第10話 コラボ2
次の日の朝。
Vtuberを始めてからというもの夜型の生活が続き段々と昼夜が逆転し始めてきた。今日の起床は午前11時。午前とはいってもほぼ昼だ。
「あー、マジねみぃ」
さらに、寝ても寝てもまだ眠たい。睡眠の質が良くないのだろう。仕事をやめてからというもの外出も極端に減り、運動もやっていない。睡眠の質が悪くなるのは必然だ。
そうこうしているとスマホに一件の通知が届いていた。〈九重たまも〉からだ。
『お昼にお話しできんじゃろか?』とのこと。コラボの件だろう。時間どころか配信内容すら決まっていないので早めに決定したいとのことだ。
『了解』返信を送信し終えて、少し声出しをする。お話がしたいとのことなので通話での打ち合わせがしたいのだろう。そうなると ”なな” の声を作っておかなければならない。
さすがに寝起きですぐには萌え声は出せない。
10分程声出しを終えてPCを起動する。ローランドVT-4(ボイチェン用ハード)を起動し声を乗せてみる。
「あ~、あ~~~~」
声が出来上がった。
すると見計らったかの如くDiscordにチャットが届いた。
〈九重たまも〉
『これから通話いいかの?』
タイミングばっちりである。
『いいよ~』
返信をしてボイスチャンネルにイン。程なくして ”たまも” もインしてきた。
『お疲れなのじゃ~』
『おつ~』
かなり久しぶりに声を聞いた気がする。
のじゃのじゃ、と普段から話す練習をしていることもあり以前よりも自然に聞こえた。コンビニとかで間違って出てしまわないのだろうか?「袋欲しいのじゃ!」みたいな感じで。
『今回はコラボ誘ってくれてありがとう~』
『こちらこそありがとなのじゃ~』
『全然! 嬉しかった、嬉しかった! てか、めっちゃ久しぶりじゃない?』
『半年ぶりくらいかの? ひさしぶりじゃな』
最後のコラボが半年前。バトロワを二人でプレイして以来となる。 ”たまも” はFPSガチ勢なのでかなり上手い。正直俺とはレベルが違うのでコラボ時には完全にお荷物になってしまう。
『今回もバトロワ一緒にやる感じ?』
『いや、前回やったから今回は他のゲームをやろうと思うんじゃけど』
『へー! 何やるの?』
『今回は[アソビ対戦]やろうかと思うとる』
『おー! いいね。最近やってなかったから丁度いいわ』
いつも同じような配信だと飽きられてしまうから、こういったコラボの際などには普段やらないゲームをするようにしている。
”たまも” も同じ考えだったようだ。
『妾もなんじゃよ。 じゃから丁度いいかと思うての』
『じゃあ、決定ね~』
その後いくつか細かい打ち合わせをしてお開きとなった。
〇〇〇
その日の晩の配信の最後でコラボの告知を行った。
『今度の土曜に~、コラボ予定してるんでみんな見に来てくれると嬉しいな!』
:コラボきたー
:誰だ?
:コラボ久しぶりだな
:きたーーーーーー
:
:
久しぶりのコラボ情報解禁でコメントが盛り上がり始める。
『誰だと思う? マジ久しぶりなんだけど』
:だれ?
:何のゲームするの?
:たまもじゃね?
:
:
:
『正解の人いるねー、正解は~〈九重たまも〉ちゃんでした~!』
『何のゲームやるかはまだ内緒~』
:おおー!!!!
:きたーーーーーー
:神回確定
:マジ楽しみ!
:
:
:
コメントが最高潮に盛り上がってきた。
『ねー、私もマジで楽しみだよ~』
『打ち合わせで久しぶりに喋ったら、ずっと「のじゃのじゃ」言ってて笑っちゃった~』
:のじゃのじゃ
:笑ってやるなwww
:打ち合わせてぇてぇ
:のじゃのじゃ助かる
:
:
:
『それじゃあ、コラボもみんなよろしくね~! エンディング!』
配信を終えてPCをシャットダウン。
終了ツイートをしてリスナーの反応をチェックする。
「みんな楽しみにしてくれてるみたいだな」
好意的なツイートが多く見られたことで少し安心する。”たまも”と互いのリスナー同士で喧嘩みたいな感じになるのだけは避けなければならない。
この辺は”たまも”の配信とタイミングをそれえての告知となったのでハトみたいな感じにはなっていなかったはずだ。
配信をするようになって想像以上に配信外の打ち合わせが大事だということを実感した。 炎上しないように細心の注意を払う必要があるのだ。
いくつかのツイートを確認してツイッターを閉じた。
〇〇〇
配信後に行う康介と千鶴の三人での通話でのこと。
『コラボは結構リスナーに好意的に受けっとってもらえた見たいで良かったね』
『マジで楽しみなんだけど! 何やるの?』
『まーたリスナーになってんぞ~、今回は「アソビ対戦」することになったわ』
『二人のコラボだと鉄板だね』
『キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!』
”たまも”との打ち合わせ内容を二人に共有していく。
『チャンネルはどっちでする感じ?』
『今回は”なな”の方でやることになった』
『了解。時間は?』
『21時からにする予定』
『OK。何か準備することはある?』
『大丈夫かな、サンキュー』
『兄貴、兄貴! ”たまも”ちゃんとはあったりするの?』
『いや? 会わんが』
コイツもしやまた良からぬことを考えてるんじゃないだろうな。
『えー、そうなんだ。”たまも”ちゃんて可愛いの?』
『なんでそんなこと聞くんだよ?』
『だって普通に気になるじゃん。声から察するに若そうだけど』
『夢のないことを言うんじゃない! ”たまも”は1000年を生きる九尾の美少女なんだから』
『そうだよ、千鶴ちゃん。知らないほうが良いことは世の中いっぱいあるんだから。例えば推しがお兄ちゃんだったりね』
『確かに知らないほうが幸せだったかも……』
『そういうことを言うんじゃない!』
その後今日の配信の反省と今後の予定の共有をして通話を終えた。
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