第55話 王妃と呪い再び
レンとエリアスは、順調に魔物達を狩っていた。順調過ぎるともいえるが……
周りには新人の冒険者が多く、あっさりと魔物を倒していくレンとエリアスの姿はとても目立つものだった。
「すごいな……あの2人、ベテランの冒険者なんだろうな……」
と新人冒険者の間で話が広がっていく。王都に来たばかりで名も知れてないため衝撃は大きいのだろう。
レンは内心、エリアスはともかく俺は、新人なんだけどな……と呟いていた。
「一度、休憩しない?レン」
とエリアスが声をかけてくる。
「ああ!そうしようか」
とレンも答える。
2人で木の根元に腰掛けて休憩にする。
レンは、アイテムボックスからコップと街で売られていたティーパックの様な物を取り出し、魔法で熱湯を作りお茶を淹れる。
礼儀作法スキルの効果か、お茶を淹れる仕草でさえ一流に見え、冒険者達が見とれていた。
「よし、準備できた。お菓子もあるぞ」
と言ってアイテムボックスから取り出す。
変わった奴だという視線があることから、やはりこんな場所でお茶を飲むの人はあまりいないのだな……とレンは考えた。
エリアスは、熱いお茶と格闘しながら少しずつ飲んでいた。
「猫舌なんだね」
とレンが声をかけると
「私は、狼だよ?」
と目が笑ってない笑顔で答えてきた。地雷を踏んでしまった気がする。
「お、おお……悪い悪い」
とレンは返事に困ったように対応する。
狼人族に猫と言ってはいけないのか……と1つ学習したレンだった。
休憩を終えてからもレン達は、魔物を倒して夕暮れになってきたため街に帰ることにした。
冒険者ギルドに着くと、まだハルカは来ていなかったため先に魔物の買取をお願いした。
さすがは王都の冒険者ギルドだけあって人も多く、確認が速い。
「こちらが報酬となります!お疲れ様でした!」
と受付嬢に言われ報酬をもらう。
ハルカが来るまでどうしようかと考えた頃、ギルドの扉が開きハルカが入ってくる。
「待たせてしまったようですね。陛下から許可をいただきました。これから城に来てもらうことになるけど問題ないでしょうか?」
と簡潔に説明する。
「はい!了解しました」
とレンは答える。
ハルカが付いているためかあっさりと王城の門の兵士が通してくれた。
「いきなりだけど陛下に会いに行きますよ」
とあっさりとハルカが言う。
「心の準備とか言ってる場合じゃないですね……」
とレンは呟く。
「ええ、1秒が命取りにならないようにしなくては……」
とハルカが返す。
そして王の待つ部屋に3人は入室した。
レンとエリアスは、礼儀作法スキルを使用して頭を下げる。
「よく来てくれた。オリガミ殿にミリー殿。私は、アクセラ・ファン・アルセンティア。我が妻の病を治すことが出来るとハルカから聞いたがそれは本当か?」
と王は優しく聞いてくる。
「はい!スキルについては説明出来ませんが、出来ると確信しております」
とレンは堂々と答える。
「私は、彼に呪いを消してもらい救われました。きっと王妃様の病も治すことが出来ると思います」
とエリアスが言う。
「なんと!呪いすらも祓うことが出来るのか……」
と王は驚いていた。
「私も初耳です」
とハルカが言う。少し驚きが混じっている。
「おっと、ずっと話してるわけにもいかんな……早速だが、妻を見てくれ」
と王が言った。
メイドの案内で国王と一緒に王妃の元に向かう。
あまり大人数で行っても悪いのでエリアスとハルカは別室で留守番だ。
「こちらでございます」
とメイドが扉を開けてくれる。
「父上……こちらの方は?」
と王妃の部屋にいた青年が国王に声をかける。
「こちらは、レン・オリガミ殿だ。オリガミ殿、こちらは我が息子で第1王子のアルキア・ファン・アルセンティアだ」
と紹介してくれた。
「初めまして、王子殿下。レン・オリガミと申します」
と挨拶をする。失礼に当たらないように礼儀作法スキル全開だ。
「貴殿がハルカ殿の紹介の……母上を頼む」
と頭を下げてくる。
「殿下!頭を上げてください」
と慌ててレンは言う。プライドの高い王族とは違って良い人なんだなと思う。
「早速、やらせて頂きます!」
レンは、王妃の方を向く。
王妃は、とても苦しんでいるようで、息がとても荒い。顔色もとても良くない。周りで回復魔法をかけている人たちも魔力が足りなくなっているのか苦しそうだ。
速く解決しなければとレンは思った。
「王妃様、手を失礼します」
と言い王妃の手を握る。綺麗な手だなと少しだけ考えながら近くに跪く。
部屋には、そこそこの人がいて注目が集まっているのを感じた。
「ハッキング……」
と呟く。
『ルミノス・ファン・アルセンティアのステータスに接続します』
と頭に音声が流れる。
ルミノス・ファン・アルセンティア
(人間)Lv36 呪印
HP100/1210
MP250/340
ATK98
DEF150
〈スキル〉
政治
上級家事
下級水魔法
〈称号〉
アルセンティア王妃
呪いを受けし者
HPは100を切りかけている。普通の人がそこまでHPが下がるなんてことは滅多にないため危険だと感じた。
「まさか……」
とレンは呟く。見たことがある2文字……
「治せないかね…」
と国王が声をかける。レンが動かないため心配になった様だ。残念そうな声を出す。
「いえ、問題ありません。アンインストール!」
とレンは、呪印を消し去る。
その瞬間、王妃の身体から黒いモヤの様な物が大量に吹き出し、消えた。周囲の者達も黒いモヤに驚きの表情を浮かべているのがわかった。
「私は、生きてるの?」
と王妃が涙を流しながら、目を開く。
「ええ、貴方は生きておられます」
とレンが答えた瞬間にワァッと歓声が部屋に広がる。
レンは、部屋の隅に下がり、王妃を抱きしめる国王やその子供達を眺めるのだった。
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