第89話 小祝聡希視点&弓削澪那視点
ここに入学して、1学期は静かで不自由もなかった。
2学期は席替えで周りの状況が変わった。
元気いっぱい涙脆い
カッコつけが似合う友達想いの
そして、僕にハッキリと指摘する本好きで心優しい
一緒にいるようになって、うるさいようでうるさくない。
居心地が良くなっていた。
喋んなくたって良いし、居なくなっても何も言われないし。
本当に楽で、楽しくて。
こんな想いになるのは初めて。
かけがえのないって、このことを言うのだろう。
それともう一言。
『安心しちゃった♪』
どんだけ心配されていたのか。
これからも、岬ちゃんに逐一報告する。
前に言っていたな。
私は2番ってー…。
ずっと考えていた。でも分からない。
だから、思いきってやってみる。
目を瞑って、頭の中を空っぽにして、自分に問う。
僕の中の“1番”って、なーんだ!
バッと目を開けた。
えっ…
心臓がバクバクしてきた。
今、何時だ?
午後ー…4時30分…。
僕は慌てて教室を出て、走り出した。
※
図書委員の仕事を終えた。
もう1人の当番の先輩が「あとはよろしくね!」と言って居なくなって、1時間は経過した。
誰も来ない。少しゆっくりしよう。
あと30分で終わるから。誰も来ないだろうし。
まだ肌寒いこの季節。春はもう少し先。
ふと、この1年を振り返る。
最初は隣の湊君を見て、学校間違えたって本気で思った。
でも、話してみると真面目で素直な所があった。
2学期に、まさか忠告を受け入れて、制服を正してきたのには驚いた。
元気で明るい涙脆い絢子ちゃんと友達になれたこと、私にとって幸せなこと。
こんな感情のままに生きている人、なかなか会えないからね。
そして、2学期から席替えでやって来た
無口で指摘すると直ぐに直して、一緒にいて話さなくても大丈夫で、いざって時に頼りになって。
横顔なんか綺麗なんだよなぁ。
何言ってんだか、バカだな私。
この3人が居てくれたから、学校は楽しい。
素敵で頼りになる先輩方にも恵まれて感謝しかない。
大ピンチの時も助けてくれて…。
お姫様抱っこを思い出すと、今でも倒れそうになるけどね。
ようやく信頼しても良いって思えるようになった。
初めましての人には、まだまだ警戒心から始まるけど。
前よりは警戒心が解かれるのは早い気がする。
余裕があるからかな。
4月からも変わらず楽しく学校生活を送れそうだ。
ところで、思い出すと、
私も好きな人とあんな風に出来るのかな?
憧れだなぁ…。
好きな人…か…。
居たとしても難しいかも。
こんな、腫れ物に…。
ただでさえ、自分に自信なんてないし。
はぁ…恋愛なんて、程遠いようだ…。
窓の方を見ていると、夕焼けが広がっていて綺麗に見えた。
哀愁を感じつつ、少し早いけど、誰も来ないし、後片付けを始めた。
荷物もまとめた所で鞄を持って、ドアを開けると、廊下から誰かが走っている音が聞こえてきた。
どっかの運動部だろうって思っていたら、だんだん図書室に近付いていることに気付いた。
急ぎの返却かな?
と思い、ドアを開けて待っていると。
「えっ?」
走って来たのはー…聡希君!?
図書室に飛び込んで来た。
ぜえぜえと息切れが。
「だ、大丈夫!?」
心配すると「大丈夫」と返ってきた。
「と、とりあえず、椅子に座ろう?」
彼を椅子に座らせた。
「一体どうしたの?」
聞いてみると、俯いている聡希君だった。
少し呼吸が整った時。
「話が…ある…」
そう彼は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます