第115話 失敗と挑戦
迷宮イージス、50階層ボス部屋……クラン真紅の宝剣の冒険者達は、全員倒れていた。
『うーん、期待ハズレだなぁ。ここまで上がって来る位だから縛った彼女には及ばないとはいえ、もう少し骨のある人がいるかと思ったけど』
イージスは、がっかりしたと言うようにため息を吐く。
「くそ……考えが甘かったか……」
「おのれ……」
あっさりと負けてしまった。アンナ・フェロルが動かないだけでだ。
『まぁ命は取らないよ。また出直してきな、その前に誰かが攻略するかもだけど』
とイージスの声が響き、真紅の宝剣は迷宮の外まで飛ばされる。
街中に現れたボロボロの冒険者達を見て、街の人は慌てている。
「ちっ……誰かにユニークスキルを取られれば……マグノリア様に何をされるか……」
失敗したらわかるわね?と言われたのだ。命で償う必要も出て来るかもしれない。
「いや、大丈夫だ……50階層には、見張りも置いてある。誰であろうとユニークスキルは……渡さん」
と言いクランの副リーダーは意識を失うのだった。
「真紅の宝剣が失敗したわ。情報を集めて来るわね」
と言いレミが転移で消える。ボスの特徴なんかを聞くためだ。
「俺達は、いつでも出発出来る様にしておくぞ」
とレンは声をかける。装備品などの点検もしっかりと行った。これまでの突然の襲撃ではないためしっかりと準備は出来ているのだ。
しばらくするとレミが帰ってくる。
「真紅の宝剣のメンバーを無理矢理回復してお話ししたら話してくれたわ。敵は、鎧を着ている魔物みたい」
とレミが説明する。鎧を着ていると言うと頑丈そうだなと思ってしまうものだ。あと、お話というのがとても怖い。
「さらに重要な内容だけど、イージスを名乗る迷宮の支配者が現れたそうよ」
「支配者が!それは、50階層がそれだけ重要だということか」
「まぁユニークスキルがかかってるからね」
支配者が出てくるのは、予想していなかった。
「それで、ボス部屋に挑む人の中で1番強い人を動けなくするらしいのよ。アンナ・フェロルを行動不能にされてあっさり敗北……それくらいしか、情報がない」
とレミの説明が終わる。
「それだけの情報でクリアするの?……少なすぎよ」
ルティアが不安そうに言う。
「このメンバーで、行動制限をくらうのはレンかレミさんのどちらかかな?」
エリアスがみんなに聞く。
「まあ、ミラはないわね」
「ちょっ、ルティア!なんか毒のある発言をしたね」
ルティアの発言にミラが文句を言う。
「そうだな……でも片方が動ければ大した問題にはならないんじゃないか?」
レミの戦闘の腕を見たわけではないが、王都でスティグマ筆頭が逃走するくらいだからかなりの実力を持っていると思った。
「早速、向かいましょうか」
迷宮イージス、50階層。綺麗に花が咲き誇る場所にレン達は降り立つ。ボス部屋までの道も大体掴んである。
「問題は、見張りがどれだけいるかということね。邪魔されたら面倒なことになるから」
6人でボス部屋の方向に向かっていく。
「うん、いるな……数は10人といった所か」
レンは千里眼で敵を捕捉している。
「どうにかなりそうだね」
エリアスが隣でホッとしたように呟く。
「止まれ!貴様ら。ここから先は通さんぞ!」
と赤い鎧を着た男が正面から言ってくる。
「あなた達にそこを占拠する権限はないはずだ。それは、ギルドにも通告させて貰いますよ」
出来れば穏便に済ませたいのでレンは、交渉に出る。
「うるさい!我ら真紅の宝剣に逆らうのか?ただでは済まさん」
と言いながら何か取り出す。
「あれは……転移!」
レミはすぐさま察知してレン達をボス部屋の前まで転移で飛ばす。
「なっ!これは」
レンは驚いた。さっきまでレン達がいた場所に強力な結界が張られており、中にはレミがいた。
「自分を転移で飛ばすのは間に合わなかった……みんな先に行って!」
レミがレン達に告げる。
「ちぃっ……外したか!次だ!」
と言いながら魔法道具を使おうとしている。あれが結界を作っているようだ。
だが、結界は不発に終わる。一瞬にしてレン達の姿が見えなくなったのだ。
「私が幻惑の魔法を放っておいたわ。これで仲間を呼んでも、幻惑に嵌るだけ。お互いに待つことにしましょう」
とレミの声が周囲に響く。
レミは、男がスティグマの魔法道具を使ってきた瞬間にレン達を転移で飛ばし幻惑の魔法まで放ったのだ。
何をしてくるかわからないため、足止めとして残ることを選んだ。レン達なら大丈夫という直感もあったのだ。
「頼んだわよ、レン、エリアス、ルティア、ミラ、アイリ」
と言いながら結界の中で待つことにする。
扉を通ったレン達は、ボス部屋の中にいた。外と同じで花が咲き誇っている。
『ようこそ!50階層のボス部屋に。私はイージス!この迷宮の支配者だ』
と声が響く。そして神々しいオーラを纏った男が現れる。
「いよいよだな……」
レンは小さく呟く。
ユニークスキルがかかった戦いが始まろうとしているのだった。
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