第2話 海底へ
レオンと別れてからリオンは宝石のような光景を眺めており、段々と高くなる太陽をずっと見続けていた。何故かその光景がスっとリオン自身の心を落ち着かせてくれてるような感覚があったからだ。
「そろそろ戻って準備しないとな」
リオンが腕時計を見ると時刻は7時になっておりそろそろ朝食の時間である。自身がする準備は少ないが早めにやることをやって置く方がいいだろうと思っている。
リオンは方向転換をして船の中へはいるための扉へ向かおうとした。すると振り返った時にリオンの目には甲板にいる人影が一瞬だけ視界に入った見えた。
(あれ?今人が…)
人影が気になったリオンは自身の視線を横へと向かした。するとそこには海風に黄金の髪をなびかせながら太陽の方を見る美しい女性がいた。
この船にいるからには20歳を超えていると思われるが歳は16歳ほどに見えるほど若い。
リオンはその光景に目が奪われると同時にある疑問が頭の中に浮かんだ。
(僕は集中しているとはいえ人が来ていたことに気づかなかったのか?)
目に入るまで全く気づかないのはおかしいと思うだろう。足音なり扉が開くなりで気づくはずだ。それにリオン自身人の気配には敏感な方だ。先程の悪夢を見た後なら気づかないかもしれないが。もしくは先に来ていたという可能性があるがあの様な美しい女性をリオンもレオンも気づかないはずがないのだ。海は穏やかで何も波の音が大きかったということすらないのだ。それなのに気づかないのはおかしい。
それから数分だけ考えたリオンは決断を出す。
(まぁ悪夢見たあとだし疲れが取れてなかったのかな?)
そういう結論である。
結論を出したリオンはその場に留まる理由もなく船の食堂へ向かった。
(…そういえば食堂は何処だっけ?)
リオンは自身の船に関する記憶がないことを船の中へ戻って数分して思い出していた。
「やっと食堂に着いた…」
あれから30分程船を彷徨った後に彼は船員を見つけやっと食堂の前に来ることが出来た。
リオンは目の前にある食堂の扉を開けた。扉を開けた先にはいい匂いが広がっておりお腹が早く食べろと急かしてくる。
食堂の中には数人が居るくらいだが厨房は少し忙しそうにしていることから先程までは忙しかったのだろう。
リオンはとりあせずお腹を満たすために厨房の方へ向かう。
「すいません」
「はーい。どうしました?」
「朝食を取りたいんですが」
「分かりました。メニューはどうします?」
「軽いものでおまかせするよ」
朝から重いものなんて食えないし特に食べたいと思うものもない。
「分かりました」
料理人の人かな?は厨房に戻って行った。リオンはその間取り敢えず適当な椅子に座り待つことにする。
待つ間ポケットに入っているスマホを取り出しネットを開く。適当なサイトに入って情報を得る。そんなふうに時間を潰していると先程の人が料理をリオンの前に持ってきてくれた。
「ありがとうございます」
すかざずリオンはお礼を言った。そしたら彼は笑顔を向けてどういたしましてと言って戻って行った。
「ン〜いい匂いだ」
食パンにスクランブルエッグ、ベーコンとスープ。シンプルだが軽い食としてはいいものであると言える。
「ねぇあんた見かけない顔だね。ちょっといいかい?」
リオンがフォークに手をかけてベーコンに手をかけようとした時後ろから呼びかけられた。声は女性のものである。
後ろからの気配には気づいていたので驚くことも無く後ろを向いた。
「なんで・す・……か?!」
リオンは後ろを向いた時に要件を聞こうと声を出したが目の前の光景に思考を停止しかけた。何故ならリオンの目に写った女性は服を1枚だけ来ている。それだけなら驚かないが彼女はボタンを外しており直にブラジャーか水着か分からないが見えていた。それが妙に色っぽくて見ているこっちが恥ずかしくなる。
「あれ?気づかれないように近づいてきたんだけどね。あんたもしかして元軍人か何かかい?」
