幼馴染という呪縛からの解放  ~僕のが先に好きだったのに! 知らんがな~

バネ屋

第一部 初恋、決別、そして・・・

#01 噂の二人




 2年になって直ぐの新学期。

 今、ウチのクラスに興味深い二人の男女が居る。



 男の名前は、飯塚マサト

 所謂、陰キャぼっち。 新学期でクラスメイトたちがグループの形成に躍起になっている時期でも、一人隅っこで動くことなく寝ていた男だ。俺はコイツと喋ったことは無く、だからいまいち何考えているのか良く分からない。


 女の名前は、鈴宮キヨカ

 とびぬけた美少女という訳では無いけど、そこそこ可愛いと思う。

 そして何よりも、おっぱいが大きくて制服の上からでも自己主張が凄い。

 前に出るタイプでは無いけど、周りの女子といつもニコニコお喋りしているイメージが強い。


 この二人の何が興味深いかっていうと、二人は幼馴染らしく、付き合っているという噂をよく聞く。


 でも、俺が見る限りは、付き合っているというよりも、飯塚マサトの方が一方的に彼氏ヅラしてるように見える。

 逆に鈴宮キヨカの方は、仕方なく相手しているように見えている。





 実際に俺の周りの友達に聞くと


『なぁ、飯塚と鈴宮って本当に付き合ってると思うか?』


「え?だれ?イイヅカ?ああ、鈴宮の彼氏か。付き合ってるんじゃねーの? 仲良さそうじゃん」


『そう見えるんだ・・・』


「え?違うの? だってあの陰キャくん、鈴宮にだけはよく喋ってるじゃん。鈴宮も普通に相手にしてるし」


『まぁ、そうなんだけどな』


 そもそも、俺の周りの連中は、この二人にあまり興味が無い様だ。


 まぁ、俺も(なんか、変なの)って思った程度で、最初はそれ以上の興味があった訳でもなかった。



 ただ、同じクラスだから、二人のやり取りが自然と視界に入って来る。



「おいキヨカ、帰るぞ」


「あーもう! ごめんね!サっちゃん、クミちゃん、私帰るね」


「あらあら、お熱いことで♪」


「もう!そんなんじゃないから!」


「まぁまぁ、彼氏を待たせたら悪いよ?」


「もう!本当に違うから!」


「おいキヨカ!まだか!」



 う~ん、なんだろ

 少なくとも飯塚って、性格悪そうだな

 普段大人しいクセに、鈴宮キヨカの前でだけ俺様系?

 アレがもし本当に彼氏なら、苦労しそうだ。


 鈴宮の方はどちらかというと、お人好しでほっておけないのか?

 っていうか、幼馴染って、メンドくさそーだな。

 少しだけ鈴宮に同情しちゃう。






 それからも教室では、何と無しに二人の様子に注目していた。



 飯塚は、相変わらず一人ぼっちだ。

 鈴宮以外とは誰とも絡まないし、休憩時間も一人でずっと席に座ったまま。

 お昼時間は、教室に居ないし、誰かと一緒に食事している姿は見たことが無い。


 対して鈴宮は、いつも同性の友達と一緒にいるみたいだ。

 仲良し3人組? そんな感じでお昼とかも3人で一緒に食べているのを毎日見る。


 そんな二人を観察していて気付いたのは、飯塚は鈴宮の事をよく見ている。チラチラと。

 逆に鈴宮は、飯塚のことを全く気にしていない。

 二人が会話するのも、飯塚から話しかけてばかり。 鈴宮から話しかけることはゼロでは無いけど極端に少ない。



 ここまで見ていて俺が思うに


 二人は恋人では無い。

 飯塚が一方的に鈴宮を好き

 鈴宮は飯塚を嫌ってはいないけど、恋愛対象ではない?

 幼馴染だから邪険に出来ないとか、お人好しで甘くて許しちゃってるとか


 深読みすると

 飯塚は鈴宮のコト、好きなくせに告白出来ていない?

 もしくは、相思相愛だって勘違いしてて、告白する必要が無いと思ってる?


 対して、鈴宮は、飯塚の好意に気が付いていない?

 もしくは、気づいているけどスルーしている?



 そんな風に考えながら、改めて二人の様子を見るのが結構面白い。


 心の中で


『うわ飯塚、必死に彼氏アピールしてるのに、鈴宮、目も合わせてねー。飯塚って結構メンタル強いのな』とか


『鈴宮、そこでそのスルーは残酷でしょ! メンタル強い飯塚でも、さすがにダメージ受けてるよ!』とか


 そんな実況解説しながら観察している。



 と、どうでもいい日々を送って居たんだけど、LHRで各自の委員会を決めた時、俺と鈴宮は同じ図書委員になった。


 因みに、飯塚は美化委員。

 飯塚はマジでどうでも良い。










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