第204話 技量の差と最後まで

『さすがは決勝戦まで上がってきたレン選手、アルファード選手との戦いにも付いていってます!このレベルの戦いでは、私の実況は追いつけません!』


 さすがに実況者でもこの試合を完全に理解することは難しそうだ。

 レンの攻撃も少しはダメージになっているようだ。ここまでやってノーダメージでは、さすがに自信を失う。


「凄いな、レン。さっきの攻撃がもう治ってるとは」


 とアルファードがレンを指差しながら言う。先程の腹部の怪我はスキルによって回復している。


「強すぎるでしょ、アルファードさん」


「ははっ、これくらいはないとまあ最強は名乗れないからな」


 とニヤッと笑って答える。強者の笑みだ。


「確かにそうですね!」


 と言いながらレンは、自らのスキルを全開で発動する。


「お、良いね。なら俺もそれに答えないとな!さあ、どんどん来い!」


 とアルファードも何かスキルを発動している様子がある。オーラを身に纏っており強そうに見えた。


「チェンジボックス!形状変化、剣」


 マジックボックスが大量の剣の形に変形する。レンが手をかざすとアルファードに向かって剣が飛んでいく。


「当たらなければ意味がないぞ」


 余裕な表情でアルファードは、剣を跳ね返していく。その間にレンは、アルファードとの距離を詰める。


「集まれ!」


 レンの手にチェンジボックスが集まってハンマーの形状に変わる。そのままアルファードに向かって横なぎに振るう。


「おっと!」


「それでも受け止めるか!形状変化、大剣」


 ハンマーの形のチェンジボックスを今度は大剣に変えて再び斬りかかる。


「さっきのハンマーと変わらないな?」


 と言いながらアルファードが受け止めるが、レンはニヤリと笑う。


「そうでしょうか?形状変化、鎌!」


 変形した鎌の刃がアルファードの首をうなじ側から狙う。レンは、鎌を持った状態でアルファードに背を向けて鎌を振り抜こうとする。


 が、アルファードもそうそう首を譲るはずもなく直剣を首と鎌の間に入れて守っている。



 アルファードが体勢を低く取り、鎌が外れたためレンも下がり体勢を立て直す。


「そりゃ便利だな。少し油断したとはいえ、あそこまで攻撃を通せたのはレンが久しぶりだろうな」


 と言い地面を蹴ってこちらに向かってくる。エリアスの比ではない、とてつもない速さだ。


「形状変化、壁」


 少しでもアルファードの進路を妨害するようにチェンジボックスを壁にして並べてレンも移動する。


「ユニークスキル、防御無視!」


 アルファードが言い、剣を振るった瞬間に斬撃は壁が無いかのようにすり抜けてレンに向かってくる。


「そんなのありかよ!くっ」


 横っ飛びでいくつも放たれる斬撃を回避していくが、全ては避けられず傷が増えていく。


『あれは厄介なユニークスキルですね。いかに頑丈な鎧を着ようとも意味がありません!』


 とナビゲーターさんの解説を聞きながらもレンは動き続ける。


「ロックしようにも近づけないか……」


 ロックを発動するためにも数秒の時間がかかる。その間アルファードが待ってくれるはずもない。



「ズルい感じがするからな、使いたくはないがお前は使うに値する奴だ」


「転移!形状変化、大砲」


 アルファードの近くに現れたレンはマジックボックスの形を変えて魔法を発動する。


「マキシマムマジック、ダークファイヤーー!」


 出せる出力を振り絞ってアルファードに魔法を叩き込む。


「おおおお!剣圧!」


 アルファードが叫びながら剣を振り魔法をねじ曲げる。


「ふぅっ……とてつもない剣技ですね。身体能力と言い技量の差を感じますよ」


 とレンが呟く。


「レン、お前はまだ若い。伸びるのはこれからだろうよ。今ここまで戦えていることがすでに凄いことだ!ふふっ、アイツを思い出すよ」


「アイツ?」


 懐かしそうに言うアルファードの言葉にレンが反応する。


「ああ、昨日話したマサトのことだ。アイツも接近戦と魔法を良く使いこなしてた。今生きてたなら、俺よりも強くなってただろうな」


 最後は少し残念そうな様子が伺えた。かつての仲間のことだ。思うことは当然あるのだろう。


「そこまで言って頂けるなんて、嬉しいですね。アルファードさんを越えられるように頑張ります」


「ああ、お前なら出来る。だが、今回の勝負は俺がもらうぜ。ステータス外スキル発動」


『おおっと、ここでアルファード選手勝負を決めに行っているか?強力な攻撃を放とうとしている!』


 アルファードの直剣にとてつもないパワーが集まり出しているのを感じた。


『不味いですね。喰らえばマスターと言えど瀕死に追い込まれることは間違いありません!』


 やはり、王国最強ともなるとステータス外スキルを使ってくるものなんだなとレンは思う。


「多分、防御無視も使ってくるよな!これは無理ゲーじゃないか?」


 と呟く。


 威力的に避けることすら難しいように思える。



「諦めるなー!」「喰らいつけ!」


 とレンを応援する声も聞こえてくる。


 確かに、まだレンでは勝てない相手かもしれない。だが、ここですぐに降参するのは違うのだ。最後の一撃まで少しでも抵抗してみせるという気持ちが湧く。


「これに耐え切れた奴は、そうそういないな。後でどんなスキルか教えてやるよ」


 と剣を構えている。


「まだ終わらせません」


 とレンは、一歩ずつ前に歩みを進める。



「そうか!なら喰らえ」


 とアルファードが剣を振り下ろした瞬間に強大なエネルギーがレンを飲み込もうと放たれる。



「方法は2つだな。レイの力は大会では使う気はないし……それなら……フリーズ」


 レンが前に手をかざしてスキルを発動する。その瞬間、アルファードから放たれた攻撃は止まり、そこをレンが通過する。



「まさか、時間を止めた?一体!」


 とアルファードも驚いてくれたようだ。


 直後にアルファードの攻撃が動き、結界に当たる。結界にヒビが入り修復したことからカラミィは相当頑張っていることだろうと思った。


「最後まで喰らいつきますよ。身体が動く限りね!」


『今のでMPが大量に失われました。もうフリーズの発動は出来ません』


 レンの髪が金から黒に戻るが、レンは剣を引き抜いてアルファードに立ち向かっていくのだった。

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