 100/100
【H P】 52000/52000
【M P】100000/100000
【攻撃力】 18000
【防御力】 28000
【スキル】
『炎魔法(帝級)』『
——————
想像はしていたけど、異常だな。
特に魔力量だ。
とうとう魔力量が10万を超えてきた。
確かにロキは魔王軍の中でも上位の魔力量を持っていた。
続いて自分のステータスを開く。
——————
【名前】九条 カイト
【レベル】 30/100
【H P】 1020/1020
【M P】 1400/1400
【攻撃力】 500/500
【防御力】 420/420
【スキル】
『オーヴァーロード(Lv.3)』『剣心』『血液操作』
【召喚可能】
■ザック・エルメローイ(剣聖)
■サラ・ドラキュネル(夜ノ王)
■ロキ・エルファドーラ(永炎帝)
——————
んー、現状のMPで扱えそうなのは、
『弓術』か『超感覚』だな。
『弓術』は、正直今更って感じがする。
俺の今までやってきた剣をベースにした形はなるべく崩したくない。
そうなると、自ずと『超感覚』に絞られる。
『超感覚』とは、
聴覚、嗅覚、視覚、触覚、味覚の五感を最大限まで強化し、
敵の位置を把握したり、危機を事前に感じ取ったりできる能力だ。
正直、ロキの能力だと『
かなりMPの消費が激しい。
今の俺には到底扱えないものだ。
「ロキ、お前からは『超感覚』をコピーしようと思う」
「ん?あぁ、それが一番旦那の戦闘スタイルに合うと思うぞ」
「そうなのか?」
「私もそう思います。主は『剣心』によって体の使い方はできても、目視や感覚で相手の動きを読むことがまだおろそかです。おそらく『超感覚』がそれをカバーしてくれます」
ザックまでが賛成のようだ。
よし、では決まりだ。
◆ ◆ ◆
東京ダンジョン 最上階
玉座に腰をかける一人の悪魔。
漆黒のツノが2本。
白い髪に、黒いマントで身を覆っている。
「………あなたの遊戯は……どこまで続くのか……私がそれを終わらせる………」
暗闇でただ一人、ボソッと呟く。
そして、ゆっくりと不気味な笑みを浮かべる。
彼の名前は、黒鬼、グロム。
東京ダンジョンの支配者にして、
最後の守り手。
◆ ◆ ◆
「なぁ、旦那。ハンバーガーを買ってくれないか?」
「なんでだよ。あげたお小遣いはどうした?」
「………つ、つかいきった……、ちょ、ちょっと待ってくれ旦那」
「そもそも!お前、なんで普通に表に出てきてるんだよ」
「え、サラちゃんだって出てきてるじゃん」
「サラはいいんだよ。お前は、ダメだ」
ロキを召喚してから、三日が経った。
三日前にお小遣いとして10万も渡したというのに、
三日にして全てを使い切ったというのだ。
一体お前はどんな高級バーガーを食ってるんだ!って話だ。
「パパ、きょうはおそとでれてうれしい」
「あぁ、今日は曇りでよかったな」
「きょうはなにするの?」
「今日は午前中に非常食とかを買って、午後は97階に挑戦する予定だ」
「またデーモンさんとたたかえる?」
「うん。でも、この間みたいに暴れちゃダメだよ?」
「……はーい、きをつけるぅ」
俺たちがやってきたのは、
探索者用の装備や非常食を売っている広場。
そこにある一つの店に向かった。
「いらっしゃいませ〜!あ、九条さんじゃないですか」
店にいたのは、
いつもお世話になっている店主のミコトちゃん。
20歳とまだ若いのに、探索者向けのビジネスを初めて、
今ではこの広場で一番の売り上げだそうだ。
「今、世間を騒がしている九条さんが来るとは、光栄ですぅ!」
「…からかうのはやめてくれ…」
別に世間を騒がせているつもりはないが、
先日の才波炎逮捕の一件で、俺は警察に表彰された。
本当は秘密にして欲しかったのだが、
協会側はこれを機に、次の才波炎を生み出さないためにも俺に抑止力となって欲しいそうだ。
「ヒュー、さすがは旦那」
「あら、お連れ様ですか?」
「ん?あぁ、えっと、友達?だ」
「へぇー…?あれ?なんかお連れ様、ロード&マスターのロキに似てません?」
「えっ………!!こ、こ、コスプレだ!そういう奴なんだ!」
「えー、でも……」
「とりあえず、いつものやつと、回復薬を10本くれ」
「あ、はーい。用意するので待っていてください」
はぁ……。
これだから勝手に出てきて欲しくないんだが…。
「おい、ロキ!」
「……」
「……どうした?」
ふと、ロキを見ると険しい顔をしていた。
こいつがこんな表情になるとは…一体何があった?
「旦那、『超感覚』を使ってみろ」
……?
最初はいきなりどうしたのかと思ったが、
ロキはおそらく何かを感じ取っている。
俺は言われるがまま、『超感覚』を使った。
—————————え?
瞬時に理解した。
おそらく殺気などの類だと、ザックやサラも気づいただろう。
だが、この気配は……、
『警戒心』だ。
しかも一人や二人ではない。
この店を囲むように、
警戒心を抱くものが、28人。
そのうち武装した人は、26名。
「ロキ…いつから俺たちはつけられていた?」
「この広場に来た途端にこれだ。おそらく旦那を待ち構えていた」
だが、今のところ俺に危害を加えようとはしていない。
あくまで俺を警戒しながら見張っている感じだ。
「お待たせいたしました!こちらがお品物です」
「———うん。ありがとう。じゃあ探索者カードで」
「かしこまりました。いつもありがとうございます」
どうやらミコトちゃんは関係ないらしい。
28人もいるということは、どこかのギルドか、大きな組織だろうか。
「ロキ、控えてくれ」
「おうっ」
そういって、ロキは紫色の炎と共にその場から消えた。
俺はゆっくりと店を出て、
足を止めた。
「ご同行願えますか?」
俺の後ろに回った一人の男。
黒いスーツを身にまとい、
背中に銃口を押し付けてきた。
「もし、従わなかったら?」
「今、この場には私の仲間が———」
「28人潜んでいる。そのうち武装しているのは26人。位置も把握している。それで俺を捕らえようと?」
「………日本国の内閣官房長官、渡辺官房長官がお呼びです」
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