第229話
「それは、我らがこの京に軍を置けるかどうかというお話でしたら可能だと思いまする。しかし、長続きはしないと思われます。どうしても我々の本拠地は関東になってしまいまするので手が遠くなりまする。また、我々が畿内を完全掌握するには東海道から続く、今川 織田 斎藤 六角 浅井 畠山の土地を手に入れる必要がございますれば中々…」
「そうであるか。」
帝も分かっていたのであろうがやはり残念そうにしている。織田が台頭してくるであろうが今はまだなんとも言えない。ここで俺が織田を後押しするようなことを言えば変な影響を与えてしまう可能性もある上に、信長の邪魔をしてしまう可能性も高いからだ。
「ですが、時はあります。直ぐにとは言えませぬが必ずや私は京まで、いえ、日の本全体を幸せにすることをお誓いいたしまする。この命に変えてもにございまする。」
頭を深々と下げ、帝に誓ってみせた。俺は戦乱や災害が続く中ただひたすらに民のことを考え続けるこの方の為にも頑張りたいと思えるのだ。
「其方の忠義に感謝しよう。では、本題であるが近衛よ。」
「はっ、北条伊豆守氏政よ。其方に安房守 武蔵守 下総守 下野守を授ける。関東の民を助け幸せにしようとしているその姿勢はいたく評価された。その姿勢を続ける為にもこの官位を使い、より民を救ってほしい。」
氏政は直ぐさま頭を下げ直し、ははっと任命に答えた。これは氏政自体に複数の官位を与えられた上で好きに使えということだ。誰か配下のものに与えてもいい。加えるなら今までの功績を讃えている時点で官位を金で買ったわけではないという事が対外的に示された訳だ。
「また、従5位下に任じていたものの、正式に武蔵守に任じたことで官位相当より更に昇格し、従5位上とする。これに合わせて相模守の成果も評価し同様に従5位上とする。」
「は、ははっ!あり難き幸せにございまする!」
戦国大名としては最高位である大国守の従5位上を自分のような若年の身に与えることの意味の重さを氏政はしっかりと理解していた。よくある戦国ものでは近衛少将や右衛門督はよっぽどの家柄でないと貰えないものだ。また、父親にも配慮して同様の位階としているが俺は大国守として任じている為調停が重要視しているのは氏政の方だと言うことを対外に示した訳だ。
「今の世は官位よりも武力が幅を利かせている、これが少しでも其方の助けになるといいのだが。」
「関東の方ではまだまだ帝の威光は権威を持ち続けています。必ずや我々の施策を蝦夷の地まで広めて見せまする。」
「蝦夷?其方は蝦夷に行った事があるのか?」
「いえ、私自身は行ったことはございませぬが我が関東の民の中でも自分の土地が欲しいもの、力を試したいものを集め我が兵士を護衛としてつけて新天地で現地の民と友好と調和を保ちながら開拓しています。報告が遅れ申し訳ありませぬ。」
なんと…!と近衛前久も帝と共に驚いていた。北海道の事はいまだに表にしていなかった為しょうがないとも言える。最近になってようやく村のようなものができてきたばかりで表に出すには早すぎると判断したのだ。
「そうか、そなたはまずは蝦夷地や奥羽を手中に収める気なのじゃな?」
近衛前久が我が意を得たりと頷きながらこちらを見る。
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