第11話 ステータス変動
なんとかアルトリクスを騙し騙しにしながら育成をし続けた結果。
他の訓練も試してみたが、基本的に一時間で2~5までのスキルステータス上昇に幅が存在するらしい。
筋力訓練を選択した時は基本的に腕立てを一時間ずっとしている感じだ。
その結果、腕立て伏せで得たステータス変動恩恵は+5だった。
敏捷訓練を選択した場合はその場で太腿上げをしていて、そのステータス変動恩恵は+2。
耐久訓練を選択した場合はその場に立ったまま防御態勢を取り、何処から迫る謎の衝撃を受けていた。この衝撃を受ける耐久訓練は実際に打撲傷を受ける為に危険性を伴う。怪我を受けても、その耐久値のステータス変動恩恵はたったの+3だった。
能力訓練は試しているので今回は行っていない。
精神訓練はとにかく瞑想をしていた。他の訓練の中でこれが一番危険性が少なく、肉体を動かす事もしないが、とにかく目を瞑ってじっとしているだけなので退屈そうに思えた。が、ステータス変動恩恵は筋力値と同じ様に+5だった。
最後の幸福値は、能力訓練の様に何処かの空間からアイテムが出現する。
小吉、中吉、凶、大凶、大吉、幸運、大幸運が入ったくじ引きが入った箱が現れて、それを何度も引くと言う訓練である。傍から見れば完全に遊んでいるな、と思うが、一応は幸福訓練ではあるらしく、ステータス変動恩恵は+4だった。
その結果、以下がステータス変動によって新しく変わったステータス。
【基本性能】
そして、以下五つの訓練を試してみたが、どれも一時間をした後、必ず二時間の休息を得た。其処から察するに、やはり訓練の時間数を終えた後、その後に二倍の休息が待ち受けているのが通説であるらしい。
一日に五回一斉にやった場合、一度の訓練に一時間×5だから五時間に加えて、休息二時間×5だから、十時間、合計で十五時間の訓練をする事になる。
流石のアルトリクスもヘトヘトになるから、見ていて可哀そうなどと言う感情が浮かんでくる。
「……アルトリクス、育成と言う項目において、必ず訓練と言うモノは必要になる」
一日に五回をするのもあれだから、まずアルトリクスと相談する事にした。
「だけどお前の意志も尊重したい、だから……一日に何回の訓練が良い?」
シャワーから上がって来たアルトリクスはタオルで髪を乾かしながら嫌そうな表情をしている。
まあ、運動は明らかに苦手そうではある。しかしだからと言って、それをないがしろにするワケにはいかない。
「………一回」
一日一回?……いや駄目だな、流石にそれは少なすぎる。
「四回じゃ駄目か?」
「でも、結構、疲れるんです……どうにか一回に出来ませんか?」
「分かった、三回で手を打とう」
三回なら九時間程、それなら他の事も出来る。
「う~……ぷろふぇっさぁ……」
涙目を浮かべながら、慈悲を乞うアルトリクス。
いや、駄目だぞ、これ以上は曲げられない。
「これはお前を強くする為であって……」
「うぅ……」
畜生、なんて目で俺を見やがるんだ。
……此処で、俺が折れる他無かった。
「分かったよ……じゃあ二回な?」
「プロフェッサー!」
一回にして欲しいと、アルトリクスが言いたげだった。
「二回だ。これが最低限の条件だ……頼むよ、飲んでくれ」
「………わ、わかりましたよ……二回だけですからね……」
此処で、アルトリクスが俺の条件を飲んでくれた。
これで一日二回の訓練をする事に決まったのだった。
まあ、尤も。
一日一時間を二回セット、などと誰も言っては無いが。
一先ずはその方針で定まった。
「さて、俺は少し出て来る」
一万程握り締めて、俺は上着を着込んだ。
「……何処に行かれるんですか?」
そうアルトリクスが聞いて来る。
俺のポケットの中には、随分と少なくなった素材を忍ばせていた。
「あぁ、少し、素材を装備に変えて来る」
俺はそう告げて、外へと繰り出す。
粗悪な人鳥の皮、粗悪な人鳥の嘴、粗悪な人鳥の爪。
この三つの素材で出来る装備品があるらしい。
適当に看板を見ながら、何処にその装備品があるのか探していく。
適当に街をうろつくが、しかし違和感しか感じない街だ。
こんなに店が立ち並んでいると言うのに、俺以外の人間が何処にも居ない。
既に崩壊した都市だから、と言うのであれば、仕方が無い事だろうが。
しかし、やはり不気味だ。店に流れる電力は何処から来ているのか。
食事処などあるが、食材は一体どうしているのか。
客が来なければ店の食材も捌けず、ただ腐るだけなのではないのか。
そうなると、店にとっては大損ではないのか?と考える。
そして、そんな大量廃棄する食事処に入りたいとは思えない。
結局、食事処を利用する気にはなれないのだ。
俺は看板を見渡して、アースティックな文字をなんとか解読しながら歩いていると、ようやくお目当ての店を見つけるのだった。
「ここか」
俺は店を見る。
その店は窓や扉がなく、店の中が筒抜けになっている。
中に入ると、店主らしきブリキ人形が此方を見詰めて来た。
細い、針を人型サイズにした程に、細い機械の人形だった。
『―――■■』
声が発せられる、あぁ。そう言えば言語、分からないんだったか。
アルトリクスを連れてくればよかったな、あぁ、やり直したい。
そんな事を考えながらも、折角一人で来たので、なんとか自分で対処したいものだ。
そう考えて、俺はポケットから乱雑にいれた素材と一万円札と取り出してそれを店主の前に置く。
「これで何でもいいから作ってくれ」
こっちがそんな事を言っても、それを理解してくれるかどうか分からなかった。
ブリキ人形は細くて滑らかな曲線を描く寸胴から車のガソリンを入れる為に開く給油口の様に、小さな扉が開かれると、其処から本当に針の様に細い五本指を伸ばして、素材を握り締めると、一万円札を収納して二千五百円と出した。
へえ、六千と五百円で何か作ってくれるのか。
まあ、一万円で三万と五千円の価値があるから、千円で三千五百円。
二千円で七千円。四千円だと一万三千円。六千円で二万円だから……そこに五百円だと千二百五十円。合計で二万千二百五十円か。妥当な値段じゃないだろうか?
そう思いながら、細いブリキ人形は部屋の奥へと入っていき、音を鳴らしていた。
俺は近くの椅子に座って、装備品が出来るのを待ち侘びるのだが。
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