第480話 祝いに来てはダメなのか?
まばらだった会場の席も、徐々に参加者で埋まり始め……定刻通り卒業式が開始。
そして……
「それでは、これにてイストワール王立学園卒業式展を終了する」
無事に何事もなく、終了した──なんて事はなく、卒業式は無事に終わったけど、普通に何事もあったわ。
まず卒業式の開始直前……
バンッ!!
っと、音を立てて入り口の扉を開け放ち、側近達を引き連れたセドリックが満を辞して登場した。
それも淡い青色のドレス、つまりはセドリックの瞳の色のドレスに身を包んだ聖女エマをエスコートしながら。
周囲の注目を一身に浴びながら、堂々と会場を横断しながら最前列へ。
世界有数の歴史を誇り、伝統を重んじるイストワール王国が運営しているこの学園では、実力ではなく身分で席順が決まる。
つまりは国内最大にして、諸外国にも大きな影響力を持つ大貴族たるルスキューレ公爵家の令嬢である私も最前列。
それも仮の婚約者にて王太子でもあるセドリックの隣に席があるわけで。
再び今度はエマをエスコートして。
側近であり攻略対象でもある3人、オズワルド、ガイル、サイラスを引き連れてやって来たセドリックが私の前に立ち……
「ソフィア・イストワール、早くそこを退け」
蔑むような目で私を見下しながら、そう言い放った。
しかも!
「貴様が我が物顔で座っているその場所は、イストワール王立学園の栄えある次席に選ばれし者の席。
家柄しか取り柄のない貴様などではなく、勉学はもちろん魔法もトップクラスの成績を収めた、優秀なエマにこそ相応しい」
などと言い出す始末!!
伝統を重んじ、実力よりも身分を重要視する国の王族が! それも次代を担う王太子が、国内外多くの貴族が集うこの場で、国の方針を全否定するような事を口走りやがった!!
というか! 家柄しか取り柄がない? 優秀なエマにこそ相応しい?
ふざけるなと言いたい。
いた私がエマに……というか、お前達に劣ったと?
勉学でも魔法でも、最も優秀な結果を残し続けたのはこの私っ!!
確かに普段はこの学園に通ってないし、偶に出席する時も殆どルーちゃんに変わってもらってた。
でも! 試験とかは私自身が受けたし、それこそ歴代最高の成績を残してやったわ!!
王族であり、王太子って身分だけで、卒業生の主席に選ばれたくせにっ!!
「ふんっ、自身がどれほど身の程知らずか思い知り、声も出ないか?」
バカにするように鼻で笑われた時はイラッとしてヤバかった。
セドリックが婚約破棄を言い出すまでは我慢しないとダメなのに、ぶん殴ってやりたくなったもん。
ガイルとサイラスは青い顔をしてたけど、セドリックと一緒にオズワルドは軽蔑したような目で見下して来たし。
エマは申し訳なさそうな顔をしながらも、優越感を隠しきれない勝ち誇ったような顔。
「失礼ですけど、これ以上恥をかかれる前に早々に移動された方がいいと思いますよ?」
なんて言ってくるエマと同じくらいの身長の、ピンク色の髪にグリーンの瞳をした小柄な少年。
誰だねキミは? 本当に失礼だわ。
「ラルフィーの言う通りですね」
ラルフィー?
オズワルドのおかげで名前はわかったけど、う〜んどっかで聞いた事があるような、ないような……
「私に何度も言わせるな。
早くその席をエマに譲──」
「これはなんの騒ぎだ?」
セドリックの言葉を遮り、さっきセドリックが開け放った扉からその人が姿を現した瞬間──今までは黙って成り行きを見守っていた者達の間に、騒めきが巻き起こる。
「な、なぜ、貴女がここに……?」
驚愕に目を見開くセドリック達の視線の先。
特注品である赤い騎士団の制服に身を包み、瞳と同じ真紅の美しい髪を靡かせながら歩み寄ってくる、炎のような覇気を纏った美女。
「なんだセドリック?」
国王であるエルヴァンおじさんの実の姉であり。
王国騎士団の元総騎士団長にして、現在では騎士団ならびに魔法師団を統括する総帥の地位に君臨する人物。
「私が可愛い姪っ子の卒業を祝いに来てはダメなのか?」
王姉ネヴィラ・ルイーザ公爵こと、ネヴィラお姉様が誰もが見惚れるような笑みを浮かべた。
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