追悼24 成りすまし?の茶番

 蜷 川「何故、私に…。まぁ、いいか。可笑しな点ですかぁ…」

 三 上「意地悪をしてるんじゃないの。私自身にも言い聞かせたいの」

 蜷 川「私と三上さんの共通点ということですか?」

 三 上「流石、蜷川さん。私の意図を分かってくれるわ」

 財 津「なるほど、人を裁く側の者ということか」

 三 上「あら、財津さんも。いいわねぇ」

 神宮寺「えっ?僕だけ仲間外れ?」

 三 上「そうじゃないわ。ほら、ここよ」


と、三上は神宮寺の映し出した画面の一部を指で押さえた。


 神宮寺「加害者女子?それがどうしたの?」

 三 上「可笑しく思わない?」

 神宮寺「あっ?実名か呼び名じゃない。暴いてマウントを取りたがる者たちの投稿

     としては可笑しいね」

 三 上「そういうこと。触ってないでしょ。書き換えられないでしょうから」

 神宮寺「上から塗りつぶしたり貼り付けた形跡はなかったよ。だから、スルーして

     たよ」

 三 上「加害者・被疑者・容疑者など私も蜷川さんも日常的過ぎて気にも留めな

     い、おはよう、と同じようにね」

 蜷 川「確かに」

 財 津「なるほど知的レベルの低い連中のやり取りの中に加害者女子と言うのは可

     笑しいな。そこに何らかの意図を臭わせるな」

 神宮寺「ねぇねぇ、補足ネタもあるので、いい」

 財 津「いいよ、神宮寺君」

 神宮寺「羅列するより、話すね。結果論だけど。2月13日の17時に桜子の母・静

     江さんに1時間程家を空ける必要性があったってこと。静江さんは桜子さ

     んに1時間だけ家を空けるね、帰ってきたら焼き肉でも食べに行く?と言 

     うと桜子さんは、う~ん、大丈夫。お弁当を買ってきて。気を付けていっ

     てきてね。と答えている。これが母・静江さんと桜子さんとの最後の会話

     になるんだ」

 財 津「桜子さんを家から誘い出す時間を作ったということか」

 神宮寺「証拠はないけど、多分、そうだろうね」

 財 津「やるじゃない、神宮寺君」

 神宮寺「えへ。2月13日17時26分に桜子さんがLINEでネットの複数の友人に、き

     めた、今日、死のうと思う。今まで怖くてさ、何もできなかった、ごめん

     ね、と二分間での送信がポンポンとあるんだ。その6分後に既読して有難

     う、があるのも可笑しい」

 財 津「何を可笑しく思うんだ?」

 神宮寺「既読待ちであれば電源を切らずに、構って貰っている存在感を味わうは

     ず。なのに切られているからねぇ、行動と発言が矛盾してなくない」

 蜷 川「そうだな。静江さんにはお弁当を買ってきてね、と言っている。今から自

     殺を考えているなら、母への感謝や詫びがあってもいいはずだな」

 三 上「自殺をほのめかすものはなかったのね」

 財 津「確かにシングルマザーで桜子さんを心配してくれている母には、ありがと

     うとか何も残さず、SNSの友人には死ぬと決意したと言う。なのに動機も

     記されていない、可笑しいな」

 蜷 川「自殺する者は、自分の恨み辛みを語るもの。そうすることで復讐の機会を

     期待することは少なくないからな」

 三 上「前後の会話から、孤独がいやで構って欲しい。それが高ぶって精神的不安

     からの行動とは考えにくいわね」

 財 津「だとすれば、桜子さんを誘い出した後、携帯を奪われ、桜子さんに変わっ

     て実行犯が打ったということか」

 神宮寺「そうだと思うよ」

 三 上「そうね。母・静江さんとの会話の直後に、きめた、今日、死のうと思う

     は、唐突ね。今まで怖くてさ、何もできなかった、ごめんね、も急に終止

     符を打っている、いや、幕を引きたがっていると感じるわね。悩む者と終

     わらせたい人物のふたりが混在してるわね」

 財 津「流石、職質の神」

 三 上「茶化している?」


 三上は、財津を睨んで、指をぽきぽきと鳴らす振りをした。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る