死神小蝶

　立派な百合が咲いた黒羽織を肩にかけた、はて歌舞伎座にかような女形がいたかと見紛うような美しい男が、行灯に文を照らして読みふけっている。机の上には熱燗と茄子の漬物が数刻過ぎた気配をもって鎮座していた。

「ずいぶんと上が騒がしかったが、どうしたィ」

　声まできれいな男を無視して、畳を踏んづけて座った女は、荒々しく熱燗を酌にどばりと注いで喉に送った。

「おいおい、そらァあたしのって……あァア」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう！

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録（無料）

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る