幸い彼女にはリオンの精神状態は気づかれておらず全く違うことを話してきた。しかしリオンはそれに答えることが出来なかった。
「あれ?聞こえてるよな?」
「おいソフィアそこら辺にしてやれ。相手が困ってるぞ」
ソフィアと呼ばれたリオンの目の前にいる女性に後ろから注意をしながら黒い肌の男が姿を現した。
「なんだよルーカス。私はただこいつに話しかけただけじゃないか」
ソフィアと呼ばれた女性は不服そうに男に言う。黒い肌の男はルーカスはまさに今のリオンには救いの神となっていた。
「それ以前の問題だ。お前のその露出した格好は初対面の相手にはキツイだろ。すまないなうちの仲間が迷惑をかけた」
そう言ってルーカスはソフィアを押しのけてリオンの前に立って頭を下げた。それはまるでこれ以上見せないと言っているみたいに。
「なんだよぉ。それは私が邪魔だって言いたいのかい?」
「そういう訳では無いから少し落ち着け。俺たちは彼に自己紹介もしていないんだ」
ルーカスはソフィアにそういうとリオンのに向かった。
「俺の名前はルーカス、ルーカス・ロドリゲスだ。それでこっちが」
「ソフィア・マイヤーズだよ。よろしくね」
「あ、はい。こちらこそ先程は少し戸惑ってしまってすいません。僕の名前はリオンです。リオン・アルバートです」
ルーカスのおかげでで冷静さを取り戻せたリオンはルーカスとソフィアに頭を下げて自己紹介をした。
「そうか君が臨時で来てくれた人か」
「だから見たこと無かったんだね。てっきり視察のやつかと思ってたよ。なら後で一緒に潜る仲間だ、よろしくね」
「臨時だとしても仲間になることに違いはないな。これからよろしく頼むよ」
ルーカスとソフィアはそう言ってリオンに手を出してきた。握手を求められてるのかな?
「はい!短い間ですがよろしくお願いします!」
リオンは差し出された手をそれぞれ握って握手をした。
その後彼らはリオンと少し話をした後食堂を後にした。どうやらルーカスは潜航長でソフィアは副潜航長だそうだ。
「あっ後1時間もない…急いで食べないと」
リオンは先程の話しをしている間に冷めた食事を急いで食べ始めた。
「これは着くのギリギリかな」
食事を食べ終わったあとリオンは急いで着替えを済まして作戦室に向かっていた。
光が届かない船内は少し薄暗くて不安なもなるが大丈夫だと自分に言い聞かせる。悪夢のせいで少しだけ暗闇が恐ろしく感じてしまう。本当に面倒だよ。
「あら、貴方も遅刻したの?」
体がビクッと反応した。突然後ろから気配も一切なく話しかけられてリオンは驚いていた。おそらくリオン自身の顔も驚いた表情をしているだろう。
声のした方を振り向くと見覚えのある金髪と顔がありその青い瞳と目が合った。
「驚いちゃった?ごめんね」
イタズラが成功したかのように笑いながら笑う彼女は魅力的でリオンはしばし見惚れてしまった。
「……コホン、驚いてはいないかな。まぁ遅刻しかけてるのは確かだけど」
停止した思考が再稼働したリオンは彼女の問に答えた。すると彼女は嬉しそうに笑顔を見せた。正直リオンは少し意地を張っていた。
「そっか、じゃあ一緒に行きましょう?私の名前はエマ。よろしくね」
「うん、僕の名前はリオン。こちらこそよろしくね」
2人はお互いに笑い合いながら集合地へと急いで行った。
「やっと来たな。ギリギリだったぜ」
集合地へと着いたリオンに話しかけたのは彼の親友で同僚でもあるレオンだった。彼は呆れたような表情をしてリオンを見ていた。
「アハハ、ちょっと色々あってね」
苦笑いをしながら親友にそう返した。レオンはそんなリオンにやれやれといった感じで額に手を当てていた。
レオンは額から手を話してこちらを見るとすぐに近寄ってきて首に手を回された。
「それよりそっちのお嬢さんは誰だよ」
小声でリオンに質問をしてきた。レオンは先程とは打って変わってニヤニヤとした顔をリオンに近づけてきた。
「さっき会って一緒にきただけだよ」
