第11話
レオンが村の様子を見に行った少し後、
ルナールとダンは黙々とテントの設置を行っていた。
「……ダンさんは、ここに来て不満はないのですか?」
ふと、ルナールがダンに尋ねる。
「……まあ、不満はないと言えば、嘘になりますがあそこに居ても、執事長が私の邪魔をしてきていたでしょうし、最悪、殺されていましたし、レオン様も噂と違い、誠実な方だと感じました。今の状況は言うほど悪くはないですね。そういう、ルナールさんは、どうなんです?」
テントの準備をしながら、自身の考えを話すと逆にルナールにも聞き返す。その問いに微笑をたたえながら、ルナールは言う。
「私は、レオン様がいればそれでいいですから。私を奴隷から救ってくれたレオン様が幸せになるなら、なんだってしますよ。私は」
少し怖い返答にダンは肝を冷やしながらも、テントを立てる手は止めない。
テントを完成させ、荷物の整理を行っていた二人であるが、微かな衣擦れの音にルナールは手を止める。
「ダンさん、何か聞こえませんか?」
「え? なにも聞こえていませんよ。何か聞こえたのですか?」
「森の方から衣擦れの音が」
ルナールの言葉を聞き、ダンは素早く思考する。
(ここらには、人は住んでいないはずだ。森には最低でもD級の魔物がいるはず。本来ならなにもいないはずだが、ルナールさんは獣人、五感が人よりも鋭い……)
「……ルナールさん、一応、レオン様に報告を」
「そうですね」
ダンの言葉にそう応えるや否や、ルナールは、レオンの匂いをたどり、全力で駆け出す。
ルナールが走り出した後も、ダンは森に向かって、警戒を続ける。
数分の時が経ち、森からゾロゾロといかにも山賊といった風貌の男達が現れる。
「何者だ。お前達、ここがタスフェルド領の領主の屋敷と知っての狼藉か?」
「ぷっ、はっはっは!」
男らにダンが強い口調で詰問するが、それを意に解するどころか男の一人が笑い出し、それが感染するように全員が笑い出す。
「なにがおかしい」
「いやいや、屋敷って、それのどこが屋敷だよ。ぼろぼろすぎだろ。村人だって、もう少しまともな家に住んでるぜ。もう、普通に幽霊屋敷の方がマシだろ」
「……これから改修する」
あまりに図星すぎて、ダンもそういうしかない。
「あー、なんかすまんな」
そんな様子のダンを不憫にでも思ったのか、最初に笑い出した男がそんなことを宣う。
「お前に同情されても嬉しくない。それで、お前達はどこの誰だ? まさか、本当に山賊というわけでもあるまい」
「ふん、分かってて聞いてるだろ?」
「伯爵の差金か」
ダンの言葉に男は口角を上げ、嘲笑う。
「さあな。俺たちは山賊だから、お前達から金品を奪いに来ただけだ」
「下衆が」
「下衆で結構。よし、ここは、お前ら3人が殺れ。残りは俺と一緒にメイドを追って、ガキを殺しにいくぞ」
「へーい」
男らは、悠然とルナールの走った方向に向かう。それをダンが許すはずもなく、
「お前たち、私がここを通すとでも?」
「3人もいれば、十分殺せる。じゃあな」
「お前の相手は俺たちだ!」
男らを追おうとするダンに残った3人が行手を阻むように立ち塞がる。
「チ、邪魔だ!」
ダンは、懐に忍ばせていた短剣を手に駆ける。
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