第18話 お正月
コミケ会場から家へと帰り、人込みで疲れてしまったのでゆっくりしたいところだがそうはいかない。
明日は1月1日、お正月だ。Vtuberに限らず配信者にとっては稼ぎ時だ。ほとんどの配信者はカウントダウンをしたりリスナーと共に新年を迎える。
俺こと〈子月 なな〉も例に漏れずカウントダウン配信を予定している。基本的には晩酌配信的な感じでやっていこうと思うのだが今年の配信の同時視聴をしたりも予定している。大体のトークはアドリブで脊髄トークをしていくのだが大枠の流れは作っておかないとさすがに話が詰まってしまい、見るに堪えないモノになってしまう危険がある。
そのため帰宅してすぐにトークデッキの整理や台本を作り始めた。
「今日コミケに行った話とかもするかな」
ここ最近の出来事を軽くまとめ、今日の配信の準備を進める。
するとPCのDiscordにチャットが届いた。
〈九重 たまも〉
「今年もありがとうございましたなのじゃ」
年末のあいさつが送られてきた。
「こちらこそ、ありがとうございました」
「ちょっとお願いなんじゃがいいかの?」
「?」
「新年のカウントダウン一緒に出来んかの?」
「あー」
「妾全然企画出来てなかったから乗っからせてもらえんかの?」
「おーいwww何してんの」
配信者としてそれはどうよ、と思ってしまう。でもまぁ配信者でもたまにはそんなこともあってもいいかもしれないなと考えOKすることにした。
さすがに年越しはどうよと思わないでもないが。
「マジで何も考えてなかった」
「了解、んじゃ今日の配信予定貼っとくね」
「ホント! ありがとうございます!!!!!!!!」
ついキャラ崩壊するほどありがたがられてしまった。
「そんじゃ今晩22時配信開始だからよろ」
「分かりました。ホントありがとうございます」
そう締めくくられてDiscordがオフラインになる。
「ちょっと予定変更しないとな」
ゲストが来ることは配信にメリハリがつくし、賑やかになってくれるのでありがたいが進行の方で少し修正が必要そうだ。
サムネを新しい物を作りながら速攻で作業を進めていく。
さて、忙しい年越しの始まりだ。
〇〇〇
『こんなな~! みんなは年末楽しんでる~!』
12月31日の午後22時。予定通り年末カウントダウン配信がスタートした。
『今日はみんなにサプライズで~ゲストが来てくれています!』
[コメント]
:ざわ
:ざわ
:誰だ?
:ざわ
:
:
:
コメントがざわめきだす。
まったく匂わせも何もしてきていなかったのでリスナーも不意打ちを食らった感じだ。
『ホント直前に決まったからね~全然告知とかも出来てなかったんだけど、年末だからいいよね!』
コメントもおおむね肯定的なコメントが多く見られ受け入れている感じだ。
『それじゃあまずは今年の取れ高大賞を観て行こうと思います! 切り抜きとか作ってくれたリスナーさんありがとうございます!』
OBSを操作して予定していた画像を表示して画面調整をする。
準備が出来たところで
『んじゃまずは一本目! これです!』
ほぼ1年前、1月に配信した雑談晩酌での一コマの切り抜きを同時視聴する。
リスナーの反応も上々だ。まずは1時間程こんな感じの配信を行っていく予定だ。
〇〇〇
23時を少し過ぎた頃合い。
振り返り同時視聴を終えてすぐのこと。
『それじゃあ、冒頭で言ってたゲストの方に来てもらいましょう! お願いします!』
トゥルン
とDiscordに入る音とともに〈九重 たまも〉があいさつをした。
『どうも~! 〈九重 たまも〉なのじゃ! 今年もあと少し、よろしくお願いしますなのじゃ!』
[コメント]
:たまも来た!ー
:またかよ
:今月2度目
:何回でもありがたい
:知ってた
:ありがてぇてぇ
:
:
:
『はーい、ということで年末のゲストは〈九重 たまも〉ちゃんでした~』
『どうもなのじゃ~』
コメントも盛り上がり全然読めなくなってしまった。
”たまも”が入ってきてすぐにTwitterにも情報を流していたのでそこから導線となって視聴者がさらに増えてきた。
『まずは謝罪させて欲しいのじゃ~ 今年最後の大ポンをかましてしまい”なな”に助けてもらった話しなんじゃが……』
”たまも”が今回のことの顛末を話し始めたところで謝罪会見用の背景を表示させる。
リスナーからはドンマイなどのコメントが多く流れている。
『……ということでした。えー、誠に申し訳ありませんでした』
『はーい。よく謝れましたwww』
『「www」じゃないのじゃ! マジ焦ったからの!』
『アレ? そんな口きいてもいいのかな?』
『はい、すいませんでした』
『はーい。今年中は”たまも”ちゃん敬語縛りでお願いしまーす!』
そんなこんなで今年最後のコラボ配信が始まった。
今年の感想などを話しながら雑談をしているとあっという間に23時55分。今年も残すところ後5分になっていた。
『後5分だよ~今年も早かったね』
『じゃの~』
『あれ? 敬語は?』
『はい。www』
『wwwあと5分だよ~』
『”なな”ちゃんはボイトレとか行ってるんですか?』
『突然どした? 行ってません、独学だよ』
ふむふむと少し悩むそぶりをしながら
『じゃあ、妾が行ってるところ紹介しましょうか?』
『あ、それありがたいかも。プロのところで教えて貰いたい!』
そんな他愛のない話をしていると今年もあと30秒程だ。
『あっ! あと30秒だよ! 秒読みする?』
『早くないかの?』
『こんなもんじゃない?』
『はいっ 20……10.9.8.7.6.5.4.3.2.1.あけましておめでと~う!』
『おめでとうなのじゃ~!』
こうして波乱の新年が幕を開けた。
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