第7話 異物

 私は奈月くんが走っていく後ろ姿をしばらく見守り、監視者と対峙した。

 逃げ切れ。そしてどうか、もう二度と私に失わせないでくれ——。


「さて、キミたちにとって私も異物なのか?」


 当たり前のことなのだろうが、返事はなかった。

こいつらは言語機能は備えていないのか。

 腰に隠していた拳銃を構え、敵対する意思をみせつけてやった。


「少しくらいは足止めさせてくれ」


 数発撃ち込むが、全て弾かれてしまった。

 監視者は怯むことなく一歩ずつこちらに近づいてくる。もちろん、私のことなど眼中になさそうだ。


「くそっ!くそっ!くそっ!」


 何発撃とうが全て弾かれてしまう。

使い物にならないなら必要ないか…。

今は、少しでも足止めできればそれで十分だ。

せめて、移行が終わるまで——!

 迫りくる監視者の背後をとり、背負い投げた。

思っていたより軽い。


「ちゃんと食べないと大きくなれないぞ」


 しばらく様子を見て、立ち去ろうとした時だった。停止したとばかり思い込んでいた監視者が立ち上がり、私の首を掴んだ。

 ——苦し…い…っ!

 地面から離れていく足。薄れゆく意識。


「……っ!」


 だが、監視者はとどめを刺すことはなく、手を離して私を落とした。

 奈月くん…逃げてくれ…!

ぼやける視界に映る監視者の後ろ姿は、だんだん遠ざかっていき、最後には私は意識を失った。

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