第39話 お泊まりからのお出かけ
梅子ばあちゃん(本人のたっての希望でそう呼ぶことになった)は、霊能者、っていう私のイメージとはかけ離れていた。
外見はもちろん中身もね。
新しい物好きで、スマホ3台持ち。他にもタブレットを持っていて、場面に応じて使い分けも完璧。
機密が多くてSNS発信ができないのよねぇ、なんて、言ってるけど、お弟子さん向けのコンテンツを作成して精力的に発信してるらしい。
「霊能者なんて、情報が何ぼでっせ。」
そう、まさかの関西弁。
もともと中川家は京都の郊外に家があったらしい。
その昔、体制が変わるとき、って梅子ばあちゃんが言ってたけど、どうやら大政奉還って歴史で習った頃のことみたいなんだけど、それまで京都に天皇は住んでいたんだって。
「政治は江戸ですけどなぁ、本当の
ホッホッ、と笑うその様子は、ど派手な外見にもかかわらず、優雅にさえ見えるんだけどね。話が見えないのは、なんかわざとっぽいなぁ、なんて感じちゃってます。
「うちの家も、ちょっとは有名な拝み屋の血筋でしたなぁ。天皇家もお公家方にも少々縁がございました。先代の時ですわ。ほれ、大きな戦が2編もあったでっしゃろ?あの頃になぁ、手伝って欲しいっちゅうて、さる方にお側によばれましてなぁ。こっちの方に移ってきましてん。」
大きな戦って、世界大戦のことだよね。ハハ。時間枠が長い・・・
私の中では、ううん親の世代でも、十分教科書の中での話し、だよね。
そんな顔をしていたら、
「まぁ、天皇はんか帰らはるときには、わてらも京に戻るつもりですけどなぁ。」
・・・・
100年超えてるんですけど、多分・・・
「さる方」
そう梅子ばあちゃんが言う人が、この国の根幹に深く根付いているんだとか。歴代の総理大臣とか、一部の天皇家の人やそこに代々仕えるおうちの一部の人しか知らない、その人。
多くの有名な本物の霊能者は、その人のことを怖れ敬っている、って話。
どうやらタツも知り合いみたいで、この国の神なんて言われている人(?)で知らんやつはもぐり、だそう。
「おもろいやっちゃでぇ。詩音も気に入ると思うわ。」
は?
その人は、東京のど真ん中に住んでるって話。
で、なぜか、明日一緒に会いに行こうって・・・
いやいや、私、帰らなくちゃ。
家の人心配するし・・・
「あ、それなら大丈夫や。ちゃんと断り入れてるで。ほれ。」
タツが何かを投げて寄こした。
うわっ、って言いながら、私はなんとかワンバウンドさせて掴んだんだけど、これ、私のスマホじゃない?
「家族L○NE見てみぃ。」
「へ?」
私<今日、お泊まりしていい?中川さん家>
姉<めずらしいね。いいんじゃない?>
母<いいけど、ご迷惑じゃないの?>
私<中川さんから言われたの。是非泊まってって明日朝から遊びに行こうって。てことで明日もちょっと遅いかも>
父<男じゃないだろうな?>
姉<女の子よ。とっても美人>
父<ならいいか>
母<おうちの方とお電話できる?>
私<今側にはいないし、いらないんじゃない?>
母<ちゃんとお礼言いなさいよ。良い子にね。>
私<はぁい>
・・・・
「えっと、これ・・・・」
「私が代理送信してあげたで。」
梅子ばあちゃんがそう言った。ちなみに所々、絵文字も使用してるし・・・
シッシッシッ。
中川さんも嬉しそうに笑ってる。
詩音ちゃんがお泊まり、詩音ちゃんがお泊まり・・・
口の中でブツブツ言ってるのは・・・・聞かないことにしよう・・・
ていうか、これ私のスマホ。
寝てる間に勝手に・・・ってこれ、ダメなやつ!
文句を言おうと思ったけど、なんだかみんなの笑顔が嬉しそうで毒気が抜かれたっていうか・・・ま、いっか。
正直、なんか私もテンション上がってる。
ていうか、双子以外のお友達のおうちにお泊まりって初めてかも。
流れに乗っかっちゃったけど、ま、いっか。
中川さん家のご飯は、旅館みたいだった。
大きな広間に、お膳が一人ずつ配膳されたの。
お手伝いさんがいて、料理人もいるんだって。
この大きな家にはお弟子さんたちもいて、ほぼほぼ旅館な感じ。
男女別の大きなお風呂もあって、梅子ばあちゃんと中川さんと私で一緒に入ったんだ。
私は最初に寝かせて貰っていたお部屋を借りて就寝。
翌朝、中川さんに見送られて、梅子ばあちゃん、タツ、私がリムジンっていうの?後部座席がお部屋になってるみたいな車に乗って、後は運転席と助手席に誰かお弟子さんらしき人が乗って、出発しました。中川さんは行く資格がないとかなんとか。よくわからないんですけど・・・
ていうか、緊張するよ、この車。
東京へ行く。そう言ってたんだけどね。
私も知ってるよ、この建物!
車は、とある建物、ううんはっきり言おう。国会議事堂の敷地に入っていく。
そのまま、少し庭?なのかなぁ、周りをぐるりと走ったと思ったら、とある場所から地下へと入った。
グルグルと回る感じでかなり下ったと思う。立体駐車場みたいな感じで車を止めるスペースが何階分もあった。
どのくらい下ったか。
車は止まり、扉が開けられた。
薄暗い地下の駐車場。
降りたその場所は、非常口みたいな扉の前。
「行きまひょか。こっちでっせ。」
梅子ばあちゃんが勝手知ったる、という感じで、その扉の方へ行くと、助手席に乗っていた人が扉を開けて深々とお辞儀をした。
「いってらっしゃいませ。」
一方、車の扉を開けてくれたのは運転手。その人が、扉の中に入って行く私たちに向かって、そう言うと、同じように頭を下げた。
中に入る。
どんな照明なのか、暗くないけど、ライトがどこにあるかは分からない。
扉を開けると、一般家庭と変わらない幅の無機質な廊下。目の前はただ壁が続く。
入って右手はすぐに突き当たりが見える。反対の左側へと長い廊下を梅子ばあちゃんは進んでいく。
突き当たりを右に曲がる。
同じように長く続く廊下。
違うのはその中心辺りに両開きの重々しいスライドドアがあったんだ。
その時、俺、シオンは、なんだか前世のダンジョンにあったボス部屋の前の緊張感を思い出していた。
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