第485話 2人の告白
こんなに真剣に謝罪してきてくれてるところ悪いんだけど……正直言って、2人に謝ってもらう必要はまったくない。
だってそもそもセドリックの事なんて、好きでもなんでもないし。
むしろ嫌いとすら言える。
そんなセドリックが仮の婚約者である私を蔑ろにして聖女エマを溺愛しようが、不貞を働こうが、ぶっちゃけどうでもいい。
勝手にどうぞって感じだわ。
というかセドリックには私との仮婚約を破棄してもらわねばならないわけだし、むしろ私としては2人の仲を応援したいくらいだもん。
「あの……そんなに気にしないでくださいませ」
とはいえだ、そんな事情はサイラスとガイル……セドリック達や学院の生徒、王国の貴族に国民達も、殆どの人は知らない事だし。
側近として2人が責任を感じていても不思議じゃない。
不思議じゃないんだけど……気まずい! 非常に気まずいんですけどっ!!
確かにこの2人は前から様子がおかしかったけど、それでもセドリック一派として、敵だと認識してたのに……
その敵から急に謝られても、どう反応すればいいのかがわからないっ!
てかっ! ネヴィラお姉様も面白そうに見てるだけじゃなくて、助け舟を出してくださいよっ!!
「ルスキューレ嬢……いえ、そういう訳にはまいりません」
「その通りです、私達に気を遣ったくださる必要はありません。
私達は貴女にそれだけの事をしてしまったのですから」
いや本当に気にしないでほしい。
そもそもの話、イストワール王立学園に在学していた約5年間。
私は殆どこの学園に通ってなかったわけで、2人の言うような迷惑だったり、苦労はまったくなかったわけだし。
2人の言う被害を受けたのは、私じゃなくて私の代わりを務めてくれていたルーちゃん。
そのルーちゃんも偶にしか学園には行ってなかったし、私にもルーちゃんにも実害はなかったに等しい。
セドリックの不貞行為は仮婚約を破棄するにあたって、むしろプラスなるからありがたいまである。
それなのにこうして面と向かって謝罪されてしまうと、なんかこっちが2人を騙してるみたいで居心地が悪い。
「えっと……」
困ったわ。
2人の事は敵だと認識してたし、攻略対象にはあまり関わらないようにもしてたから、当然親しくないし他人と言っても差し支えない間柄。
私からしたら2人の謝罪はまったくの見当違いなんだけど、はたから見れば2人の言っている事は間違ってはいない。
それに何より、めっちゃ真剣に謝られてるんだよね……
これがフィルなら冗談を言ったりもできるのに……この重苦しい空気。
これじゃあ話が一向進まないし。
う〜ん、どうしたものか……
『とりあえず、彼らの謝罪を受け入れてあげればいいんじゃないかしら?』
やっぱりそれしかないですよね。
訂正せずに謝罪を受けれるのは、サイラスとガイルを騙してるようでちょっと気が引けるけど……仕方がない。
「頭を上げてください。
お2人の謝罪を受け入れましょう」
「「っ!!」」
そして2人が何か言う前に……
「それに! いつまでもそうされていては、まともにお話もできませんもの。
お2人は私に何かお話があるのでしょう?」
すかさずちょっと冗談っぽく話を促すっ!
これで2人の雰囲気もちょっとだけ柔らかくなったし……ふっ、我ながら完璧な話術だわ!!
「ははっ、そうですね……これ以上続けては、余計に貴女を困らせてしまいそうです」
「ルスキューレ嬢、本当に貴女ってお方は……」
「あらアレス様、何か文句でもおありですか?」
「ふふっ、いいえとんでもない」
う〜ん! 流石は私っ!!
あの重苦しい空気を払拭してしまう話術とこのコミュ力っ!
「ならば許して差し上げます。
それで……私にお話とは?」
「そう、でしたね。
我々の話とはセドリック殿下についてです」
「殿下について、ですか?」
「はい、実は非常にお伝えし辛いのですが……」
サイラスもガイルも佇まいを正し……
「これから王宮で催される卒業記念パーティー。
その場でセドリック殿下は、貴女との婚約破棄を宣言されるおつもりなのです」
緊張感に満ちた神妙な面持ちで、サイラスがそう言い放った。
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