第7話
(く、くそぅ…!)
負けられない。本物が、偽物なんかに負けるわけにはいかないんだ!!!
なにより、渡来さんは僕のものだ!ほかの誰にも渡さない!渡してなるものか!!!
今こそ勇気を振り絞れ!僕は、僕はカイザーなんだ!!!
「違う!僕が、僕こそが真のラブカイザーだあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
そうだ、僕こそが真のラブカイザー…真・ラブカイザーだ!
偽物なんかに、負けはしない!!!
「上等じゃねぇか!」「渡来の彼氏は俺だぁ!」「やってやるぜぇぇぇ!」「ラ、ラブカイザーは俺なんだー!」
ハッ!勝てると思ってるのか、偽物ごときが…本物に勝てると思うなよ!!!」
「えっ、と…」「なにこれ、カオス…」「男子って、馬鹿じゃないの…」「引くわー…」「理解不能理解不能理解不能…」「先生、私…」「す、鈴木…」
………ちなみにここまでの流れで、女子は完全に冷めていた。
混乱が極まって、逆に冷静になったようだ。
男子のノリは、どうやら女の子には理解されないものらしい。
ま、まぁそれはそれ、これはこれだ!男には男の世界があるんだ!!!
負けられない戦いが、ここにはある!!!
「勝つのは僕だ!渡来さんを愛するカイザー…アイに堕ちた高貴なる皇帝!ラブカイザーこと、海冴光輝だあああああああああああああああ!!!!!!」
脳内アドレナリン全開!ハイ・ヴォルテージ突入!
過去最高にハイってやつだ!もう今の僕に敵はいない!
かかってこいよ、
「―――――言えたじゃねぇか、海冴」
その声が耳に届いたのは、テンションMAXになった時のことだった。
「ふぃー、笑った笑った!こんなに笑ったのは、生まれて初めてだぜ。ありがとよ、海冴。お前は最高の親友だ」
「ご、後藤くん…?」
さっきまで狂ったみたいにアホほど笑っていた後藤くんが、目尻に浮かんだ涙を拭いながら立ち上がっていたのだ。
「あん?なんだ後藤。お前もラブカイザーなのかよ?」
「俺がラブカイザー?ハッ、馬鹿言うなよ。俺なんかがラブカイザーを名乗れるはずないだろ。力不足にも程があるぜ。もちろんお前らもな」
「はぁ?どういうことだよ!?」
その挑発じみた発言に、偽ラブカイザー軍団は食ってかかるが、後藤くんは余裕な態度を崩さない。
「中二力が足りねぇんだよ。さっきの海冴の叫びを聞いてなかったのか?」
『海冴の叫び…?あ…』
「そうだ…くっwア、アイに堕ちたwwwこ、高貴なるwwwくはっwwwこ、皇帝wwwwwwくひひひひwwwwwwww」
訂正。
余裕どころかまた爆笑し始めやがった。
なにしにきたんだお前。もう帰れよ。
ザワザワザワザワ
ていうか、あれ…?なんか周りの様子が…
「そういえば海冴のやつだけ、なんか言ってることがやたら濃かったな…」「渡来さんを愛するカイザーとか言ってたぞ」「普通リアルでナチュラルにあんなセリフ出てくるもんか?」「なんか中二病臭かったよな。ラブカイザーみたいに」「ラブカイザーこと海冴光輝…?ラブ…アイ…かいざ…」「カイザー…海冴…かいざ…あー……」
ザワザワザワザワ
や、やだなぁ皆。どうしたんだい急に?
なんで僕のことを、そんな目で見てるのかなぁ?
まるで真犯人を見つけた探偵みたいな眼差しじゃないか。
僕はどこにでもいる、影の薄い陰キャなんだから、こんな注目されると困っちゃうよアハハハハ。
「海冴くん、もしかして貴方が…?」
渡来さんも、なんでそんな期待した目で僕を見るのかな?
まるで運命の人を見つけたみたいにキラキラしてるんですが。
周りにもラブカイザーはたくさんいるのに、なんで完全に僕だけをロックオンしてるのかなぁ?
「い、いや、僕は…」
「し、証拠だ!」
とりあえず否定しておこうとした僕の耳に、つんざくような叫びが届く。
「あれじゃあまだ、海冴がラブカイザー並に痛い中二病患者ってことしかわかってない!決定的な証拠にはなってないはずだ!」
おいコラ山田。ぶっ殺すぞテメェ。
人のセンスをディスりやがった山田に思わず躍りかかろうとしたが、背後から肩に手を置かれ止められる。
「落ち着けって海冴。もう勝負はついてんだ…でもま、納得いかないならしゃーないな。じゃあ見せてやるよ。海冴がラブカイザーである、決定的な証拠…俺の持つ、
『な…!?』
コ、コイツ…僕より上手いルビの使い方を!
それも運命でだと!?ふざけんなよ!!??
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