#43 バッドエンドの後


 ユキさんの言葉を聞いて、思わずユキさんの顔を凝視してしまった。

 初めて喫茶店で会ったときのにこやかさは全然無くて、真剣な表情だった。


 セツナさんもユキさんの言葉を聞いて、顔を上げてユキさんの顔を見ていた。


「そうね・・・謝ることばかり考えてて私まだ解ってなかった。 ユキちゃんと会ってから何をするべきだったのか、今解ったわ」 


 ユキさんの言葉を聞いてセツナさんの雰囲気が一変した。



 ユキさん、凄い人だ。

 この状況で、セツナさんの目を覚まさせた。


 きっとユキさんは、物事の本質を見抜く力がずば抜けてある人なんだ。

 多分セージくんよりもだ。



 セツナさんはユキさんに言われた通り背筋を伸ばして、以前わたしに話した一連の出来事を最初から話した。


 途中辛そうに言葉を詰まらせることはあったけど、涙を流すことなく退学になったところまで全て話した。



「4年越しにようやく色々謎が解けたよ。 全部話してくれてありがと。 色々思うことはあるけどとりあえずそれは置いといて、今度は私が話すよ。 セツナちゃんが退学してから、残された生徒会やムギくんがどうなったのか。 セツナちゃんはそれを知る義務があると私は思うの」


「う、うん。聞くわ。 話してほしい」



「えっと、事件があった翌日、ムギくんとハナちゃんは自主的に生徒会の退会を申し出たわ。二人とも生徒会室にもう2度と入りたくないって言ってた。 それで私を含めた3人集められて顧問の先生と教頭先生から事件の処分内容と生徒会の解散とかの説明があって、私は生徒会に残ることを打診されたけど断った。 色々とショックだったのもあるし、セツナちゃん居ない生徒会で別の新しい人たちとやる気も起きなかったからね」


「学校の方は、セツナちゃんたちの退学処分と処分理由が公表されてたわ。 学内で不適切な行為があったってことになってた。 それで、事件を受けて学校中の部室とか個室とかの一斉調査が行われて、生徒会室は使用禁止になった。 まぁ私たちは辞めちゃってたから使用禁止でも影響無かったけどね」


「生徒の間では、セツナちゃんたちの退学事件が色々噂になったけど、事実とは違う話ばかりで誰にも本当のことは知られてなかったわね。私もムギくんもハナちゃんも箝口令で一切口にすることは無かったし」


「それでもよく3人で放課後喫茶店とかに集まって、お喋りしてた。 3人ともずっと事件のこと引きずってて、でも他の人には話せないから、同じ境遇の3人が愚痴りあって気を紛らわせるような感じだった」


「ムギくんは、ずっと辛そうだった。 冗談とか言ったりするんだけど、そういうの全部が痛々しいの。 多分ムギくん怒りたいし泣きたいのに、それをぶつける相手が居なくて、全部自分一人で我慢してたんだと思う。 ハナちゃんも私と同じことを感じてたみたいで、あの子はずっとムギくんの傍に居てくれてたわ」


「それで私は3年になると、受験勉強で忙しくなって、二人もそんな私に気を使ってくれて3人で集まることは無くなって、あっという間に受験を迎えて私は無事に大学に進学。 ムギくんとハナちゃんも1年後に無事に大学に進学して、今は県外の大学に通ってるみたい」


「二人が卒業した後にハナちゃんから連絡貰って色々教えてくれたんだけど、二人とも同じ大学に入学して同じアパートに住んでるって言ってたわ。 別の部屋で同棲じゃないとは言ってたし、付き合ってるわけじゃないとも言ってたわね。 それが最後に連絡取り合ってないから今はどうしてるかは分からないけど、二人一緒に居るのなら多分大丈夫じゃないかなって思う」


「あと、安井くんだけど、事件の後しばらくしてからハナちゃんが色々調べて教えてくれたんだけど、事件の直後に親御さんから勘当同然でどこかの旅館だか料亭だかに住み込みの修行にだされたらしいわ。 今どうしてるかまでは分からないわね」


「これで全部かな。 これがセツナちゃんがやらかしたことの影響だよ」


 ユキさんは最後にそう言うと、冷めてしまったお茶を口にした。  

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