記録 15ページ目
「来週はみんな大好き遠足だぞ!」
HRでの先生の一言で教室が興奮に包まれる。俺だって嬉しい。だって、授業がなくなるんだよ?
進学校の生徒であっても、授業がなくなって嬉しい人はわんさかいるのだ。単純に遠足が好きってのもあるけど。
「あっ、遠足では前に決まったペアと行動してもらうぞ」
遠足全然楽しみじゃないわ。お腹痛くならないかな。仮病使って休もっかな。でも、休んだらアホな人の面倒誰が見るんだろう。
てか、昨年までアホな人どうやって生きてたんだ?
「今から公園の地図としおり配るから昼休みにでもペアの人とやりたいこととか相談しとけー。基本的に公園から出ずに迷惑にならないことだったら何してもいいぞ」
先生から配られた地図をみて俺は絶句する。公園広すぎないか? あの人って迷子になるっけ。
……なるだろうな。あの人のことだから迷子だけでは済まない気がするけど。
昼休みにいつもより早く弁当を食べた俺はアホな人のクラスに行く。確か、2年C組だったと思う。
2年C組の前まで来た俺は緊張しながらドアをノックする。なんか上級生の教室ってドキドキするよな。
「すみません、神月先輩いらっしゃいますか」
俺がそういうと、教室にいた先輩たちが全員こっちを見た。なに、その可哀想なものを見る目は。
「えっーと、ちょっと今神月はいない……」
「おぉ、君! 来てくれたの?」
ねぇ、なんで先輩たちそんな目で見てくるの? 怖いんだけど。今から何が起こるの? 誰か教えて。
その後、中庭で遠足について話し合うことにした。
「始めに聞きますが迷子になったことありますか」
「ん? ないよ〜」
嘘だろ!? この人が迷子になったことがないだと? 耳が遠くなったのかな。この歳で老化とか嫌だよ。
「もう一度聞きますね。迷子になったことがありますか?」
「ないよ〜」
この人のことだから迷子になったことを忘れている可能性もある。あとで幼馴染さんにでも確認しよう。
「じゃあ、公園でやりたいことはありますか?」
「ブランコ」
「他には?」
「健康広場!」
「あのストレッチとか筋トレとかするやつですか?」
健康広場は筋トレやストレッチをするための道具がいくつか設置されているところだ。
この人、筋トレ好きなのか。三日坊主な感じするのに意外だな。
「そうそう。遊び方によっては楽しいよね」
あっ、遊ぶんだ。健康広場で鬼ごっことかしたら楽しいけどね? 罰ゲームで腹筋100回とか色々できるし。地元でもよくやってたなぁ。
その後、健康広場の話でめちゃくちゃ盛り上がった。この先輩と意思疎通ができる日が来るとは思ってなかったよ。
遠足、楽しみになってきたかもしれない。
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