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「YES!!YES!!HOOーーーー」
爽快感で思わず絶叫した。
クルー達もノってきた。
白銀の雪を跳ね上げ滑走する。
ルディの力強い脚運びとリーダーシップでキレキレのスピード感を味わう。
「わわわわ!ルディ! 」
何度も横回転しながら突き進む。
楽しむ余裕はあったが付け髭は雪塗れだ。
こんなサンタのソリは有りなのだろうか。
「マシューちゃん、どう?あたしの走り。マジでサイコーでしょ? 」
ルディはセクシーにウインクした。
「もうすぐ目的地よ!住宅が集中している区域だから一気に配れるわ」
クインが冷静に指示を出す。
「速度緩めて」
マシューは手綱を引いた。
ピンクやブルー、パステルグリーンで塗装されたマンションや家々が立ち並ぶ。
どの家も玄関のオレンジ色のライトが灯された儘だ。
鍵の掛けられていない窓から静かに入り、ツリーの下や靴下にプレゼントを忍ばせる。
昔の老人は何て元気なんだ。
煙筒を自力で登り、暖炉から忍び込むなんて正気の沙汰じゃない。
各所に設けられているクローバーカンパニーの倉庫に保管してあるプレゼントをソリに積み込み、続けて家々を回る。
「マシュー、今の所いいペースよ! 」
クインの声に励まされる。
再びソリに跨がり住宅が密集する区域に降り立った。
プレゼントの入った袋を背負い、一階の窓枠を越えようとしたところで足が引っ掛かり、床に尻餅を付いてしまった。
「いてっ──」
小声で呟き尻を擦る。
「サンタさん? 」
マシューの心臓がドキリと跳ね上がった。
5、6歳の女の子がトロンとした目で彼を見詰めている。
彼が入った窓はトイレに通じる廊下の真正面にあったのだ。
気弱なマシューの心臓は、相手に聞こえるんじゃないかというくらいドクドクと脈打ち始めた。
こんな時、サンタなら──
「メリークリスマス! 」
しゃがんで目線を合わせ、そっと女の子の頭に手を起きプレゼントを差し出す。
女の子はプレゼントを受け取ったが寝惚け眼でぼんやりしている。
その隙にマシューはゆっくりと背を向け、ジングルベルをフンフン歌いながら身体を揺らして入ってきた窓から外に出た。
「漸く歌とダンスが役に立った」
「下手なダンスが~~役に立つのさ! 」
エイダンがふざけて歌うと笑いが起こる。
ソリは次の場所へ向かう為高度を上げた。
下を見下ろす。
都市部の華やかな明かりが遠くに見えた。
「良し!どんどん行っちゃうわよーー」
ルディの掛け声でクルー達の足並みが加速し、マシューの髭が風で後ろに靡く。
クルー達がまた歌い出した
走れそりよ
丘の上は
雪も白く 風も白く
歌う声は 飛んで行くよ
輝きはじめた 星の空へ
OH YEAH ソソ、ソックス吊るして楽しい夢を
朝目覚めればきっと届いてる
6頭のトナカイ 勇敢な我等 サンタの相棒 いきなり参上 回り巡るよ YoYoソリで
ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る
鈴のリズムに ひかりの輪が舞う
ジングルベル ジングルベル 鈴が鳴る
森に林に 響きながら
ジングルベルにラップを入れてきた。
マシューも共に口ずさむ。
トナカイ達からパワーを分けて貰って疲れも吹き飛ぶ。
何て素敵な夜なんだ。
ソリを走らせながら眺める夜景こそが、自分に対するプレゼントに思えた。
「次の目的地、後30m」
クインは真剣な面持ちでモニターを見詰めていた。
管制室のモニターは4分割され一つにはマシュー達のリアルな姿が映し出されている。
目的地が色分けされていて、障害物となる大きな建物は赤く点滅し、サンタの現在地を確認出来る映像。
それにプレゼントを届け終わった区域が塗りつぶされていく映像と、ソリの方向と道を示すナビとなる映像だ。
モニターの下では絶えず数字がカウントされている。
プレゼントの個数だ。
0になればノルマ達成となる。
速度を落として緩やかにソリが着地した。
レモンイエローの壁にペンキで可愛らしい花や木や虹が描かれた大きな建物があった。
建物の敷地内には大小の雪だるまが幸せそうな顔で並んで立っている。
ドアをノックする前に扉が開いた。
「メリークリスマス! 」
「メリークリスマス! 」
児童養護施設の職員と挨拶を交わしてプレゼントを渡す。
ソリに跨がる時、窓に掛かるカーテンの隙間からベッドを並べて眠る子供達の姿が見えた。
「いい夢を! 」
雪に付いたサンタの足跡は明日には消えているだろう。
再びソリは飛び、鈴の音を鳴らしながら次を目指した。
「皆ぐっすり寝ていたから、かっこいいサンタの姿見せてあげられなくて残念だったわね」
ルディが言った。
「サンタは奥ゆかしいんだ。さあ急ごう! 」
始めは振り回されていたマシューも、トナカイ達の制御に慣れてきた。
ぐずぐずしてはいられない。
障害物に対して警告を発するクインの声が何度か届いた。
でもスピードは落とさない。
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