第16話 【COn初】トゥグアの街燃やしてみた【神の降臨】
安価でトゥグアの街を混乱に陥れることが決まったので、生産プレイヤー以外皆殺しにします。
方法は『ナーク=ティトの障壁の創造』で街を囲い、逃げられなくした上で1人ずつ心臓抜き取りの刑。支配してもいいんだけど、それだとどれだけ時間がかかるかわかったもんじゃないし。
掲示板を見る限りでは、ジェイソンくんを巻き込みかけたみたいね。誰がジェイソンだか知らないけど。
「お母様、街を隔離して何をするのですか?」
「生産以外のプレイヤー全員から心臓を抜き取るわ。私がPK⋯⋯人を殺す側であると証明するの」
「ここしばらくは忙しかったですからね。たまには遊興にふけるのも良いと思います」
「そうね。じゃあ、非生産プレイヤーは皆殺しよ」
路地裏から大通りに出ると、私というプレイヤーを知る人達の注目が集まる。それはもう当然のこと。有名税であると割り切るしかない。
そして、注目が集まるということは人⋯⋯特にプレイヤーが足を止めて集まるということ。
「ごきげんよう、プレイヤー諸君。生産プレイヤーに用はないから行っていいわよ」
生産プレイヤーに用はないと言えば、攻略関係だと頭の中で結びつくだろう。実際、生産プレイヤーはエリアボスを倒すなどの戦闘が苦手。一部の料理系生産プレイヤーは別だけど、それだって食材になるような相手との戦闘に限られる。
そして、今まで失踪しているとされていたプレイヤーが突然現れ、生産以外のプレイヤーにしか用がないと言えば、当然のようにレイド関係だと頭の中で変換されてしまう。
「ここにいるのは全員が非生産プレイヤーね?」
肯定するような声がバラバラに聞こえてくる。年齢も性別もバラバラ、強いて言うなら20代くらいに見える人物が多い。
あまり女性には手を上げたく無いんだけど、安価で決ってしまったものは仕方がない。
「初めましての人もそこそこいるかしらね? 私はセカト。殴殺の聖女だのと呼ばれているトッププレイヤーの一人で⋯⋯これからあなた達を殺す女よ」
「え?」
「は?」
素早くロンギヌスを振るい、集まったプレイヤー達の足を奪う。広がる困惑と恐怖、あまりにも突飛な私の行動に、思考停止するものも多い。
一拍遅れて悲鳴が上がり、次々に消えていく命がまだ殺されていないプレイヤーの恐怖心を煽る。殺害方法が、心臓を抜き取るという猟奇的な方法なのも大きい。
我先にと逃げ出そうとするが、足を切られてはそれも叶わない。腕だけでどうにか這って逃走を試みるプレイヤーも居たが、それも逃がさない。
「なんでだよ!?」
「俺たちが何をしたって言うんだ!」
「トッププレイヤーなんじゃないの!?」
「誰か助けて!」
街に響き渡る阿鼻叫喚。インベントリには人間の心臓が溜まっていき、戦闘状態になったことでログアウトも出来ずに逃げ惑うプレイヤーが次々消えていく。
私だけではあまりに時間がかかりすぎるので、リリィも心臓抜き取りに協力してくれている。私よりは稚拙だけど、ステータスのゴリ押しで何とかしてる感じ?
リアルに母親ならもっと上手くやるを見て、感動している自分がいる。まあ、その母親自分なんだけど。
「
「何言ってんだ!? 訳わかんねえん──」
うるさい輩は、ちゃっちゃと心臓ヌキヌキしましょうね〜。何人か喜んで心臓差し出してくるやつもいるけど、きっとあの掲示板のスレ民。私もちょいちょい見てるけど、こういう時は都合がいいと思わなくもない。
とりあえず、今は心臓何人分かな〜?
