第4話 代金は先輩のカラダで

「なぁ、ベルさん。ここの宿泊料はどうしたらいいんだ?俺たちは無一文で…」


 異世界に来て2日目が経った。

早くに目が覚めてしまった俺は、ベルさんのもとまで来て話を聞いていた。

 今は心優しいベルさんの宿に泊まらせてもらっているが、流石に代金を支払わないと気が済まなかったのだ。

 ちなみに先輩の寝顔は子どもみたいで可愛かった。


「この国には冒険者という、国や村からの依頼をこなしてお金を稼いでいる人たちがいるのですが、それに登録してみてはいかがですか?」

「ということはベルさんも?」

「いえ、私は運動神経にはあまり自信がないので、こうやって自分で営業をしているんです。街にあるお店を開けている人たちもそうですよ」

「冒険者に登録してもらうにはどうしたらいいのかな」

「ギルドに行って、登録申請するだけですよ」

「ありがとう。…ちなみに、俺たちがここに滞在していた分の宿泊料は…?」

「二万ゴールドになります」

「にっ、二万!?たしかに高級そうな宿だし二人で二泊したらそのくらいになるか…。よし、ベルさん。代金は先輩に全力で払わせます!許してください!」


 会社で学んだ必殺技とも言える土下座をそこで披露した。先輩……ごめんなさい!


「全力で払いますじゃないでしょ。京介くんは朝っぱらから何言ってるのよ。ねぇ?」

「あっ、先ぱ……!」


 俺がその言葉を言い終える前に先輩は俺の頭を踏みつけてゆっくりと口を開けた。


「私のことは優香って呼びなさいって言ったでしょ?それに、宿泊料を私に全部払わせようとするなんていい度胸じゃない」

「冗談ですよ…。あは、あははは……」

「罰として全額あなたが払いなさい」

「そんなぁ…」


こうして俺たちは冒険者になることになった。

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