記録 13ページ目

その後、俺たちは出席番号順に並び体育館へ向かった。


昨日休んでいたのと、笠原がなにも伝えてくれなかったせいで何も知らない俺は、近くにいたクラスメートに今からすることを聞いてみることにした。


「なぁ、今から何するかわかるか?」

「あー、なんかペア決めらしいわ」

「なんだそれ」

「先輩と後輩でペアになって、一年間色々するんだってさ」


ちなみに、中学一年生は中学二年生の先輩とペアを組むらしい。


やっぱり、優しい先輩がいいな。いざという時に頼れる人とか、話しやすい人とか……。


そんなことを考えているといつの間にか体育館へと着く。


生徒代表の人がペア決めの説明をしてくれるらしい。


……入学式の時も思ったんだけどさ。なんでアホな人が代表やってるわけ?


「はい、みなさんおはようございまーす! 神月美緒です。第16回ペア決めを始めたいと思います!」


アホな人の言葉で一気に会場が沸きあがる。


「というわけで、ペア決めの説明をしていきたいと思います。では、有川先生お願いします!」


「……あー、えっと、なんか任されました。有川です。えー、まず始めに30分間一年生と二年生で自由に会話をしてもらいます。その後、えー、10分間でペアを決め、決め終わった人は体育館の右側に寄ってください。以上です」


先生の目が死んでる。アホな人に指名された時、面食らってたもんな。たぶん無茶振りだったんだろう。かわいそうに。


アホな人が説明するよりはマシだと思うけど。


先生の目が死んでいる中、ペア決めが始まった。


人当たりが良さそうな先輩を探す。


おっ、あの先輩なんか良さそうだ。終始にこにこしていて、誰とでも楽しそうに話している。


「あの、すみません」


「ん、君は?」


「俺は小野草おのくさ響月ひびきって言います!」


「そんな畏まらないでー、リラックス、リラックス」


この学校にもまともな先輩がいるんだ。アホな先輩が強烈すぎてこんな人がいるとは思っていなかった。


「俺は七家なないえ修介しゅうすけ。よろしく!」


「よ、よろしくお願いします!」


感動して泣きそう。俺が求めていたのはこんな先輩だったんだ。あのアホな人との日々は辛かった。


「よぉ、君! 陰キャだと思ってたのにすぐに修介と仲良くなっちゃって」


あんたは人の幸せを潰すのが趣味なんですか。一気にテンション下がりました。


「神月、嫌われてんね……。小野草君顔がすごいことになってるよ」


「俺、この人ちょっと苦手でして」


「あはは、ちょっとって顔じゃないよ」


七家先輩がなんかツボってた。俺がこんなに拒否反応を示しているというのに。解せぬ。




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