第63話
どうやら兄は昨日の話を父に話したようで、父も兄も機嫌が良い。馬車が王宮に着くと、数名の騎士から熱い視線を送られている気がするわ。
「アイラ様の勇姿をもう一度拝みたいです」
と声をかけられる。勇姿?と思っていたら、兄が和かに
「昨日のアイラの鞭捌きに惚れた騎士達だよ」
と耳元で言ってたが、微妙だなぁ。鞭捌きってめっちゃ女王様のイメージ。そんなつもりで鞭を出した訳じゃないのよ。とほほ。
私はすぐさま研究室に篭る。
今日は朝一から研究室でソースを作るのよ。大量の玉ねぎを炒めてトマトや野菜とフルーツを煮込んで更にスパイスを加えてひたすら煮込む。これでソースは出来た!消毒した瓶に入れて保存する。
今回はここからバターと小麦粉、ソース、ワイン、コンソメ、砂糖これで材料は良かったような記憶。デミグラスソースを更に作った。ちゃんとレシピも控えてる。
あとはドラゴンの角切り肉や人参玉ねぎ、きのこを焼いてコトコト煮込む。兄と父、アーサーに魔法でドラゴンシチューが出来たから食べにくるように伝えてみた。
小さな寸胴と王宮の食堂から頂いたパンを持って1階のテーブルで待ってると楽しみにしていたのかアーサー、リチャード、グレイ、父、兄、何故か陛下がすぐさまきた。
どうやら父は陛下と会っていた所に私からのメッセージがきたようだ。断っても断っても食べると言い張ったみたい。晩ご飯前なのにね。
小さな寸胴はびっくりするほどすぐ空になった。めちゃウマだったようだ。アーサーからは今度2人で森にデートしに行こうと誘われた。ドラゴンのおかわりが欲しいのですね。
明日はドラゴンカツを作る予定。魔法騎士団の方達に試食として振る舞う話をしたら全員から大反対された。骨肉の争いが起こると。仕方がない。1人で消化するか。
次の日からはドラゴンカツ、ドラゴンメンチカツ、ドラゴンステーキ、ドラゴンのローストビーフ等毎日肉レシピを作る事となってしまったのだが、アーサーやグレイ、リチャード、兄は毎日食べにきました。
みんなの胃袋はがっちり掴んでる気がするわ。たまには野菜も食べて欲しいのだけれどね。
「そういえばアイラ、騎士団の中でアイラのファンクラブが出来ているのを知っているかい?」
「お兄様、それはどういう事ですか。全く知らないですが」
「どうやら、この間の討伐時にドラゴンを倒す姿に感銘を受けたらしいよ。騎士達の中では女王様として君臨しているんじゃないのかな」
ニコニコして失礼な話だわ。
「俺もアイラの鞭捌きに惚れ直したんだ。あの鞭捌きは痺れる物があったよ。あれを出来るのはアイラしか居ないね」
アーサーまで。何、SMの女王様的な立ち位置なのか私。
「それと、隷属反射と結界は本当に助かったよ。やっぱりアイラは最高の奥さんだよね」
「そういえば、あれからあの魔術師はどうなったのですか」
「アーサーの奴隷となった魔術師の名前はジャックと言う名の平民で優秀な魔術師として頑張っていたらしい。どうやらマージン子爵に家族を人質に取られて犯行を行なったようだ。
マージン子爵は、アーサーに娘を嫁がせ、婿となったアーサーを操り、自分も権力者となりたかったようだよ。娘もアーサーの事が気に入っていたしね。娘の方も可笑しかったんだよ?
アーサーの部屋に入ったら全裸でベッドからアーサーに抱きついてきてびっくりしたよね。娘の王都への出入り禁止になったことで子爵はアーサーを恨んで犯行に及んだらしい。馬鹿な奴だよね」
兄の言葉にみんなが凍り付く。
「あら、私、そんな話聞いていなかったですわ。アーサー、本当ですの。裸の方がねぇ」
「アイラ、これは、ほら、僕は被害者だしさ…」
「それにさっきから私の事を小馬鹿にして、嫌いですわ。なんですか女王様って。酷いわ。頑張って敵と戦ったのに笑われるなんて。当分顔も見たくありません」
私の感情とともに部屋がビキビキと凍り付いていく。
「不快な話ばかりで気分が優れませんの。今日はもう帰ります。殿方はどうぞこの後も、仲良くなさって下さいな」
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