第四話:AFTER SCHOOL

「なんで俺?」

 学校を出てしばらくして俺はダニエルにそう尋ねた。俺はボードで滑りながら、そしてダニエルは歩いている。

「俺はあの人だかりの中にもいなかったんだぞ。お前に興味はないんだ」

「知ってるよ」

 ダニエルは肩をすくめてみせた。

「君みたいな方が楽だろ?あれこれ詮索されるのはそんなに好きじゃないんだ。あのままいたらいつ帰れたか」

 まあ、確かに。でも普通は人は、他人に構われるのが好きなんだと思っていた。俺を除いてだけど。それにダニエルは転校生だから、物珍しいだけだ。構われるのは最初のうちなんじゃないのか、と言おうとしてやめた。ちょっと失礼かなと思って。

「ボード、好きなの?」

 ちょっとした沈黙の後、ダニエルはそう尋ねてきた。

「まあね」

「へぇ、僕とは正反対かも」

 ダニエルは興味深そうに言った。

「何が」

「僕はあんまり外で遊ばないから」

 まあ、そうだろうな。俺は疑問には思わなかった。正反対と言われても、気にならない。だって、確かにそうだと思ったから。ダニエルは陽に当たってない肌の白さだし、あまり体を動かすのが好きなようには見えなかった。太ってる、ってほどじゃないんだけど、活発なようには見えない。

「えっと…ダニエル、は」

「ダンでいいよ」

 俺がおずおずと名前を呼ぶと、ダニエルは軽やかに言った。

「…じゃあ、ダン、はバイオリン、やってんだっけ」

 ダニエルが活動的じゃないからと言って、家でダラダラと過ごすゲーマーじゃないことは確かだった。だってバイオリンを弾くなんていうやつなんだから。

「うん。誰から聞いたの?」

「えっと、ジョシュ」

「ああ、あの赤毛の」

 ダニエルはあのお喋りでお調子者のことを思い出したようだ。1日でそんなに深く知り合えるわけじゃないだろうが、それでもダニエルの中に彼の印象は残ったらしい。くすくすと笑っている。

 それから俺たちは他愛もない話をした。おかしなことに、いつも15分で家に帰れるくらいの道のりなのに、半分も行かないところでもう20分も経っていた。本当に、おかしなことに。

「あ、俺、ここなんだけど」

 穴場に行くんだったことを思い出して、ある路地の前で俺は立ち止まった。

「ああ、そうなんだ。僕は右」

 ダニエルはそう言い、

「じゃあ、また明日学校で」と片手をあげる。

「ああ、…じゃあな」

 俺の返事を聞くとダニエルは背を向けて歩いていく。俺はすぐに路地に入らずに、ダニエルの後ろ姿を見ていた。

 不思議だった。人と馴れ合うのが好きじゃない俺が、ダニエルとは、話していて嫌じゃなかった。むしろ、心地よかったと思うほどだった。

 本当に不思議に思いながら、俺も路地に入った。心なしか、いつもよりボードに乗る身が軽かった。

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