・人間の心臓×69
たったの69⋯⋯。やれやれ、これじゃ日が暮れるどころか日が昇るわね。障壁が壊れる事は無いと思うけど、あんまり時間がかかりすぎるのは私も被害者達も宜しくない。
と、言うわけで⋯⋯安価は失敗となります。悲しいですが、時間がかかりすぎるから仕方ないね。
ついでだから、安価の代わりにトゥグアの街に因んだ神でも召喚しましょうか。クトゥグア? ちがうよ。ヤマンソ。
「血で陣、供物は心臓、確かクトゥグアの召喚陣はこうだったかしら?」
「お母様、心臓を抜き取るのでは?」
「気が変わったわ。街ごと燃やす」
「なるほど」
呪文は⋯⋯いあ ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉーまるはうと ⋯⋯あれ、フォーマルハウトが先だっけ?
もう一回やろう、いあ ふんぐるい むぐるうなふ ふぉーまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ くとぅぐあ!
はーい、1回召喚に手間取ったので、スペシャルゲストのヤマンソさんに来てもらいましたー!
「というわけでヤマンソくん、私たち2人以外全部食べていいわよ」
ヤマンソは人間を滅ぼそうとしている。私達は人間じゃない。よって襲われない。
まあ、NPCもたくさん死ぬけど誤差だよ誤差。猫が死ななければなんでもいいよ。猫は召喚の呪文で私の周りに集めたからね。今。
「いやー、よく燃える。人間って意外と燃えるのね」
街を飛び交う阿鼻叫喚。この世の地獄とはこの事か、誰だヤマンソなんて召喚したやつは。やっぱりクトゥグアはダメだね。召喚に失敗しても、成功後に放置しても外なる神呼んじゃうんだもん。
その点バースト様って凄いわよね。最初から最後まで猫への慈愛たっぷりだもん。
「さて、帰りまがふっ」
「逃がすわけねえだろうが、狂人がよ⋯⋯!」
「お母様っ!?」
⋯⋯なるほど、種族変化を行ったプレイヤーがこの街にいたのね。
胸から突き出る、鋭い爪のある獣に似た毛深い腕。
人型だし、人間からの種族変化としては簡単な部類なのだろうか? 食性に目を瞑れば、人間とも共存できそうな種族だし⋯⋯何らかのイベントかアイテムによって変化すること自体は可能そうね。
「心臓を貫けば死ぬと思った⋯⋯? 残念、そこに私の心臓は無いわ」
「ッチ、バケモンが⋯⋯! なら、グアっ!?」
突き出た腕を握りつぶし、掴んだまま引き寄せて足を踏み砕く。これなら根元で切り落とした方が抜きやすいかな?
「リリィ、突き出てる腕の根元切り落としてくれる?」
「は、はい、お母様!」
「アハ、食屍鬼の心臓は初だわ」
「ぢぐじょゔ⋯⋯!」
ハツだけに⋯⋯なんて。
1d100<=5 【芸術(ダジャレ)】→25 失敗!
やかましい。
さーて、どうしたものかしらね。私が召喚したからなのか、ヤマンソによって殺戮されていく人達の素材がポップアップとして流れ込むんでくるため、とても鬱陶しい。
大半が灰と化した燃えカスなので、私のインベントリには肥料ばかりが溜まっていく。たまに焼け焦げた武器防具の類があるものの、名前に焼け焦げたと着いている時点で性能はお察し。焼け焦げた武器という概念と、短剣という共通点から不動行光でも錬成出来ないかしら?
