第34話 コラボ3.5

【千鶴視点】

 ”たまも”ちゃんとのコラボ配信が始まって数十分。私は微妙な違和感を感じていた。

 いつも観ている”なな”と”たまも”の配信はそこまでベラベラと話すわけではなく阿吽の呼吸というかお互い分かってる感みたいなものがあるように感じていた。だけど今回は”なな”の中身が違うので当然なのだが微妙にズレている気がする。

 「”なな”は次何食べるのじゃ?」

 「じゃあ野菜もらおうかなぁ」

 「ほい来た」

 甲斐甲斐しく鍋のお世話をしてくれているが会話はまるで弾んでいない。

 少なくとも私はまったく楽しめていなかった。

 それにさっきから距離感が近い。マイク位置の関係で仕方がないのだがそれを抜きにしても近い気がする。そんなに引っ付かなくても声は拾えるはずだ。

 「”たまも”ちゃんちょ~っと距離近くない?」

 「そんなことないじゃろ、リスナーが勘違いしてしまうじゃろ」

 Vtuberなので実際の距離感や空気感は配信を見ているリスナーには伝わらない。それをいいことに”たまも”はやりたい放題だ。

 「しかし、”なな”は何かいい匂いがするの~」 

 「嗅がないでくれる⁉」

 「よいではないか、よいではないか~」

 ちょっと変態っぽい。

 助けて兄貴~


                  〇〇〇


 配信をチェックしながらDiscordで康介と〈にゃん太〉先生とでチャットをしていた。

 『千鶴ちゃんいい感じだね』

 『いいと思います』

 『だな、今のところ順調だ』

 二人の反応も上々だ。一応配信時間は1時間程度を予定しているのでこのまま崩れずいてくれるのを願うばかりだ。

 『でもなんだかちょっとだけ”なな”さんにメスを感じるんですけど気のせいですかね』

 『確かにちょいちょいそんな気配を感じるね』

 『そうか?』

 『微妙な感じなんだけどね』

 『これはこれで新鮮でいいと思います』

 二人には分かるらしいが俺にはまったく分からなかった。どうしても”なな”=自分のイメージが刷り込まれているので客観視しきれていない。

 『まぁこの感じだったら大丈夫だろうね』

 『そうですね』

 二人の太鼓判も貰えたことだし心配ないだろう。隣の部屋から聞こえる声は楽しそうに聞こえる。

 作戦が上手くハマったことに安堵する。

 これで身バレの危険は回避出来ただろう。

 頑張れ千鶴! 

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