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あのアホな人と一緒に学校に行くか、今まで生きてきた中で一番迷った。
どれだけ迷っても学校まで一緒に行かないと大変なことになる予感しかしなかったので、仕方なく一緒に行くことにした。
明日、ニュースでアホな人が登校中に死んだとか聞きたくないからな。
今、過去の俺にものすごく感謝している。
この人、一人で登校したら確実に死ぬわ。うん。
俺は先輩の生活能力向上を手助けするだけだから、この人の後ろをついて行くだけにしてたんだけど……。
道に迷うわ、溝にはまるわ。
それだけなら、まだ普通だと思う。普通じゃないけど。
「そこの姉ちゃん、家どこ?」
「家? えっーと、そこを……」
「すみません、俺たち急いでるんで」
この人、家教えようとしたよね。こんな露骨な聞き方、小学生でも走って逃げるわ。
小学生のとき、先生の話聞いてたのかあんた。 知らない人に家を教えてはいけません、って言われるだろ。
「ちょっと、おじさん可哀想じゃん」
「全然、可哀想じゃないので大丈夫です」
感覚ズレてるよ。今に始まったことじゃないけど。そのまま教えてたら、あんたが可哀想なことになってたからね?
「よぉ姉ちゃん、学校なんかサボってどっか遊びに行かない?」
「おぉ、いいね! 私、遊園地がいい」
お前が行く場所決めてどうする。
「ねぇねぇ君! 私、新しい友達ができたよ!」
誰がどう見てもナンパだろ。ナンパしてきたやつを友達って言うやつ初めて見たわ。
まず断れよ。お前、今から学校だろーが。
「すみません、俺たち学校なんで」
俺は無理矢理先輩の腕を引っ張って歩かせた。
「君、酷いよ! せっかく遊園地に行けそうだったのに」
「あんた顔だけは良いんっすから、もう少し危機感持ってください」
「なんで! 良い人そうだったじゃん。遊園地行きたかった!」
その後もずっと隣で騒いでいた。子どもかよ。
今から電車乗るんだけど。この人、まさか電車でも騒がないよな?
…… 一回怒っとかないと、この人のことだから何をするかわからない。
「遊園地行きたい〜」
「わかりましたから! 俺が今度連れていきますから大人しくしてください!」
そう言うと、先輩が急に静かになった。あれ、俺そんなに怖かったかな。静かになったからいいけど。
「君、今の言葉本当だよね? 約束だよ」
「……あっ」
何言ってんだよ、俺。こんなアホな人と遊園地に行くことになったじゃないか。
「いや、今のはですね……」
「遊園地〜、遊園地〜」
こんなに楽しみにしているのに、今更嘘だとか言えねぇーよ!
この時ほどタイムマシーンが欲しいと思ったことはない。
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