「さて、どうしましょうか」
「どうしましょうと言われましても⋯⋯」
「正直、ヤマンソの召喚は安価とは関係無いのよね。面白半分でやった突発的犯行だし」
「ヤマンソ⋯⋯と言うのですね。アレは」
「ええ、クトゥグアとは異なる火属性の神ね。分類的には古き者に入るけれど、力量はクトゥグアと同程度よ。第一、炎の精の最も古く力の強い最大個体にクトゥグアと言う名称が付けられているだけだから、炎の精とクトゥグアにハッキリとした違いは無いのよね。ミゼーアとティンダロスの猟犬みたいなものだし」
「サイズと力量以外に差はないと?」
「そうね。何が言いたいかっていうと、クトゥグアもヤマンソも大した差は無いのよ。召喚者の意志に応じてくれるか否かで」
今回は私が呼び出したが、クトゥグアにせよヤマンソにせよ結果は変わらなかっただろう。みんな燃えカスになって私のインベントリに収まるだけだ。
あら、ポップアップが止まったわね。リスポーン地点も破壊されて、この街で復活するプレイヤーすら居なくなったのかしら。
「さてと、後はヤマンソをどうにかするだけかしら」
「どうにかできるのですか? いくら火に耐性のある私たちと言えど、あの火力では誤差だと思いますが」
「そうね。今は私達がショゴスという非人類だから見逃されているだけで、敵対すれば牙をむかれるのは間違いない。なら、敵対した時点でこっちが勝てば良いのよ」
「いくらその槍でも、一撃は厳しいのでは⋯⋯?」
「まあね。だから、退散の準備だけして槍投げ、命中直後に退散の流れになるわ」
ヤマンソの退散はネクロノミコン及び、その原典たるアル・アジフに記されている。そして、私は既にネクロノミコンを読了済み。呪文はとっくに使えるのだから、その通りに体と口を動かすだけ。
「勝手に呼び出したのはこっちだけど、同じ外なる神として私は謝らないから。また会ったら、今度も仲良くしましょうね」
槍を投げ、ヤマンソの一部が消失する。どうやら、ロンギヌスにとって実体非実体は関係ないらしい。そして、その直後にヤマンソは跡形もなく消失した。
「ヨシ!👉」
「お母様より私の方が肉体的に見て強いはずなのですが、お母様と戦って勝てる気がしません」
「私、リリィと敵対しても無傷で勝てる自信あるわよ?」
「そうでしょうね。悔しいですが、私がお母様に勝っている点は肉体面のみでしょう」
「よくわかってるわね。貴方は確かに強いけど、技術的にも経験的にもまだまだよ。せめてサメ混血の深きものくらいは、無傷で勝てるくらいじゃないと話にならないわ」
深きもののさ、サメ混血はともかくイルカ混血ってどうやって産まれたんだろうね。サメは魚類だけどイルカって哺乳類よ? 深きものって哺乳類なの? 魚類なの?
ちなみにイルカとクジラには大きさ以外に明確な区別がない。
「サメ混血の深きもの⋯⋯ですか。強いんですか?」
「そこそこ⋯⋯? 私的にはそんなに強くないけど、肉体的にはリリィより強いわね。サイズも10m以上あったし」
サメ混血との戦いは本当に酷かったわね。⋯⋯あれ、あの時戦ったのはサメ混血だったかしら? ダゴンとハイドラだったような気がしてきた。
上級の深きものだったのは間違いないんだけど、ダゴンとハイドラより大きかった気がする。でも、身体的特徴がサメっぽかったような⋯⋯。あ、メガロドンの混血だったのかもしれない。年代的にもダゴンやハイドラより古いし、可能性としてはありそうね。
「サメってそんなに大きいんですか? 私普通のサメにすら勝てる気がしないんですが」
「⋯⋯ごめん、私が戦ったやつは普通のサメ混血じゃなかったかもしれない」
「そ、そうですよね」
ディープワン・ミックスレイス・メガロドン。流石にもう居ないと思うけど、もしもクトゥルフの化身とされるリヴァイアサンとの混血が存在したら⋯⋯30mオーバー? サメ映画より恐ろしい事になりそうだわ。
「リリィ、帰るわよ。暇だからリリィの妹でも作りましょう」
「⋯⋯妹ができても、私を愛してくれますか?」
「愚問ね」
娘とか遺伝子的な繋がり以前に、私が私に好意的な女の子を愛さないわけないでしょ。
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