第59話 尾行者と捕縛
レンとスキルであるナビゲーターは、歩きながら明らかに自分達を尾行してきている者がいると感じていた。
そう感じるまでにレンのステータスとナビゲーターが優れていると言うことだろう。
「2人とも落ち着いて聞いてくれ……。現在俺達は、誰かに尾行されてるみたいだ」
と静かに伝える。尾行している者との距離もあり、風向き的にも大丈夫だと思うが小さい声で言うのが1番だろうと思った。
「まさか……今回の元凶?呪いを消してるのがバレて見張られているのかな」
とエリアスが言う。良い予想な気がする。きっと正解だろう。
「こんな街中で何か仕掛けてくるのかしら?」
とルティアは推理するようなポーズをとっている。この王女様は動揺しない辺りなかなかの大物だなと思うレン。
「さすがに街中で何かしてくるとは思えないけど、常識の通じる相手でもないかもしれないしな……」
もしかしたら尾行している者は、王都に呪いをばら撒くような奴かもしれないのだ。そんな奴に常識が通じるとは思えない。
「人気のないところに誘い出して捕まえる?」
とエリアスが聞いてきた。
「そうだな……人気のないところに行けば何か行動してくるかもしれないしな」
とレンは賛成する。
「私は、戦いはお荷物よ?任せたわ!」
とルティアが明るく言う。そういえば、王女らしい最初の話し方はいつの間にかどこかに消えていた。
回復魔法に特化しているルティアは、力は一般人並であるため攻撃には向いていない。
「そうだな……エリアスは王女様を守ってくれ。戦闘になっても俺だけで大丈夫だろう」
尾行の腕から予想するに、そこまで実力があるとは思えない。レン1人でも戦えるだろうし、エリアスにはルティアを守ってもらうのが良いだろうと考えた。
「こんな時に言うのも何だけどルティアって呼び捨てでも良いわよ?王女、王女って大変じゃない?」
とルティアが提案する。口調が軽くなったのも含めてレン達に、気を許してきているのだ。
「ならそうさせてもらう。遠慮なくね」
とレンは返事をする。
「さて、人気がないところに行くぞ」
と路地裏に入る。
路地裏を進み相手も表通りから見えない所に入ったのを索敵で感じた。どうやら敵は武器を抜いた様だ。こちらに害意があるのは明らかだ。
「さて、捕まえるか……転移」
と呟きレンの姿がエリアス達の前から搔き消える。
「「消えた!」」
と尾行者とルティアが同時に言った。
尾行者の後ろに飛びながらレンは、ルティアには言ってなかった……と思うのだった。
「少し寝てもらうか……」
と言い尾行者にうなじに拳を落とす。不意打ちしなくても勝てるだろうが自害されたら面倒だ。
「なっ……」
と言い尾行者が意識を落とす。
アイテムボックスからロープを取り出し縛る。縛り方はナビゲーターさんに指導してもらった。
そして、尾行者を担ぎ2人の元に戻る。
「捕まえたぞ!」
と言い2人の所に行く。
「簡単に捕まえたね!」
とエリアスは、失敗を疑っていなかったようだ。
「貴方、時空魔法なんて使えるの?いくらなんでも規格外すぎじゃない」
とルティアが驚いていた。
そういえば、転移は使える人が少ないんだったか……と思い出した。
「言いふらさないでくれよ?まあ転移は置いといて、こいつをギルドに運ぼうか……」
と提案する。
「それが良いね」
とエリアスとルティアも賛成する。ルティアも転移についてはそこまで言及してこなかった。
「この服装的にどう見てもスティグマだよな?」
とエリアスに言う。
「うん、確実にスティグマだよね」
とエリアスも同意する。
「スティグマをこんなにあっさり捕まえるなんて、緊張して損したわ」
とルティアは呟く。
「ルティアの反応は面白かったな……スティグマと同時に、消えた!って驚いてたし」
とからかってみる。レンのモノマネが意外と似ていたのでエリアスも笑っていた。
「むー!私をからかうなんて良い度胸じゃない!」
と顔を赤くしていた。
そして3人は、緊張もほぐれ笑いあった。
ギルドに行くまでに、尾行者を担いで歩いているレン達は多くの人に珍しいような視線を向けられる。
「さすがに人を担いでると目立つよな」
スティグマとわからないように尾行者の格好は、誤魔化しているが目立つ。
ギルドに入ると、中には人があまりいなくてすぐに受付に向かうことが出来た。
「すみませんが、ギルド長を呼んでもらえませんか?」
とレンは受付嬢に切り出す。
「御用をお聞かせ願いませんか?」
と受付嬢が言ってきたため、こう続ける。
「スティグマらしき人を捕まえました」
と小さな声で言うと受付嬢の反応が変わる。
「承知しました。すぐに呼んで参ります」
と奥に向かっていった。
少し待つと受付嬢がギルド長であるティーラーを連れて戻って来た。
「昨日振りだねレン君。早速で悪いけど本題に移らせてもらいたい。君が担いでいるのがスティグマの一員と思われる者かな?」
とニコニコと言ってきた。
「ええ!尾行してきていたため捕らえました」
笑顔が怖いなと思いつつ答える。
「なるほど。その尾行者は、こちらで預からせてもらっても良いだろうか?」
と言う。そのうち取り調べでもするのだろう。本職に任せた方が良いと思った。
「はい、お願いします」
と返す。
「詳しく聞きたいこともあるし、別室でお話ししたいから来てくれ」
と言われる。
「ええ、大丈夫です」
と言いレン達はティーラーについて行くのだった。
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