「本当かぁ?」
本当のことを言っているのだがレオンはそれを疑っており、追撃をしてきた。そんなレオンにしかめっ面をうかべる。するとレオンは急に真面目な顔をした。
「お前あの子のことちょっと気になってるだろ?」
その言葉にリオンはドキッと心の中で音がした。何故だろうか。レオンのその言葉にリオンは何故か言い返せなかった。
「ちょっと私は無視ですか?」
「あぁ悪いね」
そこにいるのに無視をされてずっとそこにいたエマは怒った顔をして頬が膨れていた。
「まぁいいわ。それよりもう説明が始まりそうだし並びましょ?」
エマがそう言って見ている先には既に人が並んでいた。そこには先程会ったソフィアとルーカスもいる。あと一人眼帯をつけた男もいる。少し怖い。
エマの言葉に同意して俺たちはすぐに並びに行った。時刻は9時前で本当にギリギリだった。
俺たちが着くと全員が揃ったことを確認されて前に40代後半の男性が前に出てきた。おそらく今回の雇い主だろう。
「諸君集まってもらってくれたことに礼を言おうか。さてあまり長い話にはならないように気をつけるとしよう。ではまず今回潜水する場所に向かってもらうのはマリアナ海溝だ。今回は臨時で本部から派遣されて来たリオン・アルバート君とレオン・ブラウン君最後に海洋学者であるエマ・フランク君、そして今回から復帰してもらうジェイコブ・アンダーソンを今回のチームに迎えることとする。何か質問があるものはいるか?」
どうやら眼帯をかけた男はジェイコブと言うようだ。エマは海洋学者か、海が好きなのだろうか。
「ひとつよろしいでしょうか?」
誰も質問が無い中でルーカスが手を挙げて前に出た。
「なんだね」
「今回の目的を教えていただきたい」
「…そうだね、君たちも気になるか。先日別のチームがマリアナ海溝で発見したものがあるのだよ。それはどうやら地上で作られた建物の1部であったらしい。今回我々が求めているのはその建物が示すある可能性だよ」
「可能性ですか?」
「そうだ。その可能性とはマリアナ海溝のどこかに海底遺跡がある可能性だよ。今回の目的は海底探査及び海底遺跡の捜索だ。他に質問はあるかね?」
「いえ、以上です」
「そうか。ではすぐにでも潜水をする準備を始めてくれ」
何も聞いてなかったがそういうことか。おそらく他の会社にも知られているから早くに調査を行いたいと言ったところだろう。しかしまさがそのような夢物語があるとは知らなかった。
リオン達はすぐに持ち場へと案内された。持ち場と言ってもほぼ待機室のような場所だった。
「少し緊張する」
「ああ、確かにな俺達はほとんど初めて出しな」
「私も初めてだけどワクワクが止まらないわ」
リオンとレオンは緊張しながら表情がかなくなっているのに対してエマは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
持ち場はどうやらエマと一緒のようで外の様子が分かるモニターがありエマはそれを見て外の様子を観察するようだ。リオン達は元々援助をしている所への視察の意味もあったがそれよりも急病で来られなくなった人員の代わりに派遣されてたまに点検をすれば良いのだそうだ。だからほとんど待機室のような場所に置かれている。
そんな訳でリオン達は適当な椅子にすわった。
リオンの後ろにいた2人も乗り込み全員が配置に着いた。とは行ってもリオン達は何かあった時のためのエンジニアなのだからやることは少ない。
「では潜水を開始する」
「「了解」」
スピーカーから聞こえて来るルーカスの言葉に続いて返事が聞こえてきた。
外を見るためのモニターは水の中を示しており少しずつ光が薄れていく。その時一瞬背筋がゾワッとしたことをリオンは生涯忘れることは無いだろう。
リオンはこの時海底探査が始まったことを深く感じていた。
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