記録 18ページ目

アホな人の提案通り、鬼ごっこが始まった。今回する鬼ごっこは増え鬼だ。


じゃんけんをして一人負けした俺は必然的に鬼となり三人を追いかけ回している。


姉さまを守るとか豪語してた早苗さんは3秒で捕まった。


「はい、タッチ」


「んな!? 我を捕まえるとは、おぬしやるな」


……単純に早苗さんの足が遅いだけだと思いますが。


次に狙うのはアホな人。イメージ的に七家先輩の方が足速そうだし。足が速い人を捕まえようと思ったら、相手が疲れてきたところを三人で挟み撃ちが一番妥当だろう。




……俺にもそう思っていた時期がありました。


アホな人がアホほど速い。スキだらけなのに、スキしかないのに!


「痛った、あー! 泥だらけだ」


「はい、たっ……!?」


アホな人がコケた瞬間を狙い捕まえようとしたが、ほふく前進で逃げられた。走ってる俺よりもアホな人のほふく前進のほうが速いとか、んなことある!?


「うわぁぁぁ、顔打ったー」


「はい、たっ……って、あれ、上!?」


次はアホな人が木に顔をぶつけた瞬間に捕まえようとする。しかし、アホな人はいつの間にか木に登っている。


この人、アホな人だよね? 別人じゃないよね?


アホな人は一旦諦めて、七家先輩を捕まえに行くことにした。七家先輩は頑張ったら捕まった。


「はぁはぁ、小野草君って意外と速いんだね」


「げホッ、意外は余計です」


早苗さんと七家先輩は捕まえた。残るは、アホな人のみ。


アホな人って運動神経良かったっけ。いつも溝にはまってるイメージしかないんだけど。


「七家先輩、あの人ほんとに神月さんですか?」


「あぁ、あれね。神月が本気になったらほとんどの人は敵わないんじゃないかな」


「え?」


「たまーに本気になる時があるらしくってさ。そんときは最強だよ。運動も勉強も。入試で一位通過だったらしいし。あっ、生徒代表なのは入試一位だったからだよ」


は、あんな人が入試一位通過? 牛乳を常温で一年間おいておくような人が?


マジかよ。宇宙人が目の前に現れてもこんなに驚かないわ。


「まぁ、降参するしかないね。本気の神月に勝てるやつはいないよ、……話聞いてる?」


「絶対に捕まえる」


「あのー、どす黒いオーラを放ってるけど大丈夫?」


あのアホな人に負けるのだけは絶対に嫌だ。馬鹿にされる未来しか見えない。


「七家先輩、早苗さん、絶対につかまえますよ」


「だから、無理だって」


「姉さまを超えるとき……」


「茉永ちゃん!?」





俺たちの地獄の鬼ごっこが始まった。






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