ああ、愛しの我が異世界

サカグチ

今度こそ、ちゃんと生きてみます!

社会不適合者、現代を生きる君達なら聞き覚えがあるだろう、私はそれに該当するよくいる不登校の高校生だ。勝手に病んで、勝手に自滅した。外に出る頼みの綱のバイトだって、1週間前にクビだ、本当にくそみたいな世界だと思う。こんなことがあったし死んでしまいたいと思った、私は例に漏れず普通に臆病で未遂どころかしようとする前にチビって終わり、こんな喋り方をしているけれど普通に死・ん・で・い・な・い・だ・け・だけの一般人だ。そう、死んでないだけ。


 でも、私はやらかしてしまった、本当に、本当にやらかしてしまったのだ、今回も飛び降りを試みようと橋から身を乗り出した、いつもならその場に座り込んでおしまいだが、今日は身を乗り出してしまったのだたったそれだけだった、ドンッ、背中に衝撃が走って私は落ちた、橋の欄干が、ゆっくりとスローモーションで離れていく、最期に聞こえたのは悲鳴と、ぐしゃりと、何かが潰れる音だった。


「さて、過去回想は済んだかい?異世界人君」


「どういうことだ、、ってあれ?い、痛くない?なんで?」


 頭を触っても血の一滴も流れてない、体も綺麗なままでどこも折れてない、落ちる前の変わりない私だ、目の前では顔が見えない、というかない人型の何かがあぐらをかいて座っている。


「えーと、あ、あの、、、はは、、」


 不登校になってはや半年、まともに他人と話さなくなってから人見知りは加速、人型の何かを見るだけで怖い、私は正座に座り直して下を向く、私ができることはそれくらいだった。


「異世界人君、君の言いたいことはよぉくわかるよ、なので答えてあげよう、1つ、君はもう死んだのさ。」


 人型が指をパチンと鳴らすと目の前にホログラム?が映し出された、河原に広がる血痕、ひしゃげた体、これ以上言語化は出来ないが、一言で言うならぐちゃぐちゃだ、酷い有様でしかない。が、あまりにも実感がわかなくて、他人事のようにしか感じない、スプラッター映画を見ているような気分だった。


「2つ、ここは何処か、だよね、答えてあげよう、ここは君の世界だよ」


「君が恥ずかしげもなく書いてた、君の世界で言うとこの俺TUEEEE....」


「わー!!ー!!!!!!!」


 君の世界、と俺TUEEEEで思い出した、大昔書いてTwitterに投稿してTwitterの皆さんにバカにされた私の超大作のライトノベル、あの黒歴史みたいな世界観の、いいや、あれは黒歴史だ、


「うるさいなぁ、もう、冗談だよ、ここは普通に僕の世界だ、僕は神、神っぽくない?」


「神っぽくは、、、あるけど、、、」


 人型の神(?)がやれやれという風に肩を竦めるといつの間にか姿形が変わっていた、髭が生えていて、白髪のよくいる感じの、


「ふむ、こっちの方が信じて貰えそうだね、じゃあ話を聞いてもらうよ」


 他になにか出来そうなことも無い、せっかく死ねてしまったのだし神の話を聞いてみよう、と、神の話を聞くことにした。


「君は死んだ、運悪く、橋の欄干から身を乗り出した瞬間の突風でね、そして運悪く、君の落下地点は水辺ではなく河原だった、不幸の連続で君は死んだのさ、んで、ここは僕の世界、君は今魂だけの形になってる、肉体は死んだからね、さっきの投影でわかるだろう?僕が君をここに呼んだのは特に理由はないんだけれど、運が良かったね、君にはチャンスがある。」


「死ぬか、僕の世界で、生きるかだ。」


「前世の君を少し見せてもらった、可哀想な子供だ、世界を恨んで環境も恨んで、自分を呪った哀れな死んでいない少女....それが君だ」


「僕の世界で、生きてみないかい?今度こそ、人生を面白おかしく、生きてみようじゃあないか」


 生きる、生きるか、確かに悪くないかもしれない、あのクソみたいな世界にさよなら出来る、そして異世界で面白おかしく、私の憧れた異世界転生が目の前にあった、ずっと諦めていたやり直しが、もう一度できる、それなら。


「うん、神様、私は、今度はちゃんと、生・き・た・い・。」


 髪は口をにぃっと曲げた、意地汚い、やけに人間臭い表情だ。


「ようし、それなら僕は君に取っておきをやろう、特別だぞ、好きに生きろ、さあ、行け、異世界人!」


 こうして私は、異世界に転生を果たしたのだ、なんとまあ、呆気ない話である。



 ――――――――――



「も〜!また勝手に異世界から子供を呼んでしまったの!あんなに加護も与えちゃってぇ...。…」


「いいだろうルナ、300年振りなんだし。」


「姿まで欺いちゃってぇ....。」


「せいぜい楽しませてくれよ、異世界人。」



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